『オスとは何で、メスとは何か?』を読んで。。。
この本をなぜ読もうと思ったのか?は、わたしが「女」で、生まれた時から言われなきバイアスによる差別を受けてきたからです。「女は云々、男はかんぬん。」という偏見。そう言う
論理に対抗するために、私自身、日々「理論武装」する必要があるのです。
それからもうひとつ、純粋に「男と女」はそんなに明確に区別できるのかという疑問が長年あったからです。
「人種というものはない。ただ文化の違いがあるだけだ。」という人類社会学の見解があります。自然環境により人の見かけは異なってきました。また、地域環境により社会慣習が違います。ヒトの種類はひとつです。同様に男女差はどうなのかと。
本書の「売り」は、「メスとオス」は対峙する二極ではなく、メスとオスの間はいろいろな段階のオスとメスが地続きになっているスペクトラムなのだ、ということ。「虹」の色がひとつひとつ区切られていないように。
以前、会話の中で、「人は男と女の2種類ではない。男でも女でもない人もいる。」とわたしが言ったところ、ドイツ人の女性が、「そんな3種類ではない。無数に人はいるのだ。」と言いました。なるほどと。甘い考えでしたと。
本書は、生物学のジャンルで社会学ではありません。故に科学的方法によりメスとオスが語られます。つまり、人を実験台にはなかなかできませんから鳥とか魚などに関する例が多いです。
しかし、本題は「人に関する事」であり、たいへん嚙み砕いて書かれているので、とてもわかり易く、理解しやすいです。
第一章
雌雄は果たして分けることができるのか?
第二章
性は生涯変わり続けている
第三章
オス・メスどのように決まるのか?
第四章
オス化とメス化はどう進むのか?
第五章
全ての細胞は独自に性を持っている
第六章
「脳の性」という最後の謎
という構成。
男と女は「性遺伝子」つまりXとYで決まります。「性ホルモン」によってオス化とメス化が進みます。でも、実際はそんなに単純ではありません。
著者によりますと、
性を雌雄の二極として捉えることの不自然さと、性をオスからメスへとスペクトラム状に分布する表現型(連続する表現型)として捉えることの合理性への理解を多くの人が認識してくださったら本書の意義もあったと思う。
と述べています。
わたしとしても、多様な性の存在が「自然」なことなのだと認識するリベラルな社会を望みます。