『虚ろなる十月の夜に』
語り部の犬は、切り裂きジャックの相棒。その他、魔女のジルとその相棒のキャット。等々、それぞれの特異な人物にそれぞれの特異な動物の相棒と、この物語を盛り上げます。そして、「暗闇から忍び出るもの」――。
荒唐無稽なホラー、ファンタジーです。「この馬鹿々々しさをちゃんとした読み物にしているものは何か。」と、考えてしまいました。先ずは、やはり「クトゥルー神話」でしょう。
一人の作家によって創り上げられた神話体系が、ひとつには、この物語を支えているのでは。私自身、この神話を追い続けているので、話に深さを増しているような感じです。そして、他の作家たちが、ひとつひとつ話を積み重ねていきます。未だに、クトゥルー神話は進化しているのです。
次に、語り部が犬だということ。相棒の切り裂きジャックとタッグを組んで、「暗闇から忍び出るもの」を「阻止するか手助けするか」の「ゲーム」に参加しています。その他特異なキャラクター満載。
しかしながら、これらの主演級のキャラクターは前面には出て来ません。物語を進めていくのは、それぞれの相棒の小動物。猫、蛇、蝙蝠、ネズミ、梟等々。彼等の友情、反撥、騙し合い……。そして、ここには、人間の関与が皆無です。超怪物の人造人間を生み出したフランケンシュタイン博士は人間でしょうが。あとは、ドラキュラ伯爵、魔女、人狼。
唯一、人間として前面に出てくるのは、あの名探偵シャーロックホームズ。登場人物が切り裂きジャックとかドラキュラ伯爵などなどですから、その辺に死体とか血を吸われた人がゴロゴロ出てくるわけです。そこで一応人間界の警察は調査をする訳です。その辺りが名探偵登場の理由です。
彼は、唯一人間で、この辺りで起きている異様な出来事を理解する人物。クライマックスでも活躍しますよ。
「読ませる」のは、人間ではなく、相棒の動物同士の心の触れ合い、フランケンシュタインの創り出した人造人間の愛らしいキャラ、そして、「ゲーム」の参加者ではない大きな灰色の人狼の暖かさでしょうか。
なんか、ホラーだけど、キュンとしました。
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