次回の英語READINGクラスの小説です。チェーホフは、ロシアの作家ですが、メンバーの一人は、世界の短編小説傑作集から作品を持ってくるので、英訳されたチェーホフの作品と言えます。
わたしは、たいてい短篇を渡されると三回は読みます。一回目は、ただ目を通すと言った程度。それで、その作品を読むのにどのくらいかかるか、あるいはクラスの何日前に読めば「間に合う」のかを探ります。二回目は、時間に追いつめられて、本気でわからない単語を調べつつ、根掘り葉掘り読みます。そして最後は、このような文章をまとめるために読み返します。
一回目に読んだ時、「なんだ、またお決まりの古典小説か。」と思いましたが、二回目にちゃんと単語を調べて読んだら、「けっこう面白いじゃん。」という評価に至りました。実際、ストーリーは、古典小説のいつものパターンです。金持ちの貴族階級社会に貧民が紛れ込んで一騒動といった態です。
今回はロシア貴族階級ですが、様子は同じです。登場人物は、金持ちの夫婦…、Nikolay
Sergeithch/the master of the houseとFedosya
Vassilyevena/the lady of the houseです。そして、そこに住みこんでいるa
governess/Mashenka Pavletskyです。あとは、PORTERとかMAIDとかその他の召使たち。
GOVERNESSとは、金持ち夫婦の子どもたちの家庭教師謙遊び相手のようなもので、教養はあるが貧し家庭の出身ということになっています。たいていは、若い女性です。
Mashenka Pavletsky, a young girl who had
only just finished her studies at a boarding school, returning from a walk to
the house of the Kushkins, with whom she was living as a governess, found the
household in a terrible turmoil.
これが、書き出しの文です。Kushkinsは、女主人と思います。a terrible turmoil とは、女主人の高価なブローチが紛失して、家中が大騒ぎの様子。
女家庭教師が散歩から家に戻ると、大変な騒ぎが起きていて、彼女が自分の部屋に戻るとそこには家の御主人夫婦の姿が。夫の方は、こんな大騒ぎをしてくだらないと、彼女の横を通り過ぎて行きました。女主人の方は、彼女の品物が床に散乱しているのを「わたしの袖があなたのバッグに当ってひっくり返してしまったの。粗相をしました。」などと言い訳をして立ち去ります。
Mashenkaは、メイドのLizaから事情を聞き、女主人のブローチがなくなったので、すべての召使の荷物が調べられたという事を知ります。しかし、Lizaは、「あなたの荷物からブローチは見つからなかったのでご安心なさいませ。」と言います。しかし、彼女のプライドは傷つきます。なぜ、わたしの所持品が調べられなくてはいけないのかと。そして、そういう権利は、彼らに無いと。
“Mistress has lost a brooch worth two
thousand,” said Liza.
“Yes, but why have they been rummaging in
my room?”
そして、わたしが興味深かったのは、
“But Liza, it’s vile….it’s insulting,” said
Mashenka, breathless with indignation. “It’s
so mean, so low! What right had she to suspect me and to rummage in my things?”
……She, well-educated, refined, the daughter
of a teacher, was suspected of theft; she had been searched like a
street-walker! She could not imagine a
great insult.
つまり彼女は、他の召使が調べられることはかまわないが、この教養ある家の出の「わたし」が調べられるとは、と思っているのです。そして、そこかしこに彼女の幼い妄想とプライドが顔を出しています。
部屋で彼女が泣いたり憤慨したりしていると、夕食の時間の知らせが鳴り響きます。どうしようかと思案しましたが、とにかく彼女は夕食の席に座りました。家族と招待客と彼女、みなが出来事を知っているので、席は静まり返っています。すると、女主人は突然泣き出して、「わたしは、盗まれたブローチが惜しくて泣いているのではない。この家に泥棒がいることに我慢できないの。わたしが、恩を施してきた人々の中に、ブローチを盗む人がいるなんて、なんていう忘恩なんでしょう。」と。
この言葉を聞くとMashenkaも泣きだし、わたしの持ち物を調べる権利はあなた方に無いと、席を立って「出ていく」と言います。そして、夕食の席から退場すると、the house of the masterのNikolay Sergeitchが、後を追って彼女に出て行かないようにと説得にかかります。
彼は、なぜこんな小娘が出ていくというのを必死で引きとめたのでしょうか。それは、彼がブローチを盗んだからです。彼には良心が残っていたのですね。
彼の説得とは、ここは自分の家なのにわたしには何も自由な事はない。ブローチを盗んだのはわたしだと。しかし、そのブローチは自分の母の持ち物だった。わたしが彼女の過ちを詫びるのでどうかここに留まって欲しいと。あなたが出ていってしまったら、この家には誰もまともな人がいなくなってしまうと。しかし、Mashenkaは、この家でなんの権威もない人がわたしに謝ってくれても何になろうと、このお屋敷を立ち去ります。
いかがですか。わたしはお決まりの貴族階級を描いた古典小説だと思いますが。しかし、「案外面白いかも」と思ったのは、この構図は今も続いていて、きっと未来永劫に続いて行くのだろうと思ったからです。
傲慢な暴君の金持ち階級。
なんの力もない弱いインテリ階級。
貧困に喘ぐイノセントな人々。
屋敷の主人に付けられた形容を紹介しておきましょう。
Nikolay Sergeitch:a little man, a flabby face, a bald head, not old
Fedosya Vassilyevna:a stout, broad-shouldered, uncouth, thick black eyebrows, a faintly
perceptible moustache, red hands
最後に、とても印象的な女主人の言葉です。
“I don’t say she took the brooch,” said
Fedosya Vassilyevna, “but can you answer for her? To tell the truth, I haven’t
much confidence in these learned paupers.”
金持ち階級はどんなに親切な態度を取り繕っても、discriminationあるいは自分がsuperiorであるという気持ちを取り除くことはできないのでしょう。
にほんブログ村
0 件のコメント:
コメントを投稿