2013年8月13日火曜日

『動物が幸せを感じるとき』





『動物が幸せを感じるとき』という本を読んだ。原題は『Animals Make Us Human』。ずいぶん違う題名だが、訳者はあとがきで次のように説明している。



「グランディン(著者はTemple Grandin)が本書で訴えたいのは、私たちは、動物のおかげで人間として生きているのだから、動物に幸せな暮らしをさせる責任があり、どうすればその責任を果たせるかということです。原題には、動物に対する感謝の気持ちがこめられているのではないでしょうか。」



わたしは動物自体にあまり興味はないが、人間が絡んでくると話は別。子供の頃犬を飼いたくて、『犬を飼う知恵』という本を買って読んだら、相当世話をしなければ犬は幸せにならないと理解して、犬を飼う事は断念した思い出がある。著者は自閉症だったが、成長して動物学者になったという経歴。この本は彼女の二冊目の本らしく、両方とも全米ベストセラーになっている(もう一冊は『動物感覚』)。自閉症だったことから、自分の意志がわかってもらえない経験で、もの言えぬ動物の内面を推し測ることができると言っている。



人間に飼われている動物がいかに不当な扱いをされているか、そして人間が動物を飼う事をやめることができないのなら、動物の暮らす環境を少しでも向上させようというのが、彼女の意図のよう。彼女は動物園などの環境整備のために働いているが、同時に精肉業界のためにも働いている。なぜ、そのような精肉業界の利益の為に働くのかと、動物擁護の団体によく批難されるが、彼女は業界で働く先進的な管理者や敬意と愛情を持って牛や豚などに接する作業員を見て、人々に肉食をやめるように説得する側でなく、業界を改善する側に従事しようと思った。



「わたしは長年の間じっくり考えて、食料にされる動物と人間との関係は共生にちがいないという結論に至った。共生とは、ふたつの生物のあいだで相互に恩恵がある関係だ。人間は動物に餌と棲みかを与えそのお返しに、繁殖牛が生んだ子牛のほとんどを食料とする。」と著者あとがきで述べられている。



本当にそうだろうか。食べられるまでの間、餌と棲みかを与えられて、動物はありがたいと思うのか。成長する前に食べられてしまう命を与えられて、それが幸せなのか。典型的な功利主義かなと思う。幸せの量を計算し、より多くのものが幸せと感じる方を選ぶ。大多数の幸せのために、少数の不幸を考慮しないという事。もちろん、わたしも肉は食べる。しかし、動物との共生関係などとは考えない。我々はただ殺生しているのみだ。どちらが正しいのかはわからないが、殺す言い訳はしたくないと思う。







それが「人と動物の共生」などとはとても言えないよ~~~。





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