『汚れなき子』
まだ読んでいない本が、本棚にいっぱいあるので「当分は新しい本は買わないでおこう。」と思っていたのですが、買ってしまいました。新聞広告で見かけた本です。推理&サスペンスなので、気楽にサラサラと読めそうだと。
最近、煮詰まっているので、ストレス解消にはこの手の本が良いかもと。それから、作家が英語圏の人ではないからです。ドイツ人です。処女作だとか。
今日の日本では、英語圏の推理小説とか文学、映画が主流です。本書の解説にも「ミステリーファンにはいうまでのないことだが、英語圏の小説が世界の読書界をリードしているわけではない。」とあります。
何故か?英語圏では、英語以外の文学をあまり翻訳しないからです。そして、日本での英語圏以外の本は、だいたい英語に翻訳された本の重訳だからです。
この本を買う前に、アマゾンで立ち読みをしました。とても興味深かったです。大学生の時に拉致された女子学生が、行方不明のまま、その拉致した男性と夫婦として暮らし、2人の子供を儲けます。しかし、彼女は、いつも夫を殺そうとしています。
初っ端から、その女性レナは暗闇の中、車に轢かれ救急車で病院に運ばれます。そして、その時娘のハナが一緒でした。ハナは13歳。彼女が誘拐されてから14年が経っていました。
しかし、そのレナは、レナではなく違う女性だったのです。しかしハナはその女性を「ママ」と呼ぶ。謎ですよねェ。そそられますよネ。
巻末の訳者の解説に、「アメリカでは、ミステリやサスペンスに求めるのは、プロット、それもしっかりしたプロットだが、日本の読者は、プロットのほか、人物描写、登場人物たちの反応、性格の深さに興味を持つ」というウィルコックスの弁が紹介されています。
そして、訳者も「確かに」と同意しています。そういう意味で、とても興味深い本です。
ここには、名探偵も名刑事も出てきません。この事件の被害者の3人が語り手です。それぞれの立場から自分の言いたいことを述べます。つまり、自分の都合の良い事だけを述懐する訳です。3人は、先ず、ハナ。そして、自動車事故で病院に運ばれた、男に監禁されていた女性ヤスミン。最初に拉致誘拐された女子大生レナの父親マティァスです。
ハナは、生まれたた時から監禁されている訳ですから、自分が監禁されていたとはわかりません。パパ(誘拐犯)の事は大好きな様です。でも、なんでも支配している「神」のような存在。ヤスミンは、拉致されてレナの代わりにハナたち(弟がいる)のママという役割を暴力であてがわれたことに自分を責めています。なぜ反抗できなかったのかと。マティアスは、愛情を注いでいたレナが14年間も監禁され、酷い仕打ちをされていたことに異常な憤りを感じています。
こんな彼らのバラバラな思考が連なって、最終的に男を追い詰めます。
最後は言えませんよね。さすがに!
本当に警察の捜査の動向は全くと言っていいほど書かれていません。警察の方向からこの事件を書けば、同じプロットでもう一冊書けそうですよ。
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