藤沢周平の本を買った。が、わたしは彼の事を知らない。知っているのは、彼の名前と時代小説作家だったという事、純文学的作風ではなく何やら「書きものの職人」と言ったような作風らしいという事くらいだ。
純文学的時代小説とは「どんなものか」とは、知らない。時代小説自体をあまり読んだことはないものの、彼の作風は今までわたしが読んだ時代小説の範疇からは外れる正調派のよう。
時代小説に関してもわたしの趣味は、怪奇・幻想・妖気漂う…、といったもの。例えば、半村良や山田風太郎。そして、産前産後の育児休暇の間には、柴田錬三郎の『眠り狂四朗』を全巻読破した。何巻あったかは定かではないが、15~20(?)くらい?
そこで、何かの気の迷いで「藤沢周平」である。なにやら人情話っぽいのだ。賭場の壺振などのやくざっぽい登場人物が、少女の純情とか、市井の無垢な人々の情けに感じ、自分の「キャラに無い」なにか良い事をしてしまう…、といった態らしい。わたしが一番キライな「お涙頂戴物」だ。
なぜ、買ってしまったのかなあ。ちょっと「心が弱っている」のかもしれない。とにかく買った本の題名は、『夜の橋』。短編集だ。「表題作他八篇」とある。
「博打に溺れたせいで夫婦別れした「おきく」が、半年ぶりに訪ねて来た。再婚話の相談で、もう自分には関係ないと一旦は突き放す民次だったが、相手がまぎれもないやくざ者とわかるや、危険を顧みず止めにでる……雪降る江戸深川の夜の橋を舞台に、すれ違う男女の心の機微を哀感こめて描いた――」
と、文庫本の説明書き。
どうでしょう。ググッと来ますか。
わたし、きっと泣いてしまうなあ。くだらないと思いつつ、何にでも泣いてしまうのだから。だから、「わたしの感情」を勝手に揺さぶるこの手の本(ドラマや映画も)には近づかないようにしているのに。「涙とともに弱った心が浄化されるかも」とでも思ったのでしょうか。
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