2013年8月13日火曜日
つづきです。
��ケープタウンでの生活のはじまり>
彼女の家はヨーロッパ調のアパートメントだった。玄関ホールまでは、少し階段を登らなければならない。ホールはちょっとしたスペースがあり、ソファーが置かれていた。来客をもてなすことができる。他は、二つの寝室とキッチン、そしてバスルーム。どうも一人暮らしらしい。寝室のひとつに案内された。机とベッドがあり、八畳くらいの部屋。初めての経験なので、それが良い部屋なのか悪い部屋なのかはよくわからないが文句はなかった。
彼女の家に着いたのは4時くらい。それから、荷物をほどいて、お土産などを渡し、キッチンの使い方やシャワーの使い方などを教えてもらった。初めての経験なので聞きたいことは山ほどあったが、先ずは学校の場所。お迎えの運転手に案内はされたものの実際にはどこだかさっぱりわからない。学校までひとりで行かなければならないのだから、それが優先事項だ。
「ここに地図はないけど、ホテルで働いていて、そこにあるから明日いらっしゃい」と彼女が言った。
まだインターネットが普及していない時代だから仕方がない。とにかく場所は明日の話となる。
次の問題は、ビールだ。
「ビールはどこで買えますか。」と聞く。
「近くの大きな通りにスーパーマーケットがあるから、そこで買えるわよ。でも、土曜日と休日は、売ってないわよ。」
「どういう意味ですか。」
「お休みの日には、アルコール類を売ってはいけないのよ。でも、土曜日はスーパーなら売っているかもしれないから、行ってみれば。」
わたしは、「嘘でしょ。」と思ったが、とにかくスーパーの場所だけは心に留めた。
まだ夕食までに時間があったので、スーパーに行くことにした。夕食にはビールも必要・・・でしょう。ファミリーの家から、少し下り坂を下がって行くと、大きな通りに出る。あとでこの坂は上の方から順番にお金持ちの居住区となっているとわかったが、わたしのファミリーの家はだいたい中間地だった。スーパーは通りを右に曲がるとすぐ見えると聞いていた。その言葉通りすぐわかった。スーパーは大きかった。中に入って、ビールを求めて歩き回る。すると驚いた。アルコールの並んでいる棚だけ布で覆いがかけられ、その上にチェーンが張り巡らされている。所々に錠も見える。彼女の言ったことは、ほんとうだった。どうもそれには宗教的理由があるらしい。カソリックの国は、昔はどこでも休日にアルコール類は販売しなかったのだ。南アフリカ共和国は、未だにその規則を守っているということになる。
とにかく、ビールは手に入らなかった。しかし、わたしのビールに対する情熱は並みじゃない。まだ、何か手があるはずだと頑張る。外に出ると、スーパーの警備員らしき制服を着た人が立っているのが見えた。若くてやさしそうな女性だったので、「ちょっと、聞いてみようかな~~~」なんて言う気になって、
「こんにちは。どこか、ビールを売っているところをご存じないですか。」と尋ねてみた。
「そうねえ、今日は土曜日だからお店はどこもアルコール類は売ってないでしょうね。レストランに行ってみれば。」
「ああ、そうか、そういう手があったか」と感心する。しかし、ホームステイ契約には朝食と夕食が付いているので、「仕方がない。今日の所はビールをあきらめて家に帰らざるを得ない。」と断念。
つづく…
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