田山花袋の『蒲団』じゃないよ。ホラーですよ。
橘外男の『蒲団』を読んで。
「日本のポーと呼ばれた現代ホラー界の先駆者、ここに蘇る!」という新聞広告に惹かれて買ってしまいました。
橘外男は、江戸川乱歩と同じ1894年の生まれということです。江戸川乱歩はご存知のようにエドガー・アラン・ポーの捩りですが、橘外男さんも「ポー」ということですね。その頃の日本は相当にポーの影響を受けていると言えるのかも。
明治は1868年から始まりました。彼は、大正末期から昭和中期まで活躍していたようです。本書は、7編からなる短編集です。パート1とパート2に分かれているのですが、その根拠はわかりません。
解説には、パート1は聞き書きスタイル、パート2は一人称語りとありました。一人称語りの方が、より虚実の境界が曖昧になるとの説明です。
しかしながら、「怪談」と言えるのは、表題の『蒲団』のみのように思われます。古着屋が縮緬蒲団を破格な安値で仕入れてからのその家族に起こる様々な悲劇、そしてその理由……。
もちろんその他の作品も怪奇現象を扱っていますが、普通の(?)小説と言っても良いような~。
『棺前結婚』は、若い夫婦の妻が姑の虐めにあって、病で亡くなります。その哀れな結末を夫が不備に思い、また大いに自分の至らなさを反省し、妻の棺を掘り返してもう一度結婚の儀をやり直すというお話。
何か、以前読んだ『方壺園』を思い出しました。こちらも短編集ですが、ミステリー。ミステリーながら、やはり普通(?)の小説の読み応えがあります。作者は陳舜臣。昭和30年代から活躍しています。松本清張と並び称されています。彼は、直木賞も受賞していますが、自分自身は、ミステリー作家であることに誇りを持っていました。
橘外男氏も1938年に『ナリン殿下の回想』で直木賞を受賞しています。本書の一篇である「生不動」は、怖い話ではありますが、日常の一シーンを切り取ったもので、怪談話ではありません。
最後の一篇「帰らぬ子」は、幼くして亡くなった子とその後に生まれた次男に対する愛情が描かれています。その愛情が尋常ではなく、安部公房の『砂の女』を思い出しました。徐々に理性を失っていくお話に魅了されます。
解説に「現代の怪談エンターテインメントの先駆けともいえる外男怪談が、脚光を浴びるのは当然かもしれない。本書をきっかけにさらなる外男愛好家が増えることを願ってやまない。」とありました。その他の彼の代表作も紹介されています。
私も外男に嵌ってしまおうかな、と。。。