リーディング英語クラスは昨日無事に終了。皆さんのいろいろな意見を聞いて、考えが深まりました。やはり意見の交換は大切ですね。主人公のI(一人称のIです)が死んでいると思ったのは、わたしともう一人、これは白昼夢だと考えたのが先生ともうひとりの生徒でした。PEDOMETERが25と示していたのは歳の事だとは皆一致しました。
このIが死んでいないと考えた生徒は、とてもポジティヴな人で、人がそんなに簡単に死ぬことに納得できないのです。主人公は、人類の目的は進歩であると考えている同じくポジティヴな人。「進歩、前進を目指すこと」は、人類にとってはとてつもない苦悩を生みだす元凶だとは思っていても前に進むことを望む――だから「人」なんだという考えです。
この意見を聞いてわたしは「そうなんだ」と思いつきました。それは、著者であるFORSTERは、その「ポジティヴな考え」を明確に否定しているのではないかということ。最初の場面でIは歩くのに疲れ果てて、道端のマイルストーンに坐り込みます。この「歩くこと」が人生を意味しているという考えは皆が賛成でした。
At first I thought I was going to be like
my brother, whom I had had to leave by the roadside a year or two round the
corner, H had wasted his breath on singing, and his strength on helping
others. But I had travelled more wisely,
and now it was only the monotony of the highway that oppressed me---dust under
foot and brown crackling hedges on either side, ever since I could remember.
彼は彼の兄(わたしは兄と思います)を1~2年前に道端に置き去りにした。それと同じように今彼も道端に疲れ果てて坐り込んでいる。わたしは、この「置き去りにした」というのは、兄が死んでいくのをそのままに任せたという意味と思います。と言うのは、彼の兄は、歌ったり、人を助けたりして自分の人生を無駄に過ごしていたから。それに引きかえ「わたし」は、もっと賢く実際的に人生を過ごしてきた。しかしそれは「わたし」を押しつぶす単調な道であった。
この場面をわたしは、単に「兄が亡くなった」と捉えていましたが、実は兄が彼より先に死んだのは、兄が実際的な性格の人間ではなく自分が感じることをそのままに生きて行くことができた人だからではないかと思うのです。つまり、「死」=「天国に行く」と言うこと。彼は天国に行く資格があったのだということではないでしょうか。そして今、彼は自分の人生が単調であったことを悟った。天国に行く資格を手に入れたということでは。
My muscles were so weary that I could not
even bear the weight of those things I still carried. I slid off the milestone into the road, and
lay there prostrate, with my face to the great parched hedge, praying that I
might give up.
A little puff of air revived me. It seemed to come from the hedge; and, when I
opened my eyes, there was a glint of light through the tangle of boughs and
dead leaves. The hedge could not be as
thick as usual. In my weak, morbid
state, I longed to force my way in, and see what was on the other side. No one was in sight, or I should not have
dared to try. For we of the road do not
admit in conversation that there is another side at all.
彼はマイルストーンから滑り落ちて地面に腹這いに横たわります。わたし、彼がこの時死の入口にいたと思います(彼が死んではいないと思ったクラスの人たちは、ここで意識が薄れ白昼夢を見だすと考えたようです。)。そしてちょっとした息吹を感じ、彼が目を開けたと思ったことは、死に直面した人々が見る幻影。The Hedgeは、天国に通じる道です。だから、彼はこのヘッジに入り込むことを恐れるのです。生きている人は、彼岸に入る道を進むべきではないと。しかし、はいっちゃうんですよね。
そして天国らしき所に行きつきます。前述した「著者であるFORSTERは、その考えを明確に否定しているのではないかということ。」を思って、もう一度読み返しましたところ、この場面に引っ掛かりました。
---when we passed some long grass from
which came the voice of a girl singing exquisitely to herself, he said again: “There
are no others.” I was bewildered at the
waste in production, and murmured to myself, ”What does it all mean?”
He said: “It means nothing but itself”---and
he repeated the words slowly, as if I were a child.
ここでは人々は自分のためにいろいろなことをしています。他の人との戦いではない。走っている人も歌っている人も、他の人よりより速く走ろうとかより上手に歌おうとかは思っていない。子どものようにただ好きな事をしているのです。これこそ「ヒトの真の姿」ではないかと著者は言っているのでは。人は向上する事を求めて原始以来突き進んできたがそれは何をもたらしたのか。苦悩です。人には、進歩を求めないで「こどものように素直に生きる」また「他の動物のようにただ生きる」と言う道もあったはず。
「エデンの園」と言う言葉を思い出しました。ここは、エデンの園だったんですね。人々が幸せに暮らしていた場所。そして「欲望」を知って追い出された場所。だから、
It is through this gate that humanity went
out countless ages ago, when it was first seized with the desire to walk.”
なのでは。
彼は、ここに留まりたくなかった。なぜなら、この場所はすべてが停滞した場所だから。彼は、いくら苦悩が伴っても前進することを望んでいた。
“Give me life, with its struggles and
victories, with its failures and hatreds, with its deep moral meaning and its
unknown goal!”
だから彼はここで供された夕食も拒否し何も食べませんでした。ここの物を身体に入れたらもう永久に元の世界に戻れないと思ったからでしょう。また、ここの住民は家畜のように眠ると彼が言っているのも印象的です。
But I was determined not to sleep in the
country, for I mistrusted it, and the people too, for all their
friendliness. Hungry though I was, I
would not join them in their evening meals of milk and fruit, and, when they
gave me flowers, I flung them away as soon as I could do so unobserved. Already
they were lying down for the night like cattle---some out on the bare hillside,
others in groups under the beeches.
彼は自制心をなくし、側を通った男性から飲み物を奪い取り飲みほします。それはビールより弱い飲み物でしたが、疲れた彼の体には強烈で意識を失います。そして、その瞬間に彼がビールを奪い取った男性は彼の兄だったと気付くのでした。そして再びここがエデンの園ではないかという記述があります。
It was nothing stronger than beer, but in
my exhausted state it overcame me in a moment.
As in a dream, I saw the old man shut the gate, and heard him say: “This
is where your road ends, and through this gate humanity---all that is left of
it---will come in to us.”
彼はビールを飲むことでこの場所に受け入れられた。彼はここで怠慢な幸せな生活を永久に送るのでしょう。それが、著者が望む「人間本来の姿」なのです。罪なき人々の。
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