2015年11月15日日曜日

上海での新生活は如何に  (ワンダーランド上海2003-2005)


さて、上海浦東空港に降り立ちました。意気揚々と。新しい生活を思って。メイはいつものように迎えに来てくれていました。最愛なる親友です。

 

「ニーハオ!」

「ニーハオ!」

 

でも、何だかメイは元気がなさそうな感じでした。心なしか顔色が青い。

 

わたしが、「どうしたの?元気ないね。」と聞くと、

 

メイは、「大変なことしちゃった。どうしよう・・・」と。

 

大変な事と言っても、世の中、そんなに大変なことは起りませんよ。それで、気軽に「どうしたの。」と聞きました。

 

メイは、わたしを迎えに来ましたが、早く着き過ぎたのでお姉さんにメールをしたのです。1歳年上の仲の良い姉妹です。お姉さんは北京でお仕事をしていますが、時々出張で上海に来ます。そんな時、メイはお姉さんの運転手を引き受けています。

 

メイが言うには、

 

「お姉さんは、いつもワンさんの会社を辞めて自分の仕事を手伝ってくれるように言っている。それで、わたしもワンさんと上手くいっていないので、お姉さんにどうしようか相談しようと思ってメールしたのよ。ワンさんの会社を辞めて先生(この頃、メイはわたしの事をこう呼んでいますが、半分は冗談です。)と一緒に仕事したいと書いたよ。ワンさんの悪口もいっぱい書いちゃったの。で…、間違えてそのメール、ワンさんに送ったネ。」

 

わたし、絶句。「それで、どうなったの~?」

 

メイは、「ワンさん、飛行機着いたら一緒にすぐ来いって言ってるよ。事務所で待ってるって。」

 

わたし、「アパートどうするの。先に契約するはずじゃなかったあ。」

 

メイは、「そうよ~。大家さんと約束してるよ。すぐ行くことになってるよ。先ずはわたしの家に行って、先生のスーツケース運ぼう。」

 

わたし、「ふ~~~ん。」

 

 

わたしたちはメイの運転する車で彼女の家に向かいました。その間にも、わたしが借りることになっているアパートの大家さんからジャンジャン携帯に電話がかかります。「まだ着かないか?まだ着かないか?」と。メイは何のかんのと言い訳しながらワンさんとの話し合いがどうなるか分からないので、契約の引き伸ばしにかかっています。そしてまた、わたしたちはワンさんとの話し合いに備えて、二人で打ち合わせもしなければいけません。

 

メイが言うには、

 

「ワンさんはわたしたちが勝手にアパート見つけたのも気に入らないよ。贅沢だって。でも会社に迷惑かけてないよ。会社が出す家賃の範囲内で探したから。それからわたしたちが日本人の文化教室に教えに行くのも気に入らないみたい。ふたりで勝手に好きなことしてるって。ワンさんとわたしが前に話し合ったのは、ワンさんが色彩の仕事する。そしてわたしたちが銀粘土の仕事する。それで話し付いてたよ。」

 

ふたりで話をしていても埒が明かないので、荷物をメイの家に置いてからワンさんに会いに行く決心をしました。ワンさんからは何の連絡も無いので、どういう気でいるのかは皆目わかりませんでした。

 



 

いざ事務所へ。もう時間は夕方5時を過ぎていました。

 

ワンさんの事務所に着くとワンさんは別に怒った風でもなく、一人の女の人()をわたしに紹介しました。「銀粘土に興味のある人でちょっと見学に来ました。日本語話せますからお話してください。」とか、言っちゃって、メイとワンさんは別室へ。ふたりでこれからのことを話し合う様子でした。

 

わたしは、会社の冷蔵庫を覗いたら、まだ置いておいた自分の缶ビールが残っていたのでそれを取り出し、一人で少し離れた場所に座ってビールを飲み始めました。ちょっとしたら彼女が近づいてきて向かい側に座りました。仕方ないので話し始めました。

 

わたし、「アクセサリーに興味あるんですか~~~?」と、取っ掛かりとして聞きました。

 

彼女、「???」

 

「銀粘土で作るアクセサリーの事を、どこで知りましたか~~~?」

「???」

「ワンさんとどういうお知り合いですか~~~?」

「わたしはワンさんと知り合いではありません。この近くにいたら友達から電話があって、ここに来て欲しいと言われました。」

「なんで~~~?」

「わかりません。日本人がいるから話して欲しいって。」

 

 

という調子でしばらく話していてわかったことは、彼女はワンさんとは全然面識もないし銀粘土にも興味はない。ただワンさんの知り合いである彼女の友達に頼まれて、ほんとにこの辺りで単にブラブラしていただけなのに、急遽呼ばれて来ただけでした。日本人との通訳を頼まれただけだったのです。しかし、メイとのイキサツはわたしたちが来る前に聞いていたらしく、わたしがワンさんとの関係をどうするのかということをしきりに尋ねてきました。彼女の日本語は、あまりしっかりしていなかったので、当たり障りの無いことを話してお茶を濁していました。

 

そうこうしているうちに2時間ぐらい経ちました。メイとワンさんが別室から出てきました。彼女たちは協力関係を破棄することで一致した様子。そして、ワンさんとメイとわたしが席に着いたのです。ワンさんの意向を推し量ると、「メイとの関係はキャンセルするがわたしはどうするか」ということみたいです。

 

ワンさんの考えでは、わたしはワンさんの方を取ると思っていたみたいです。なぜなら、彼女の方が資本金を持っているし、ちゃんと日本語が通じるスタッフ(彼女のことのよう)も用意することができることを示したからです。ワンさんはワンさんで、わたしたちが事務所に到着する前に、周到に策を練っていたのですね。でもワンさんはあくまでも彼女(日本語通訳)は銀粘土に興味がある人で、たまたま今日見学に来たのだというスタンスは崩しませんでした。

 

彼女はと言うと、ほんとにはなぜ自分がここにいるのかあまり良く分かっていなかったし、メイの前では緊張して日本語もシドロモドロニなってしまいました。「わたしの日本語まだ良くないです。」なんて言い始め、少し気の毒。メイはそれだけ迫力はあるし、日本語もうまいと言うことですね。まあ、わたしの結論は決まっているので、ワンさんにそう言いました。ワンさんは別に全然動じていない様子。「そうですか~」なんて感じで、では、後のことは後日話し合いしましょう…、で、その場はお開きとなりました。

 

わたしは、「何だ、ワンさんいい人だ。よかった。」と単純に思いました。その後、どれほどドロドロになって行くかを想像だにせずに。

 









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