2015年12月5日土曜日

警察官


次回の英語リーディング・クラスの当番はわたしとなりました。わたしが選んだ本は、Anything You Say Can and Will Be Used Against You by LAURIE LYNN DRUMMOMDです。これは、警察官が容疑者を逮捕する時に言わなければいけない言葉ですね。この本の著者は、アメリカ人の女性で、10年ほど警察官として勤め、退役後この短編集を書きました。女性の警察官5人の独白と言ったところでしょうか。十篇の短篇が納められています。邦題は『あなたに不利な証拠として』です。今回取り上げる短篇は、邦題『完全』という10ページの短篇で、原題はAbsolutesです。

 

しかしながら、この本の内容は次回に紹介と言うことにして…、警察官の話を読んでいたら、わたしは今まで何人の警察官に会ったことがあるかなあと、思いを巡らしてしまったんです。普通に日常生活を送っていたら、めったに警察官に会うことはありませんよね。道に迷った時、交番で「おまわりさん」に尋ねるくらいのものですか。わたしは、ツラツラ考えるに、5人くらいの警察官あるいは刑事に会ったと思います。多いでしょうか。少ないでしょうか。

 



 

最初の遭遇は、20代半ばの頃、まだ結婚をしていた時のことです。アパートの一階に住んでいました。夜中に大きな音がして起きてしまいましたが、上の階から植木鉢でも落ちたのだろうと思いそのまままた寝てしまいました。あくる朝、窓に小さな穴があいているのを見つけたのです。彼が、絶対銃弾の痕だと言います。警察に届けると。で、近くの交番のお巡りさんを呼んできたのです。

 

お巡りさんは、いろいろ質問をしました。そして、拳銃の弾の痕かもしれないと、アパートの1階でしたので、小さな庭があったのですが、そこを調べ始めました。その調査の仕方にビックリ。とても組織的なのです。地面を10センチ四方くらいに区切り、といっても線を引いたわけではありませんよ、絶対に今調べている10センチ四方くらいの所から目を放さないのです。そこが済んだら次の10センチ四方へ…、といった具合に進んでいくのです。

 

そして突然聞きました。「この近所のパチンコ屋によく行きますか。」と。わたしたちは、勤め先の付近のパチンコ屋には行ったことはありますが、アパートの近くでは行きませんでした。それで、「いいえ」と言うと、サカエという文字があるパチンコ玉を見せました。「これに見覚えはありませんか。」と。つまり、拳銃の弾ではなく、パチンコの玉だったのです。通りがかりの誰かが、パチンコに負けて、憂さ晴らしに窓にぶつけたのだろうということで、一件落着となりました。

 

警察官の物の探し方は、わたしの良い教訓となりました。手当たり次第に物を探すのではなく、目移りすることなく端から順番に探していくこと…、これが大事です。

 

 

二回目の遭遇は、「グリコ・森永脅迫事件」を覚えておられますか。て言うか、まだ生まれていなかったですかね。グリコ・森永のお菓子に毒を入れた、それが嫌なら、現金を用意しろという脅迫状事件です。

 

その頃わたしは、CPA事務所に勤めていました。そして、その脅迫状に使われていた紙が特殊なものだったのですが、わたしが勤めていた事務所も使っていたものだったのです。ボスが「明日、刑事が来るからよろしく。」とわたしに言いました。オフィスの公認会計士たちは、いつも他の会社に監査に出かけていて、事務所にいるのはたいていわたしだけだったからです。わたしは、「ほんものの刑事に会える~。」ともうルンルンな気分でした。

 

次の日、刑事が来ました。二人です。刑事は二人で行動する――というのは本当だったのですね。わたしは、紙を保管している場所に案内しました。「ここには誰でも入れますか。」と聞くので、「誰でも入れますよ。鍵も何もないし、その辺に積んであるだけですから。」と答えました。わたしは、嬉しくて相当ニヤついていたみたいです。彼は不審そうな目つきでわたしを睨みました。

 

わたしは、本当は「銃を持っていますか。」と聞きたかったのですが、その目つきに恐れをなしてやめときました。それが「正解」ですよね。

 

 

三度目は、小さな英会話教室に通っていた時のことです。アメリカ人の先生謙経営者と事務員が一人いただけの学校です。とってもお気楽なところでした。それである時、彼(先生)が、「生徒に警官が一人いるよ。」と言ったのです。そのことは、単なる日常会話で、忘れていました。で、ある時その学校が生徒親睦のパーティを催しました。

 

その席で、なんだか盛り上がっているテーブルがあったので覗いてみると、一人の男性が中心となって話していました。わたしの職業はなんでしょうというクイズです。皆がわからないので、彼は「公務員」だと言いました。それで、わたしはピーンときて、「刑事だあ。」と叫んだのです。「先生が生徒にひとり警官がいると言っていたよ。」と言うと、にこにこ満面の笑みで話していたその男性の表情が一変して、厳しい顔になりました。メチャ睨みつけられました。怖かったあ。

 

刑事は、一般人に顔が割れてはいけなかったんでした。そういうことです。

 

 

4回目は、上海に住んでいた時の事。たぶん2004年です。その頃は、街のど真ん中のアパートに住んでいました。相当良いところらしく、上海の市長も4人住んでいるとメイが言っていました。(中国は選挙はありませんから、市長が何人でもかまいません。)

 

ある日、一人の男性が警察官を連れて訪ねてきました。わたしは、中国語がわからないので、メイに携帯で連絡しました。携帯でメイがその男性と話します。そして、再びメイがわたしに電話をかわれと彼に言って、彼女と話しました。

 

「なんか変な日本人がいるからということで、警察が来たらしい。わたしがすぐ行くから、部屋で待たしておいて。」とのこと。

 

事務所兼わたしの住まいだったので、メイとわたしは靴を脱いで部屋に上がるようにしていました。もちろん訪問者にも靴を脱いでもらっていました。それで、警察官に靴を脱げという素振りをすると、彼は完全に無視。靴のまま上がり込んできました。

 

まもなくメイが到着し、彼らと交渉しています。ようやく彼等が帰った後、どうしてなのかと彼女に聞くと、「どうも。アパートの守衛がチクッタらしい。」と。日本人がうろちょろしているが、何をしているのかわからないと。メイが言うには、「守衛に何か渡した方が良かったね。今度、日本に帰ったら日本のたばこでも買って、彼にあげなよ。」と。

 

わたしは、「なんであんな無愛想な守衛になにかプレゼントをしなければいけないの。全然親切じゃないんだよ。」と言うと、彼女は、「親切な人には何もあげなくても良いね。親切じゃない人に何かプレゼントをして親切にしてもらうのよ。」と言いました。一理はあるけど…、なんだかねえ~、じゃありませんかあ。

 

 

最後の人物は、仕事で付き合いのある会社のSさんの夫が刑事でした。Sさんは、実は会社の社長の娘で跡取りがなく、将来は彼女の夫が刑事をやめて社長になるということのようです。知り合った時はまだ刑事でした。彼女と一緒に車に乗っていると、「ここは、ヤクザの親分の家だよ。」などといろいろ教えてくれます。

 

ある時、車で街を走っていて、銀の材料を買おうと車を止めて、お店に入りました。何を買おうかと物色していると、なんだか隣に人の気配が。でも、わたしはあまり人の事を見ないようにふだんから心がけているので、なんだろう誰かが付けまわしていると思っていました。

 

すると、小さな低い声で「先生」と。先生とはわたしのことです。念のため。見ると、Sでした。

 

「ハッハッハア。車で走っていたら、前の車が先生の車だったので後を付けてきました。気が付きませんでしたか。時々、夫のマネをしてみるんです。」ということ。

 

実際の刑事さんのお話ではありませんが、刑事の妻も珍しくありませんか。後に、会社で働くようになった彼女の夫にも会いましたが、Sより優しげな眼をした気の優しそうな人でした。きっと刑事の時は違ったんでしょうね。そうそう彼女たちの趣味は、休みの日に夫婦でマラソンする事だと言っていましたね。

 

 

以上。わたしの警察官体験でした。









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