2013年8月13日火曜日

HUMAN――なぜヒトは人間になれたのか

��前に書いた事と重複しますが・・・スイマセン)



思うに、私たちは『心』を人にだけ与えられた『ギフト』と考えがちです。しかし、ヒトは『人として』<神>に作られたものではなく、他の総ての生き物と同じく40億年をかけて進化し続けた結果であるのと同様、心も始めから『心』として人類に備わっていたのではなく、進化によって手に入れたものであるのでは。



そして、最近、『HUMAN――なぜヒトは人間になれたか』というこの本に出会いました。NHKが番組として取材したものの記録です。ホモサピエンスはアフリカで約20万年前にサルから枝分かれしました。その時点ですでに身体的にはほぼ現代人と変わらぬ姿であったと言われています。それではなぜそれから今までの間、人類は身体的に進化しなかったのか。その答えを「それは人類が『心』を発達していた為」と考えて、この取材班は調査を始めました。



本は「協力する人」、「投げる人」、「耕す人」そして「交換する人」という章建です。取材班はそれぞれの項目で、世界中のその種の研究をしている学者にインタビューを試み、人類がどのように徐々に『心』を手に入れ、その他の地球上の生物を押しのけて、最強の生物として繁栄していったかの道程を検証します。人類の進化の過程、あるいはなぜ他の生物には見られない発達過程を経たかという調査や学説は多々ありますが、この調査はそれを『心』と結びつけたところに新しさを感じます。



また、『心』を論じると、おいおい哲学的方向に傾いていきがちですが、この本は科学的スタンスを保ち続け、かつとても分かりやすいと思います。と言って単純にはならず、各章で「なるほど!」と言った感想を持ち得ます。例えば、第一章「協力する人」では、狩猟採集時代にヒトがお互いの獲物を分けあって、共に協力しながら家族・部族全体としての発展を成し遂げていくと述べられていますが、一方、対立が「殺し合い」にまで発展していくのは、ヒトだけの特徴であると。一見矛盾するようなこの行為が、実はお互い裏腹の関係にあるという説明は、とても納得のいくものです。もうひとつ、第4章「交換する人」で述べられるギリシャ、アテナイでの世界通貨と言うべきコインの発現が、『アンティゴネ』などのギリシャ悲劇を産み出したという指摘はとても興味深く感じました。



全体として、とても分かりやすく、読みやすく、興味どころ満載といった感想です。





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