2014年9月30日火曜日

『THE INTERPRETER』---SUKI KIM


先回は、未だ読んでいない本についてコメントを書いたような形になってしまったので、今回は、ちゃんと「読んだ本」についてです。

 

著者は前回と同じく韓国系アメリカ人のスキ・キムです。しかし、彼女は前回の著者ポール・ユーンとは違い、アメリカで生まれたのではなく、韓国生まれで両親の移民とともに13歳の時にニューヨークにやってきました。それから、彼女の作品は推理小説のジャンルです。興味を引いたのは、先ずは推理小説ということ。そして、女性の作家で、主人公もまた女性と言うこと。もちろん、著者が韓国のアメリカ人ということもあります。

 

内容を少々、

 

この本の主人公SUZY PARKPARKは朴ですよ。マルタで会った韓国人が朴さんでPARKと名乗っていました。)は、29歳です。

 

Suzy Park is a twenty-nine-year-old Korean American interpreter for the New York City court system.

 

つまり、アメリカの法廷で英語を話せない韓国人のために通訳をする仕事です。彼女の両親は、貧しさゆえにアメリカに移民としてやってきました。そして、グロサリー・ストアを営みます。勤勉で親切で近所の評判でしたが、5年前にお店に強盗が入り惨殺されます。その背後には、単なる強盗と言う以上の何かが隠されていると、スージーが法廷で通訳をしている過程でわかってきました。「なぜ両親は殺されなければいけなかったのか。」という疑問に突き動かされて、彼女は真相に迫っていきます。

 

もうひとつは、スージーの姉の存在。今は行方不明になっています。スージーは真相を知るために、姉の居所を探しはじめます。(ちょっと、この辺のわたしの記憶があやふやなんですが、そんなところと思います)。スージーがアメリカに来た時は、まだ小さかったので、家族の問題はすべて姉に頼っていました。両親は英語を話せなかったので、姉がなんでもかんでも、プライベートからビジネスのことまで、通訳を引き受けていたのです。つまり、ダークな部分をすべて引き受けていたと言うこと。スージーだけが、何も知らされず幸せな日々を送っていた……、さて、その裏側には~~~、と言うことですね。

 



 

わたしが、この本を買って読んだのは、数年前と思います。この本の初版は2003年と書いてありました。わたしは、2005年に上海から帰ってきたので、その後に読んだのでしょう。なぜ「いつ読んだか」にこだわるかと言いますと、その頃、韓国系アメリカ人のことがアメリカで問題になっていたからです。「問題」と言うと大袈裟ですが、その頃、アメリカの大学で「銃乱射事件」が起きて、犯人が韓国系アメリカ人の学生でした。彼は、スージーと同じく、韓国生まれだけれど両親が移民したことによりアメリカに来た、というシチュエーション。

 

彼らは「1.5.世」と呼ばれます。2世は、韓国人だけれどアメリカで生まれた人たちです。1世は、自らアメリカに来た人たちです。1.5世は自分の意思でアメリカに来たわけでもないのに、「韓国人」と言われて、回りから疎外されます。もちろん韓国人の問題ではなく、その他の国の1.5世も同じ精神的苦痛を味わっていますが。

 

THE INTERPRETER』の主人公スージーもその姉も、このような扱いの理不尽さの犠牲者です。単なる推理小説以上に、彼女たちのアメリカでの状況が描かれていて興味深い作品でした。

 

 





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2014年9月27日土曜日

『かつては岸――ONCE THE SHORE』


最近、新聞の書評欄で見た本です。作者は韓国系アメリカ人のポール・ユーン。彼は、ニューヨークで生まれなのでわたしの好きなカテゴリーとは少々違っていますが、わたしが興味のある作家は、オリジンはアメリカではなく白人系でもない作家です。なぜでしょうか。多分、西洋社会に西洋でない異分子を持ち込んでいるということかなあ。つまり、「真実」の多様性です。

 

この本を書評で知って、アメリカ人なら英語で書かれているのだろうとアマゾンで検索したら、Once the Shore が引っ掛かりました。翻訳ではないオリジナルの方を買いました。が、例の如く、まだ読んではいません。

 

いとうせいこうさんが書評を書いているのですが、それによりますと、ポール・ユーンさんはO・ヘンリー賞も獲得している若手の作家だそうです。この本は短編集です。しかし、その背景はすべてソラ島という(たぶん済州島)架空の場所であり、そこでのアメリカ人、韓国人、日本人の織りなす物語とか。

 

韓国と日本のヒステリックな歴史観が、韓国人である「アメリカ人」の彼の手によって、幻想的なものと残酷な歴史の狭間で揺れていそうです。いとうせいこうさんによりますと、「作品にはかつてのアジア作家の土着感はない。」ということ。アメリカという土地が両国の緩衝となって、何か「おもしろそうな」物語が読めそうな気がします。全然~~、まだ読んでいないんですけどね。

 
 
 

 

ということで、感想はまた後日。。。





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2014年9月21日日曜日

Dubliners --- James Joyce


次の読書会の当番がわたしということでいろいろ悩みましたが、ようやくジェームス・ジョイスの『ダブリン市民』に決めました。ダブリン市民の単なる市井の日常を描いたものですが、御存じの通り世界の名作となっています。

 

選んだ理由は、一に、もう評価の定まった作品であると言うこと。皆さんの受けもいいでしょ(?)ちょっと軟弱な思想ね。二には、ダブリンに住む人々の話が15篇の小編にまとめられているので、会の規則の「10ページ程度」というのにぴったり当てはまると言うこと。これまた、軟弱な理由なんですね。最後の、決め手は、やっと、わたしも「おもしろそうだ」と実感できたから。

 

この本は、英語の読書会に関係なく、多分2~3年前に買ったものです。その時は、英語を勉強するのに、自分も興味が湧くような作品がいいだろうと思って買いました。が、読んだところ全然興味が湧かなかったのです。だって、本編の前にIntroductionが40ページほどあるんです。それから、『ダブリン市民』は1904年に書かれましたが、なんやかんやあって、実際の発表は1914年とのこと。本を買って、最初にパラパラと読んだ感想は、なんかアイルランドの辛気臭そうなカソリックの宗教的題材だなあ~、と言うものでした。それで、この本はわたしの本棚の片隅に片付けられたのでした。

 
 

 

そして、読書会が始まって、なにか良い本がないかなあと、本棚を探っていた時に再び脚光を浴びたと言うおはなし。もちろんそれは、適当な長さだからという意味で。それから、最初の話『THE SISTERS』だけですが、3回ほど読みました。一回目は、やはり、「ああ、しんきくさ!」と、こんな話を会に持っていったって、受けないョ~っと、止めました。それで、JG・バラードの『溺れた巨人 The Drowned Giant 』を持って行きました。

 

二回目の感想は、「やはり、アイルランドのカトリックの話だあ。」と興味が湧かず断念。マーク・トウェインの『やまびこ THE CANVASSER’S TALE 』にしました。三回目は、「んッ、なにか難しそうな。」と。これは、読みこまなければ、理解できそうにないと、読書会に持って行くのはよしました。それで、レイ・ブラッドベリーの『UNCLE EINER 』にしました。

 

レイ・ブラッドベリーは大まかに言って、ファンタジーの作家です。彼の『アンクル・エイナー』のお話は、他の人に理解されなかった模様。ファンタジーを理解できない人々がいるのだと、この時気付きました。そう言えば、「小説が嫌いでノンフィクションばかり読んでいる人もいるよ。」っと思い、自分の趣味だけで選んで一人で楽しんでいてはいけないと……、反省しました。

 

そして今回です。今までは、『THE SISTERS』を辞書を引かないで、わからないところは想像で読んでいましたが、今度はちゃんと辞書で単語を調べて読んでみようと。そうしたら、もっと語れる何かを得られるかもしれない、そして俎上に乗せられるかもしれないと思います。登場人物の一人一人も、何かを語り出してきましたから、今度こそうまくいくと思い、覚悟して読書会に臨みます。
 
 
という決心です。






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2014年9月13日土曜日

大江 健三郎


つい最近、『大江健三郎自選短篇』という岩波文庫の本の広告を見て、買おうか買うまいか、悩んでおりました。と言うのは、大江健三郎の短編集は、6~7冊持っているからです。新しく買うより、もう一度読みなおした方がいいかもと。しかし、昨日、決心して名古屋では大手の本屋さんに立ち寄ったところ(文庫本なのでアマゾンで買うと送料が発生するから)、置いてないとのこと。「えっ、この頃大江健三郎は、読まれないのッ。」って、ちょっと、ブルーな気分です。

 

考えてみたら、わたしが大江健三郎を読んでいた時期も偏っていました。最初は、高校生の時から大学生の時。その頃、わたしもなんとか小説を書けないものかと思っていましたので、大学生で小説家デビューを果たした大江健三郎に「恐れ多くも」嫉妬していたのです。そして、なぜあんなことを思いついて書けるのだと。今考えると、大層な事を私は思っていたもんです。しかし、彼の発想の原点はわたしには謎でした。

 

そして、次は、30歳前後。この時も大江健三郎の本をたくさん買いました。この頃は「真面目に」会社に勤めていたので、懐具合も良好で(経済的にはわたしの黄金期でした)、文庫本でなく単行本を買えました。

 

大江健三郎の本を再び買おうと思ったきっかけは、彼が、彼の長男が知的障害者だと公にしたことにありました。彼が学生で小説家の時に、同時に障害のある息子を持っていたのでした。なぜか納得しました。論理的ではないと思いますが、「だから彼はあんな小説が書けたんだ。」って。

 

彼がそのことを公表してからの作風は変わりました。何か静かな雰囲気で、落ち着いた私小説のようになりました。彼の息子は「イーヨー」となって、彼の小説に現われます。現実世界では、彼の息子はクラシック音楽の作曲家です。

 
 
 

わたしがその頃に買った本は、

 

『「雨の木」を聴く女たち』

『いかに木を殺すか』

『新しい人よ眼ざめよ』

『河馬に嚙まれる』

『静かな生活』

 

です。

 

その後また、大江健三郎の本とは御無沙汰しております。なぜなら彼の作品の中で、段々政治が前面に出てきたからです。小説と「理性」は別々にしてもらいたい……、と思っています。

 

 

『大江健三郎自選短篇』は買えなかったので、もう一度「家にある本」を読みなおそうかあ~~~。







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2014年9月6日土曜日

サキ


次の英語読書会はサキです。メンバーの一人が選びました。が、また、学生向きの簡単にしたものを選んだようで、英語の深みが伝わりません。オックスフォード編集の英語上達度にあわせて書きなおしている物のようです。話は理解しやすいですが、なんだか、「朝、起きました。家を8時に出ました。会社に着きました。」っていう感じか。

 

「サキってさあ、怪奇小説家じゃないの~~~。」という、わたしの質問に、「ふ~ん、心理サイコかも。」とそのメンバーは答えました。

 

因みにウィキペディアでは、「サキSaki)、本名ヘクター・ヒュー・マンローHector Hugh Munro18701218- 19161114日)は、スコットランドの小説家。オー・ヘンリーとならぶ短編の名手であり、ブラックユーモアの強い、意外な結末をもつ作品を得意とした。」とあります。

 

わたしだって、実際に彼がホラー小説を書いていたとは思っていません。「サキ短編集」っていう文庫本を持っていたような気がしますが、古本屋に売り払ったみたいです。しかし、どこでどうなって、わたしは彼がホラー小説を書いていると思っているのかを考えたところ、「そうだ、『怪奇小説傑作集』に入っていたかも。」と。怪奇小説のアンソロジーです。わたしは、五巻まで持っています。その後、出版されたかどうかは知りませんが。この本には、ラヴクラフトやブラックウッドなどの生粋(?)の怪奇小説家の短編はもちろん入っていますが、その他アポリネールやトルストイの小説も組み込まれています。

 

見てみたら、やはり入っておりました。1969年に買っていました。サキの作品は、『スレドニ・ヴァンシュタール』という題。小さな男のことその叔母が主役です。その本の解説を読みましたら、サキは、「ビルマ駐在の警察官の子として生まれたが、生まれるとすぐ、ひとり本国のイギリスに帰されて、彼の叔母と暮らしていた」ということです。彼の作品には、度々、口やかましい叔母が出てくるとか。相当、悩まされたんでしょうかね。

 

この「スレドニ・ヴァンシュタール」とは、少年が飼っているイタチの名前です。「口やかましく、根性の曲がった彼の叔母」と二人暮らしの中、その叔母にイタチの存在を知られるとイタチが殺されてしまいそうなので(実際、彼が大切に育てていた雌鶏は、殺されて食べられてしまったのだ。)、少年は納屋にイタチを隠して飼っています。そこで悲劇が起こるという塩梅。ちょっと、ゾクッとしますよ。興味のある方は…、どうぞ。

 
 
 

 

読書会のサキの作品は3篇の短編でした。それぞれブラックユーモアたっぷりの作品でした。ホラーではありませんが。意地の悪い叔母も出てきます。わたしは、この作品を読んでいて、マーク・トウェインを思い出しました。同じく皮肉っぽく、クールな人生観です。イギリスとアメリカですが、生きた時代もほぼ同じのようです。次回の読書会はわたしの当番ですが、またマーク・トウェインの短編を持って行こうかなあ、なんて思ってしまいました。同じ傾向はダメかなあ。ジェームズ・ジョイスの『ダブリン市民』とどちらにしようかと悩む秋の夜長です。





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