それは、NHKの受信料です。NHK放送を全く見ないのに、なぜ受信料を払わなければいけないのか。わたしが親の家を出たのは、18歳のときです。すると、どこからともなくNHKの集金人が現われました。その時は、実際にテレビを持っていなかったので(実は、もうテレビを見るのはやめようと決心していたのです。)、正直に「テレビはありません。」と言えました。集金人は、それでも疑り深く部屋の中を覗きましたが、部屋に入ることは彼らには許されておりません。実際、なかったんだしネ。
それ以来、NHKの集金人の魔の手を免れておりました。が、息子が大きくなってこんなことを言いました。
「なんで、NHKを見ないの。受信料を払っているんだからもったいないじゃん。」
わたし、
「えっ、払ってないよ。」
息子、絶句です。それで、社会生活のモラルを教える親としてどうなの?と思ってしまったんですよ。ちょうどその頃にNHKの集金人が現れたのです。なんだかんだの話合いの末、こどもの手前やっぱり払うか、っと。そして翌年2004年でしょうか、次々にNHKのスキャンダルの発生です。NHK受信料支払の拒否者がぞくぞくと現われました。あと1年頑張ればわたしも「拒否」の仲間になれたのにと後悔しきり。こどもに言い訳できるでしょ。その後も、NHKの集金人が現れ、BSの料金を支払えと。わたしは、死んでもBSなんか契約するものかと思っているので(もちろん、これ以上NHKに余分な見もしない番組の受信料を払いたくないから)、正々堂々と「BSアンテナなんてありません」と言いました。それでも彼は、「おかしいなあ。アンテナらしきものがあるのになあ。」とぶつぶつ言いながら帰っていきました。もちろん在りませんよ。
しかし、つい最近朗報が飛び込みました。NHKの番組を拒否できるアンテナが発明されたのです。さて、このアンテナを付ければ、人は堂々とNHKの受信料を拒否できるのでしょうか。
考案者は、筑波大システム情報工学科の掛谷英紀准教授です。彼は2013年にNHKの国会中継がネットでUPされた後、削除されると言う騒動があったことがきっかけで「NHK放送だけ映らないアンテナ」の開発に手を付けたと言うことです。
しかし最初の装置は、「NHKだけ受信できなくなるアンテナフィルター」でした。TVとTVアンテナの中間に設置し、フィルターにかけてNHK放送だけカットするものです。これはベンチャー企業が商品化し、2014年7月からアマゾンや一部の店舗で販売されています。が、放送法では、「NHKの電波を受信可能な設備」を持っているとNHKの受信料を払わなければいけないということになっています。つまり、フィルターを取り外せばまたNHK放送を視聴できるのだから、受信料拒否の論理的根拠が乏しいと言うことになります。
そこで「絶対にNHK放送を受信できない設備」と主張するには、はじめからテレビにその部品が付いていて、それを外せばテレビ番組自体が全て映らなくなるというものでなければいけません。が、掛谷先生はその装置も開発したんですねえ。2015年4月にフィルター内臓のアンテナを発表しました。これで、アンテナを付ければNHK放送を受信できなくなるし、外せばテレビの機能を失うことになりました。掛谷准教授は、受信料不払い闘争を続けている弁護団に「アンテナ装置」を提供しています。裁判所がこれをどう判断するかが待たれます。
そもそもNHKの番組だけ映らないアンテナ内蔵のテレビは造れないかという疑問が湧きますが、これはNHKが持っている特許により商品化できないそうです。デジタル放送に関してNHKが持っている特許は100以上あり、その特許を使用してテレビを製造している企業にはNHK放送が映らないテレビはできないのです。NHK放送が映らないテレビを造る企業にNHKが特許使用の許可を与えることは到底ないからです。TV放送の技術革新に伴ってNHKは恒常的に特許を手に入れ、「特許が時効になる」という事態を免れています。
よしんばNHK放送が映らないテレビが出現し受信料を払わなくてもよくなっても、NHKは今、テレビを受信できるスマホやPCから受信料を徴収しようとしています。また、イギリスのBBCのように税金から徴収しようとしている向きもあります。NHKの集金人から逃れるには、生活保護の受給者になるか、寺山修司ではないが「テレビを捨てよ、町に出よ」しかなさそうですよ。
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