2022年4月29日金曜日

今日の一句

 



咲きもせず


五月になるや


チューリップ




2022年4月27日水曜日

我々は言語に制約されている

 

 


 

『あなたの人生の物語』    テッド・チャン著

 

SFです。この本は、だいぶ以前に購入して読みました。その時の感想は、「真に論理を志向している話だなあ。」でした。スタニスワフ・レムのよう。しかし、レムの方が面白いと。

 

8編の中短編から構成されています。巻末の解説によると、この8編が彼が書いたすべての作品のようです。「寡作とはいえ、水準以下の作品が一つもないのは驚きだ。」と。

 

純粋に論理を体現している学問は、哲学と数学だけだと思っているのですが、言語学もなかなかと思います。つまり、わたしは言語学が好きということ。なので、レムの作品とか(理解不能なほど難しいが)言語学者の小説『薔薇の名前』など、惹かれます。

 

そして今回またこの本に目が向いたのは、興味深いことを最近のニュースで知ったからです。「鳥語はある」というもの。小鳥博士の鈴木俊貴さんが2005年に研究をスタートさせ、シジュウカラの「鳥語」を突き止めました。

 

そのスタートから今日までに(20年弱)、約20の単語とその組み合わせで200パターンくらいのメッセージを解読したのです。文法が存在することもわかりました。それは組み合わせの位置によって意味が変わると言う意味です。

 

また、シジュウカラの言葉を別の種の小鳥も理解できるとわかりました。タカを表す単語の音声を流したところ、他の鳥が反応して逃げ出しました。

 

「人間だけが特別に高度ではない。小鳥も進化の過程で、彼らに適した言葉を持つようになった。それを理解することが生物の多様性を理解することにもつながります。」との鈴木氏の言。

 

哺乳類の言語は、時々話題になります。しかし、他の生物達も互いにコミュニケーションを取っており知性があるということです。以前『植物は<知性>をもっている』という本を読みました(植物は化学物質尾を分泌して他の植物に「近づくな」とか言っているようです。)。また、『タコの心身問題』もあります。

 

言語は、人間だけの特権ではないということを踏まえて、では、どうやって違う感覚の種の言語を見つけ出すのか。それが「言語学」です。エイリアンと遭遇した時、人類は「それ」が言葉を発しているのかをどうやって知ることができるのだろうかと疑問です。

 

この本の表題の「あなたの人生の物語」は、そんなお話です。

 


 

ある時、地球上に訳の分からない物体が出現します。多数の物体が世界中に。このお話は、その一つが飛来したアメリカのお話です。

 

高さ十フィートあまり幅二十フィートあまりの半円形の鏡に似ている物体。そこにエイリアンの姿が現れます。いつ現れるかはわかりませんが、定期的にです。そこで、政府は、物理学者とか言語学者、その他の学者に依頼して、彼等エイリアンとのコミュニケーションを図ります。

 

彼等は何故現れたのか?何が知りたいのか?をこちらのことは知らせないように探れと言うミッションです。何か取引できること、つまり、こちらの科学技術が発展するような何かです。

 

主人公は言語学者。彼女は何歳でしょうか。たぶん三十台前半と思います。そして、いきなり冒頭、まだ産んでいない娘の話から始まります。エイリアンとのセッションと娘の成長の過程が交互に記述されていきます。この娘が「あなた」の人生の物語です。

 

「何故、まだ産まれていない娘か?」は、エイリアンの言語と関係しています。エイリアンの言語の構造です。もちろん、地球の言語とは全く違います。

 

地球人同士なら言葉がわからなくても地球に暮らしている環境は同じ。見ている物もたいてい同じような物。これは何、これは何と単語を突き合せて行けば、分かり合えるというもの。

 

まったく異質なエイリアンの言語、それを言語学者である彼女が、突き止めていきます。

 

彼等の話し言葉と書き言葉は全然別の物である。例えば、日本人が日本語で話して、書くときは中国語で記述するというような事か?例が単純ですね。

 

記述されたものは、単語ごとに分かれていません。すべての話されたことがまるでイラストのように一つの塊となっています。何故そのような事が可能なのか。

 

そこで彼女は気付きます。彼等は最初から何が話されるのかがわかっている。自分が話すべきことを変更することなく話す。途中で自分の意志を入れると未来が変わってしまうから。最初からすべての全体像があるのだと。言語がそうゆう構造なのです。

 

 

彼等は、現れた時と同じように突然立ち去ります。が、彼らの言語を知ってしまった彼女は、その言語に囚われてしまう。

 

本から引用します。

 

<ヘプタポッドB(エイリアンの書き言葉です。)>で考えることを習得する前のわたしの記憶は、逐次的な現在の痕跡を残しつつ、ごくわずかずつ燃焼していく意識によって生成される煙草の灰のようなものだった。<ヘプタポッドB>を習得したのちの新たな記憶は、それぞれが数年単位の期間に相当する巨大なブロック群がばらばらと所定の場所に落ちてきたようなもので、順序だって到来したとか連続的に到着したとかではないものの、それらはすぐに五十年におよぶ期間の記憶を形成した。これは、わたしが<ヘプタポッドB>を、それでものを考えられるまでに習熟することを含む期間であり、フラッパーやラズベリー(彼女がエイリアンに付けた名前)との面談の最中にはじまって、わたしの死をもって終わる。

 

 

このエイリアン研究の間に彼女は相棒の物理学者と結婚しますが、彼との間に出来た「娘」、いつ生まれるか、そしていつ死ぬのか、その未来をも全部わかっている娘のお話なのです。




2022年4月20日水曜日

コミュニケーション

 

いつもの『折々のことば』です。


喋って解決するような物事は世の中ひとつもありません。喋れば喋るほど紛糾するのが世の中です。    <渡辺京二>


解説は、


人は何でもかんでもペチャクチャ喋る必要なんかなく、人の賢さも人柄や「たち」も、たとえ使う言語が違っても一目で見抜けるものだと、日本近代史家は言う。意が通じることと、言葉を巧みに使いこなせることは同じでないと。たしかに、「口達者」ばかりが大手を振るような社会はどこか軽い感じがする。


おっしゃる通りです。基本的にはネ。哲学で留まっていたら、そうだと思いますが、現実の社会ではそうは行きません。


と言うのは、この頃、コミュニケーション能力は確かに必要だと思っているからです。世の中いろいろな人がいます。「一目で見抜ける」人ばかりではありません。いろいろな段階の人がいる事、それが「人類繁栄」のために人類が選んだストラタジーだと考えています。


いろいろな事をする、いろいろな仕事に就く、いろいろな人に会う。そんな局面では、やはりコミュニケーションです。



最近、いわゆる「お笑い」の人達が、いろいろな場面で活躍しています。俳優、作家、絵画etc. それから、企業の販促の講師とか、新入社員の教育とか。それは何故か。彼、彼女たちは、訓練、教育されているからです。話すことの。


もうひとつ、昨今のウクライナ情勢。何故このように全世界的に問題になるのか。ひとつにはウクライナ大統領の発信力と思います。彼もまた俳優で言葉のプロです。


ですから、わたしは、学校で小さい時から発言能力を育ててもらいたいと思います。英語の授業でディベートをするなら、国語の時間でもディベートをしなよ、と言いたい。発話力プラス発音力も教えてもらいたい。


日本語の発音、どういう風にしているのか説明できますか?上海にいた時、わたし、中国人に教えてもらいました。中国、その他の国では、発音が重要らしい。が、日本語はどんな発音でも通じてしまいます。何かの本で、それは日本語は漢字があるからだと言っていました。話しながら頭の中に漢字が出てくるのでどんな風でも理解できると。


話がズレてしまいましたが、とにかく、妄想力を拡げる『折々のことば』でした。


余談ながら、

わたしは、約十年間英会話教室や海外の英語学校で英語を学んでいました。そこでは、英語のほかに、「話すこと」を学びました。




2022年4月10日日曜日

『折々のことば』と、今日の一冊『マイケル・K』

 



少し前に切り抜いていた朝日新聞のコラムの『折々のことば』です。


自分が使うものは木や皮や動物の腸などがいい、自分が必要としなくなったとき、昆虫が食べられる素材であるほうがいいんだ。


南アフリカの作家の小説『マイケル・K』から。とありました。


そして、最後には自分も他の生き物を養うものであれば良いと考えたのであろうと。



わたしには、息子が一人います。一度、「どういうお墓に入りたいか。」と聞かれました。


そうだね。コンクリートに包まれたところにわたしの骨は入れないで欲しい。すべてを自然に返してもらいたい。


彼は、わかった。と、一応言いました。




このコラムを見た時は、そんなことを考えたのですが、今、読み返してみると、


南アフリカの作家じゃん。


「アパルトヘイトの時代に騒乱のケープタウンから病気の母親を荷車にのせて内陸の農場をめざして旅立つ。いろいろな国家の政策に翻弄されながらも、ひとり自由をめざす。」

と言うようなことが、アマゾンの検索でわかりました。ノーベル文学賞受賞者の傑作とも。


それで、買ってしまいましたあ。今日、届きました。


わたしが一番最初に一人で旅した海外は、南アフリカ共和国でした。1998年のこと。アパルトヘイトの政策が廃止されてから数年経っていました。わたしが滞在したのはケープタウン。南アフリカ共和国では、一番秩序の保たれた場所ということでしたが、アクセサリーを身に着けて街を歩くなとは言われました。


二週間滞在していました。大変なこともありつつ、今でも思い出の中に、人生の一ページとなったのです。


ということで、読むのが楽しみです。




2022年4月6日水曜日

絶対音感

 

絶対音感がある人は、「凄いね~!」とか、言われますが、その類の他のこともあるのでは?




わたしの場合は、バランス感覚です。何かが並んでいる時、どうしてもちょっと違うと思う事があります。「それは、もう1mm右でしょう。」とか。


こういうことは、「こだわり」と言われます。「こだわりが、凄いネ~!」と。


でも、絶対音感を持っている人が、街の音に違和感を感じるとかーーー、不協和音があると頭痛がするとかーーー。わたしもそんな感じがあります。


そんなに大袈裟ではありませんが、気分が悪い。なんでズレているの?微妙にモヤモヤします。


きっと、他の事でもこういうことはあるのではないでしょうか。色彩感覚もありそう。微妙に色がズレていると、「なんでやねん!」と思いませんか?


そんなことです。





春になりましたあ~



 

ようやく暖かい日々になりそうです。


庭の、冬に全ての葉が落ちた枯れ木のような樹に、新芽が出て今朝若葉がチラホラと。すぐに満開の桜のように、葉っぱでいっぱいになるのでしょう。鬱陶しいなと思う日も近いかも。


チューリップも例年のごとく出てきたのですが、今回はどうなるでしょうか。彫金教室の生徒がくれた球根を「めんどくさいなあ~」と思いつつ植えたのでした。


毎年、芽は出て来ます。が、花が咲いたのは1回だけ。その他の年は緑の茎・葉までで、枯れてしまいます。初めの年は、3本くらいでしたが、昨今は、6本くらい出て来ます。花はナシ。「お庭屋さん」は、陽があたらないからだと言っています。


とにかく良い陽気になって、今日は布団も干しました。




2022年4月5日火曜日

自制心

 



今月の囲碁のモットーです。


つまり自制心を働かせて、「読み」がない無駄な攻撃はしないようにしよう! と。しかし、ついついしてしまいます。それは、ひとつには好奇心に負けてしまうからです。「ここでこう打ったら、どういう事になるのだろう。」と思ってしまうから。


水溜りがあったら、ついつい足を突っ込んでみたくなりませんか?ーーーと、先生に言ったら、「ならないね!」って。


そんな碁ですが、最近少々楽しくなってきました。もちろん、今までも楽しかったのですが、苦しくもありました。対局前に憂鬱になってしまうことがあります。


囲碁を始めてから約9年です。10年で五段になるという目標でしたが、それはサバを読んでいたので、三段に修正いたしました。今は、初段から二段です。




「楽しくなってきた」のは、最近「自分の絵」を描けるようになってきたからです。絵と言わないまでも「線を引ける」ですか。つまり、碁盤上で自分の「思い」が打てるようになって来たのです。


今までは、定石とか基本はこうだからこう打つとか、そんなことばかり考えていたのです。自分の好きなように打てるようになると、「今日の対戦はどう打とうかなあ。」とワクワクすることもあります。


ということで、あと1年。目標は達成できるでしょうかあ。。。