『囁き男』 ミステリーです。
この本は前回書評を書いた『汚れなき子』を購入した時についでに何気なく買ったものです。大当たりでした。読み出したら止まりませんでした。
巻末の解説の最初の一文が、「背筋の凍るような恐ろしい犯罪が題材であっても、読み手の心の奥底まで入り込んで感情を揺さぶり続け、読み終わった後もなかなかその状態から放してくれず、いつまでも心に居続けるミステリーに出くわすことがある。本書『囁き男』はまさしくそんな一冊だ。」でした。
ほんとにそうでした。終わりの方では、思わず泣いてしまいました。そして、読み終わった後もそのままこの物語に浸っておりました。
話はだいたい二つのルートで成り立っています。1ページ目は、
ジェイクへ
きみに話したいことは山ほどあるんだけど、ぼくらはいつも、面と向かい合うとうまく話ができない。よね?
とあります。
このジェイクは、小さな息子で(後でわかりました。7歳です。)書いている人物は父親です。最近、母親であるレベッカが病死したらしく、父と息子が残されたというところ。父と息子の間にたってコミュニケーションを図っていた母親が亡くなって、お互いどう向き合えばよいのかわからない状態の様です。
父親は作家ですが、レベッカの死後、何も書けないでいます。この人物の息子ジェイク宛に書いたものが、頻繁に挿入されます。最初の内は、なんでこれが挿入されるんだろうかと疑問でした。ほんとは、この父親がレベッカを殺したんじゃないの?なんて勘ぐってしまいました。
これがひとつのルート。もうひとつは、警部補ピート・ウィルスの物語。彼は、20年前に起きた事件に悩まされています。犯人は捕まって刑務所に服役しているのですが、彼が殺した5人のちいさな子供たちの内一人の死体がまだ見つかっていません。
彼が、この犯人を逮捕して手柄を立てました。が、この一人の子供が彼の心にひっかかります。この子を探し出して、家族の手に委ねたいと20年もひとり捜査をしています。そのために、刑務所にいる犯人フランク・カーターに定期的に会いに行きます。そして、その度に打ちのめされて、心がボロボロになります。
この犯人が「囁き男」という異名を取っているのです。幼い少年を残酷な手口で殺し、平気な態度で服役しており、警部補のビートが面会に来るたびに、彼を恣意的に痛めつけています。しかしながら、この事件も過去の事であり、この物語の主役の事件は「何なのか」。
そして、事件が起こります。ニールという小さな子供が行方不明になります。彼の両親は離婚しており、ニールは両親の間を行ったり来たりしています。そして、父親を訪ねていた時、父親が吞んだくれて、母親のもとにニールを送り届けることが出来なくなり、一人で帰らせました。そこで、事件が起きたのです。
アマンダ・ベックという警部補がこの事件の担当で、この3つの物語がどのように関係してくるのかが、キーポイント。
ニールは、行方不明か誘拐されたのか?この子を見つけるために必死の捜索が展開されます。しかし、もう絶望的だと思われたとき、さらわれた同じ場所にニールの死体が置かれていました。それは酷い状態で。
この状況から、この事件は20年前の「囁き男」の事件と何か関係があるのかと疑われます。そして、物語の中盤あたりで、先のジェイクの父と警部補ピート、そしてニールの事件が絡み合ってくるのがわかります。
この先は、読んで下さい。
この話の肝は何でしょうか?
ジェイクと父親の危なかしい関係。警部補ピートは、昔アルコール中毒で家庭を壊した。そして彼には別れた幼い息子がいた。また、服役中のフランク・カーターには小さな息子がいて、彼はこの子を嫌っていた。サデスティックに日常的に暴力を振るっていた。
これらの問題も事件に関係し、最後に落ち着くところに落ち着くのでした。
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