以前も書きましたが、月一回、英語の読書会があります。読書会と言ったってそんなたいしたことはしていません。担当者が10ページ程の短編小説などをコピーし、皆に配布します。一ヶ月間でそれを読んで、集まった時に感想とか質問とかを互いにするだけのものです(先生はイギリス人)。
1月の読書会は、わたしの担当です。それでマーク・トウェインの『THE
CANVASSER’S TALE』を選びました。この読書会のために『THE COMPLETE SHORT
STORIES OF MARK TWAIN』を買ったのです。そこから、10ページ程度の作品を選び出し付箋を貼っていきました。そのような作品はたくさんありましたが、なかなか選べませんでした。何故なら内容の問題です。前回は、J.G.バラードの『溺れた巨人』を選んで、皆が戸惑った様子だったからです。今回は、皆さんの共感できるものにしたいなと。
最初に選んだのが『CANNIBALISM IN THE CARS』でした。しかし、読み進んでいるうちに、「これはダメでしょ。」と。列車の中で、主人公がなにか高貴な名のありそうな紳士と隣り合わせになります。その紳士が、退屈しのぎにと話を始めます。(いつものパターンですけど)。
彼が若かった時、同じように列車の旅をしていました。その時、吹雪で列車が立ち往生し、雪の中に閉じ込められてしまうのです。何日かは、お互いに協力し合い助けを待ちます。しかし、なかなか救助隊が来ません。そして、食料も底を尽きます。最後に、そのコンパートメントの十数人だけが生き残ります。が、まだ助けはきません。そこで・・・、ひとりを犠牲にして生き延びようという意見が出てきます。
「誰を殺して食べるか」の投票です。どうですか、読書会のレディたちには薦められない内容でしょ。その話合いの模様が延々と繰り広げられるのです。一人の人が、一人の名前を上げて、推挙します。違う人が、その人は「これこれ」の徳があるので賛成できない。とか、「痩せているので、食べる部分が少ない」とか、話しあう始末。一人は決りました。でも、まだ救援隊は来ません。そして、次の話合い…云々です。最後に、彼ともう一人が残ったところで、助けられます。さて、この話は本当のことか、あるいはその紳士が退屈しのぎにデッチアゲタことなのか。紳士は、主人公との別れ際に、ニヤッと、狂気の笑みを浮かべて去っていくのです。
わたしが、マーク・トウェインを選んだ理由はと言いますと、
彼はご存じの通り『ハックルベリー・フィンの冒険』とか『トム・ソーヤの冒険』とかの作者です。皆さんは彼が子ども向きの本の作家で、陽気な明るいアメリカンとお思いかもしれません。しかし、晩年の彼は、厭世的な皮肉屋です。最晩年の作品『人間とは何か』では、思い切り「人間」というものを否定しています。同様に、『ガリバー旅行記』のスウィフトも最後の『馬の国』では、人間不信丸出しで、馬の世界を懐かしむ…、話でした。小説家否芸術家で呑気なオプティミストなんて皆無でしょう。「いるわけない」でしょう。彼等は、人間の業・不条理を凡人の代わりに代弁して創作している人々なのだから。
わたしが、最初彼に関心を持ったのは、EUが英語をオフィシャル・ラングイッジに選んだ時に、ネットで流れた文章です。(公用語は24言語ありますが、欧州委員会では内部での作業を行う際には英語、フランス語、ドイツ語を使用することができ、すべての公用語を用いるのは公式情報や伝達の際に限られます。)その文章は、EUは英語を第一公用語とするが、その代わりに「英語を徐々に変えて行く」と言うものでした。英語独特の表現方法を見直していくということです。例えば、代表的なのはthの発音。これは将来的には、tの発音とすると。また、サイレント文字gh(through)などは、スペルからなくすとかです。EUのカンファレンスでブレア首相(当時のイギリス首相)がこういうことを五年計画で成し遂げると演説したということになっていました。
「えっ~、すごいな~。ほんとうか。」と思ったら、それは、ず~~~っと以前に、マーク・トウェインが書いていたことだったんです。興味深くありませんか。俄然、彼に興味が湧いてきたということです。
今回わたしが選んだ『THE CANVASSER’S TALE』は、「やまびこ」を売り歩くセールスマンの話です。ちょっと滑稽でまたもや「人間なんて♪ららっらーら、らーら♪」なんて内容です。皆に受けるといいけど・・・。
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