次回の英語READINGクラスの短編です。三人のクラスでその中の一人が「やさしく書き直した」お話を持ってくることに、以前不平をこのブログで唱えておりましたが、ようやく原文のままの作品を持って来てくれることとなりました。フォークナーの小編です。
フォークナーの名前だけはよく知っていますが、彼の小説を読んだことはありません。本文に入る前にフォークナーの紹介文が少し掲載されていました。それによりますと、フォークナーは、1897年生まれ。アメリカ南北戦争が終わったあとの、「没落していく南部」と言う頃の作家のようです。
Faulkner depicts the particular
psychological stresses associated with the decline of the South from its
romantically glorious past.
この作品のエミリーも南部の没落貴族の一員で、頑なに南部の誇りを保ちつつも時代の流れに逆らえないと言ったところ。内容は、少々ホラーです。が、そんなに複雑なお話ではなく、現代の推理サスペンスのTV番組を見て育った私には、結論は想像通りというもの。実際、同じような結末のドラマを最近見たばかりです。
彼女の父親が亡くなってから(そう言えば母親のことは書かれていませんね)、一人ぼっちになった彼女は、一人で大きなお屋敷に住んでいます。黒人の男ひとりが彼女の世話をしています。彼のことはNegroと表現されています。おきまりの厳格な父親、男性は誰も彼女に近づかない、そして彼女は屋敷に閉じ籠もり、オールドミスの運命に。しかし、南部貴族のプライドは捨てません。そのエミリーが74歳で亡くなると、彼女がひとりで過ごしてきた秘密が暴露されるのです。
その秘密とは、……エミリーの父親が亡くなったのは彼女が30歳代の時。恋人もおらず孤独に暮らしています。父親の過去の栄光で、彼女は税金の支払いを免除されています。その頃、舗装工事が始まります。黒人たちが作業員、そしてその監督が北部出身の白人Homer Barron。
The town had just let the contracts for
paving the sidewalks, and in the summer after her father’s death they began the
work. The construction company came with
niggers and mules and machinery, and a foreman named Homer Barron, a Yankee---a
big, dark, ready man, with a big voice and eyes lighter than his face.
その彼が、エミリーの馬車に同乗している姿が見かけられるようになります。しかし、人々は「彼女が北部の男を受け入れるはずがない」とうわさします。が、その光景は頻繁になり、人々は「彼女はホーマーと結婚するのだ」と思い始めます。
しかしその頃、エミリーは、毒薬を購入する事を模索します。
“I want some poison,” she said to the
druggist. She was over thirty then,
still a slight woman, though thinner than usual, ------,
ドラッグストアの亭主は、毒を買うには法律で何のために使用するか報告する義務があると言います。が、彼女は答えようとしません。亭主は彼女の頑なさと、彼女が醸し出す言いようのない畏怖から黙って毒を売ってしまいます。
The druggist looked down at her. She looked back at him, erect, her face like
a strained flag. “Why, of course, “the
druggist said. “If that’s what you
want. But the law requires you to tell
what you are going to use it for.”
次の日、人々は彼女が自殺する気だと推測します。それは良いことかもしれないと。と言うのは、彼女の彼ホーマーは、男が好きだから。かわいそうなエミリーと。嫉妬も込めて。ホーマーは、一度彼女の元を去りますが、また、戻って来て彼女の家に同居します。しかし、その後彼の姿を見た人は誰もいませんでした。
その後、彼女の家の近隣の人々が彼女の家からひどい臭いがすると市長に文句が入ります。しかし、市長はどうすることもできません。
A neighbor, a woman, complained to the mayor,
Judge Stevens, eighty years old.
“But what will you have me to do about it,
madam?” he said.
“Why send her word to stop it,” the woman
said. “Isn’t there a law?”
“I’m sure that won’t be necessary,” Judge
Stevens said. “It’s probably just a snake or a rat that nigger of hers killed
in the Yard. I’ll speak to him about it.”
ある男性も同じように市長にクレイムをつけました。でも、市長は、”Dammit,
sir,” Judge Stevens said, “will you accuse a lady to her face of smelling bad?”
と言うのみ。
その後、彼女の姿はめったに見られなくなりました。代は移り変わって、市長も変わっていくと、彼女が税金を免除されていることが問題となって来ました。市の代表団が、税金を払うようにと促すために、彼女に会いに行くことになりました。彼女の父親が亡くなってから約30年後です。彼等が彼女の召使である黒人の男に家に招き入れられると、屋敷は荒れ放題。そして、エイミーも太って、「グレーの髪」の哀れな姿になっていました。しかし、彼女の尊大な態度は変わらず、代表団はただ追い払われる破目に。
They were admitted by the old Negro into a
dim hall from which a stairway mounted into sill more shadow. It smelled of dust and disuse---a close, dank
smell.……, When the Negro opened the blinds of
one window, they could see that the leather was cracked; and when they sat
down, a faint dust rose sluggishly about their thighs, spinning with slow motes
in the single sunray.
そして、いよいよ彼女に死が訪れます。お葬式の日、街の面々が彼女の家を訪問すると、年老いた二グロが彼等を迎え入れます。彼等を迎え入れると、彼は裏口から姿を消して、二度と戻りませんでした。
The Negro met the first of the ladies at
the front door and let them in, with their hushed, sibilant voices and their
quick, curious glances, and then he disappeared. He walked right through the house and out the
back door and was not seen again.
エミリーは、一階の部屋に寝かされていました。彼女のお葬式が終わり、エミリーがお墓の中に無事安置されると、彼等は長らく誰も招き入れられたことのない二階の部屋になだれ込みました。そして彼等が見たものは、
Upon a chair hung the suit, carefully
folded; beneath it the two mute shoes and the discarded socks.
The man himself lay in the bed.
Then we noticed that in the second pillow
was the indentation of a head. One of us
lifted something from it, and leaning forward, that faint and invisible dust dry
and acrid in the nostrils, we saw a long strand of iron-gray hair.
こうして、ストーリーを書いてきましたが、お話の順番はまるっきり違います。フォークナーは、話を順番に進むようには書いていないのです。つまり時系列が複雑。最初は、エミリーが死ぬところから始まるのですから。それで、この話の時系列をはっきりさせようというところから始め、このようなストーリーに辿り着きました。
書き出しはこうだったのです。
When Emily Grierson died, our whole town
went to her funeral: the men through a sort of respectful affection for a
fallen monument, the women mostly out of curiosity to see the inside of her
house, which no one save an old manservant---a combined gardener and cook---had
seen in at least ten years.
いかがでしたか。男性に振り向かれないオールドミスと、曰くありげな恋人と、毒とSMELLとなれば、もう結論はおわかりだったでしょう。
にほんブログ村
0 件のコメント:
コメントを投稿