全ての人間の身体にGPS機能付きのチップが埋め込まれている社会を想定して、その状態で人類はどうなるのかの考察しています。
著者は、「案外」幸福な社会かもしれないと示唆します。全ての人の行動が記録されるので犯罪がなくなるだろうと。また、警察官とか政治家、その他の権力者の身体にもチップが埋め込まれていて、それがコンピュータ管理されているので、彼らの横暴な権力行使も抑制できるとのこと。究極の監視社会です。監視社会で自由がなくなると言われるが、なくなるのは、「罪を犯す自由」だけではないのかとの著者の意見です。
この本を読んで、津田大介さんが言っていたことを思い出しました。津田さんはIT関係に肯定的な意見の持主です。時代の最先端のテクノロジーの解説などもしています。それで、スマホの話。今、wearable 携帯の時代が来ています。腕にはめるとか、メガネに付帯しているとか、そんなような事の解説をしつつ、津田さんは、「その内、みんな頭にチップを埋め込むことになるでしょうね。」と発言されました。
その時は、わたしは「オイオイ、それでいいんか。」と思ったんです。と言うのは、ハッカーがいるじゃないですか。コンピュータ制御の車でさえ、ハッカーによれば、乗っ取られてしまう世の中ですよ。ハッカーに頭の中まで乗っ取られてしまうじゃないですかと。
でも、そこで「そうか!」と思いました。全ての人が…、一人残らず制御されてしまえば解決です。犯罪の余地はなくなります。コンピュータが神となって、全てをコントロールしてくれたら、人類は平和に暮らせるでしょう。まるで、竹宮恵子の『地球(テラ)へ』ですね。その他のSF小説でもこんなシチュエーションは、よくあることです。まあ、90%の人類の日常生活にとっては、こんな監視なんてなんの影響もないでしょう。日々、平和に楽しく平穏無事に、なんの感慨もなく暮らしていけると思いますよ。
それ以上に、全ての人の頭の中にチップが埋め込まれれば、考えるだけで人と話ができるかもしれません。テレパシーです。そしてそこでは、言語の問題もなくなるでしょう。全ての人が一瞬で意思の疎通ができる世界―――わたしが理想とする「ハチやアリ」の世界の出現です。全人類が一つの集団ということ。女王蜂がコンピュータと言う訳です。一人一人は、何も考えることなく、頭の中に浮かんでくる指令を受けて毎日をすごせます。楽なシチュエーションですよ。
近代に西洋で編み出された「自我」とか「自由意志」の概念は打ち砕かれるでしょう。西洋啓蒙主義の敗北です。人類の発展の歴史にとって、そういう概念は必要だったかも知れない…、が、さらに人類が発展する為にはじゃまな概念になってしまうのかも。そこで、もしこの進化があるべきしてあるのなら、思うのは、「ヒトってなんなのだろうか」と言うことです。
「人類よ、進化せよ」という生命の命令に従って繁栄してきましたが、振り返れば、人の「魂とか自我」なんて、そのために「脳が創りだした幻」かもしれません。
さて、そんな世界はユートピアなんでしょうかディストピアなんでしょうか。
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