次のクラスのために少々書き直してみました。
「折々のことば」という小さな囲い記事が朝日新聞に毎朝掲載されます。9月8日の言葉は「文明が進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増す」でした。物理学者でエッセイストであった寺田寅彦氏の言です。
意味は、「洞窟の中で暮らしていた時代は、じっと潜んでいれば暴風雨を防げた。粗末な小屋に住んでいたなら、容易に立て直せる。それが、重力に逆らい、自然に抗うような施設を作るようになった時、建物の倒壊や堤防の決壊の被害は甚大になる。送電線が大規模に施設されると、被害は一地域の被害から広域の被害に増大する。」ということです。この場合は天災に関することですが、これを読んで科学の進歩もそうだなあと思いました。
例えば、自動走行車です。今年三月、自動運転車が過疎の街で公道を走り始めました。まだ実験段階ではありますが。石川県珠洲市は、人口およそ15000人。高齢化率は44%です。2005年に鉄道能登線が廃止され、珠洲市から鉄道が無くなったのです。バスやタクシーもドライバー不足です。そこで、20年を目途に自動走行車を高齢者の足として使うことを計画しました。
この車は、金沢大学でロボット工学を専門とする菅沼准教授が開発したものです。「目」の役割としてセンサーが回り、周囲の状況を車内のディスプレーに表示します。運転席に座り、目的地を設定しボタンを押せば、後は人工知能が判断して車が自分で走行するというもの。ハンドルやアクセルなどの操作は一切必要ありません。市では、タクシーやバスにも使用することを考えており、地域が抱える課題の解消につながると期待されています。
このニュースは現代テクノロジーの肯定的側面です。が、最近のニュースでハッカーがインターネットにつながる自動車をハックする実験が行われたと報じられています。アメリカの話です。ハッカーは手元のノートパソコンから車の制御システムに入り、遠隔操作しました。米国の高速道路を走る車がハッキングされ、運転手が何もしないのに突然ラジオが大音量で流れたりワイパーが作動したりしたそうです。エアコンの電源も入り、エンジンが切られたりもしました。
この車のメーカーはこの実験公開の三日後、ジープ・チェロキー2014年型140万台をリコールすると発表しました。同様な車を製造しているメーカーにも波紋が広がっています。実際にはハッカーの攻撃を受けていませんが予防措置でリコールを決断したということです。テクノロジーの負の側面ですね。人類は夢のような豊かな未来を手に入れるかもしれませんが、そこには同時に膨大なリスクも含まれているのです。
補足として、
このようなテクノロジーを現代社会に生かすためには、いろいろな面での法整備が欠かせません。例えば、自ら判断して走行する自動走行車が人をはねたら責任を負うのは誰なのか。乗車中の人か、車のメーカーかあるいは人工知能ソフトの開発者か。今月、G7の交通大臣会合がフランクフルトで開催され、自動車走行を普及するために必要なルールの国際基準化を進めるとしています。
またまた先進国が国際ルールを率先して決め、開発の有利性を目指しているということですか。出遅れた国々は、そのルールにのっとり開発を進めなければならず不利益を被るという構図ですね。
くわばらくわばら。
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