以前、「G2」「Gゼロ」について書きました。GはGroupのGです。G3、G5、G7G8、G10と徐々に、主要国会議に出席する世界の国は増えて行きました。今は、G20となっています。しかし、近年、この主要国会議は、数が増えた分意見がまとまらないという憂き目を見ています。
そこで、以前に紹介したのは、『「Gゼロ」後の世界』。政治学者イアン・ブレマー氏の著作です。G20は、新興国や既得権を持った主要国の思惑が噛み合わず、世界をリードする存在にはならないだろうという著者の意見でした。「G2」とは、米国と中国のこと。同じく、著者は、この2国では世界をリードし得ないと言っています。彼が予見したのは、「Gゼロ」です。つまり、リーダーの存在しない世界。
未だ世界は、「Gゼロ」にはなっていませんが、イアン・ブレマー氏は、最近、世界は予想以上の速さで、「Gゼロ」の世界に近づきつつあると言っています。それは、シリアの化学兵器問題の米国の対応。つまり、そこで世界のリーダーとしての力を発揮できなかったこと。そして、それに続く米国の政府機関閉鎖とデフォルトの危機です。一応危機は脱しましたが、また、来年初頭には再燃しそうです。
その上、米国の国家安全保障局(NSA)がテロ対策でネット上の個人情報を極秘のプログラムで収集していたという問題も明らかになりました。米国には良い統治と民主主義があるという国際的信頼が急激に低下しつつあります。米国自体も「世界の警察」という役割への関心を失いつつあります。米国の内向き志向も相まって、世界で指導的役割を果たして行く存在がなくなっていく状況です。
そんな折、朝日新聞が「大丈夫かアメリカ」と題し、三人の識者に意見を求めています。朝日新聞が選んだのが、中国、ロシアとフランスの面々。そこに、わたしは「おもしろいなあ~~~」と思ってしまいました。
その意見の紹介だけします。拙いほんの要約でスイマセンが。
中国:ニー・フォンさん(中国社会科学院米国研究所副所長)
リーマン・ショック後、米国のパワーは傷つき、以前よりも対外政策でほかの国と相談する必要性が生じている。オバマ政権は、小さな友人との関係は調節で来ても、中国やロシアの大国との関係を改善しきれていない。これはかなりの失策だ。
また、中国の最大の市場は米国だ。中国人が最も多くのお金を注ぎ込んでいる国でもある。破産されたら、回収できない。一部の外交政策など、同意できないことはあくまでも同意できないが、協力すべきことは協力する。ビジネスはビジネスだ。我々は劇的な変化を望んでいない。平穏で自然なプロセスが好ましい。(つまり、米国権威は失墜しても、中国の覇権の為の戦争にはならないだろう・・・ということか)。
ロシア:ビクトル・クレメニュックさん(ロシア科学アカデミー米国カナダ研究所副所長)
ロシアのプーチン大統領とオバマ米大統領はお互い嫌い合っている。それでも、シリアの化学兵器を国際管理する事で合意した。お互いの思惑が合致したと言う事だ。二国間が冷戦に戻ることはないが、同盟でもパートナーでもない。世界のあらゆる地域の安定が米国だけの力にかかっている状況は終わろうとしている。欧州に米国が居続ける必要がなくなったように、アジアでも米国はプレゼンスを縮小させていく。オバマ氏はとにかく政府予算の重荷を減らす必要があるからだ。
そんな時、中国の存在はどうか。かつてのドイツ、ソ連のように拡張主義に向かうのか否か。石油が偏在している中東のイスラム世界とどんな関係を築くのか。米国はその道筋を示してはいない。ロシアにも「シベリアの独立(シベリアの中国化)」という深刻な問題がある。そこには戦争の危機さえ含んでいる。多くの同盟国、そして依存する国々を持つ米国は、国際的責務とそれに割ける力のバランスをとるという、極めて困難な課題に直面している。
フランス:アニエス・ジャウイさん(映画女優)
フランスは今年、米国と欧州連合の自由貿易協定から映画などの文化産業を除外するよう迫りました。各国の映像文化の独立性を保つため、国際憲章の制定も提唱しています。多様な作品をつくり続ける環境を守るためには、市場の論理にすべて委ねてはなりません。自分とは違う他者を理解する事で、人種差別や戦争、自身の孤独と闘うすべを培うことができます。他国の文化に触れる機会を米国人は知らず知らずのうちに減らされており、自国の文化産業の犠牲者とも言えます。
最後のフランスのアニエスさんの意見は、少々視点が違うようですが、一応、紹介しておきました。わたしは、アメリカの力が弱くなって「Gゼロ」という状態に世界がなっても、それで、戦争がボンボン勃発するとは考えにくいので、イインジャないか・・・、と思うのですが。返って、今まで米国に抑圧されていると感じていた国々が、その力から解放されて、独自の平和な国を模索して行くのではないかと考えるのです、・・・アマイですか。
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