『サンリオSF文庫』はわたしの青春時代に創立された文庫ですが、すぐに廃刊となりました。1978年から1987年までのようです。この文庫は、特異な作家をフィーチャーするので有名で、その上、本の発刊期間も短かったので古本屋では高額で取引されていました。わたしも5冊ほど持っています。息子に高く売れるから相続後もむやみに古本屋に売らないようにと、言い渡そうとしたところ…、現在ではそうでもなさそうです。
先日、自分の本棚を眺めていました。その中にサンリオSF文庫を見つけたというわけです。なんで、サンリオSF文庫の本をまだ読んでいないんだろうと不思議に思い、ペラペラとページをめくるとなんだか面白そう。『暗黒のすべての色』。ロイド・ビッグルJr.のダーゼック・シリーズの中の一冊です。
それで、サンリオSF文庫は今どのくらいの値段で取引されているのだろうかと好奇心がわき、アマゾンで調べてみることに。なんと、100円以下でした。1円と書かれた本もありました。3000円から1万円で取引されていると言ううわさがあったのになあと。
他のサンリオSF文庫の本でJGバラードの『無幻会社』を調べたところ、300円程度。まあ、本で金儲けをしようとしたことが蛇道でしたね。
『暗黒のすべての色』は、SFです。1963年に書かれています。日本では1966年に刊行予定とされていますが、わたしが購入したのは1979年です。サンリオSF文庫の創立が遅れたのでしょうか。年代的にはフィリップ・K・ディックと同じです。未来のお話で、何年頃かはわかりませんが、宇宙に人類が行けるくらいの頃です。
お話は、潰れかけていたユニバーサル・トランス社がトランスミッターを発明し、そのおかげで経営を盛り返します。トランスミッターとは、転送機械です。物の運搬のために作られましたが、人の旅行にも使用されます。
人がドアを開ければ、その向こう側はロンドンとかパリとかと言うわけです。一瞬で好きな場所に行けます。もちろんその場所にユニバーサル・トランス社の駅があればと言うことですが。
それが、人の運搬の初日から、何人かの人が行方不明になりました。そこで、私立探偵ダーゼックの登場です。その会社は秘密裏に事を解決しようと私立探偵を雇いました。さて、この結末は……。
面白いことに、こんな機械が発明される時代であるにもかかわらず、彼らは未だに通信手段に「電話機」を使っています。交換手なども存在しています。昔のSF小説を読むと、こんなところもありますね。でも、そんなことも楽しみに、日々、昔むかしのSFを読み返しているのでしたあ。