2013年8月13日火曜日
『動物が幸せを感じるとき』(原題は『Animals Make Us Human』)―――2
前回、著者の「食料にされる動物と人間との関係は共生」という言葉に「食べられるものに棲みかと餌を恵んで、その行為をお互いに助け合う共生」とは言えないと思い、不賛成と書きました。実は、人間を神が作りたもうたこの世で最高の特別な存在とする文化とアジアやアフリカ南米などの自然を畏怖する(アニミズム)文化の違いかなと思いました。とは言え、この本全体を通して批難しているのではなく、興味深く読みました。(ところどころ???という所はあるものの)。
内容は、
��. 動物の幸せ
��. 犬
��. 猫
��. 野生の動物
��. 動物園
��. 馬
��. 牛
��. 豚
��. ニワトリ
となっています。
それぞれの章で、ふ~~~ん、なるほどと思う個所があります。特に「牛・豚・ニワトリ」の章は、食べられるために飼育されている動物ですから、その取扱いに心苦しさを感じます。ニワトリの扱いは哺乳類でないため特にひどいのかも。
日本のことは知りませんが、この本によるとアメリカの精肉業界には「福祉監査」という制度があるようです。動物が適切に扱われているか監査するわけですね。著者もマクドナルド社に監査を頼まれて初めて出向いた時は、「ワァッー」と言うほどひどい環境だったと書いています。それでも、マクドナルドのような大手の会社が、取引先の監査を依頼すると、精肉業者は取引を打ち切られないように努力するので、環境が大幅に前進するようです。
ニワトリの場合はその生活環境という前に、直接身体的な苦痛を味合わされます。著者はそのことを三点指摘しています。作業員の乱暴な扱い。業界の悪い習慣。粗悪な遺伝形質です。作業員たちが自分たちのレクレーションのためにニワトリを物のように投げ合ったりしている様子は、ユーチューブなどにも流れました。業界の悪い習慣とは、ひとことで言ってしまえば、作業の効率化や設備投資の経費節減のために起る粗悪な環境という事でしょうか。最後の遺伝子形質については、ほんとに、う~~~ん、と唸ってしまいました。
育種業者は最も生産性の高い(たくさん卵を生み成長もはやく体重も多い)遺伝子を選んでそればかり繁殖させるので、極端な選択による悪い結果が現れています。例えば、卵をたくさん産むように操作された雌鶏は自分のカルシウムを減らし骨折が多くなるとか。早く成長するように品種改良されたブロイラーは、骨が充分形成される前にどんどん成長するので、骨の形状に問題が起こり、生まれながらの奇形となります。ニワトリの餌には痛み止めの薬が処方されているようで、この餌を好んで食べるものも見られるといいます。また、胸肉を大きくするように遺伝子操作されたオスは、巨大な胸がじゃまをして自然な交尾ができなくなる傾向にあるようで、七面鳥の場合はすでにメスは人工授精を受けています。豚の場合も、より大きくという選択で体重を支えきれず脚の骨折が頻繁に起っているようです。脚を引きずって歩く姿が多くみられると書かれています。
ほんとに、人間はどこまで突き進んで行くのかなあと感じてしまいますね。著者のスタンスは、「人間は農場の動物を繁殖させ飼育しているのだから、動物が相応な生活をし、痛みのない死を迎える責任を負っている。動物が生きているあいだは、物質面と精神面の欲求を満たしてやるべきだ。」というものです。これは、「処理工場の設計をしているのに、よく動物のことを心配できますね。」としょっちゅう聞かれることに対する彼女の答えです。この辺のことは、少々判りかねるところもありますが、ともかく、彼女のおかげで動物たちの環境が向上していることは確実ですね。
動物に関係ないところで、興味を持った個所があります。続きはまたの機会に。
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