『超・進化論』を読んで
わたしは、すぐ虫に喰われる。たくさん人が居るところでもわたしだけ喰われる。ゴミ出しのため、庭を歩くと、3~4個所は刺された跡が残る。その道中で、草むしりをしたり邪魔な木の枝を切ると、樹液が出てわたしを襲う。
きっと、彼らは自分を傷つける「わたし」に復讐しているのだ。という妄想は、あながち間違ってはいなかった。
本書は、「植物と昆虫、微生物」の共存共栄のシステムを説いたものです。以前、『植物は<知性>をもっている』と『昆虫はすごい』を読んだ時、ものすごく刺激を受けました。その時点では、まだ想像の域をでなかった事柄が、今回、研究あるいは研究技術の進歩によって実証されつつあります。
主に、わたしは、「動かない静かな植物が、実は活発に活動していて、ヒトとは別種の<知性>を持っている。」ということに興味があります。植物は、しゃべっている、感じている、つながっているという事。
例えば、彼らは化学物質を放出することで、まわりの植物に「近づくな!」とか「危険!注意しろ!」と知らせている。また、根に付く菌類によって近くの植物に栄養を供与し、お互いの生存を促しているとか。
第1章は、植物。第2章は、昆虫。第3章は、微生物。という構成です。それぞれの章の終わりに、研究者へのインタビューもあり、とても興味深いです。
豊田正嗣さんは、「植物の刺激への反応を可視化したとき、鳥肌がたった」と述べています。植物、葉っぱを触れられた時、「今、触られている!」という信号を他の細胞や組織に伝達しています。
研究技術の発達で、このことを可視化する事に成功しました。「切られた!」ということもその植物全体で共有しているようです。「撫でられたから、愛されている。」とは、思っていないようですよ。返って成長が阻害されるようです。
ハイディ・アペルさんは、「植物は昆虫が自分の葉をかじる音を『聞いている』。」と述べています。植物は、「音楽に反応する」と言った人間の思い込みより、もっと自分に重要な情報に反応しています。昆虫、風、雨粒などの環境の音です。
それらの情報から自身を守っています。昆虫からの防御などは、齧った昆虫を特定してそれに合わせて、防御物質を作り出しています。わたしたちの免疫物質のようなものです。
高林純示さんは、「植物の『おしゃべり』を解読する」と言います。虫に葉を齧られたとき、植物はその虫の天敵を呼び寄せて退治してもらいます。そのようなシグナルを送っているのです。または、「襲われている!」と隣の木にシグナルを送り、あらかじめ対処するように促します。それを立ち聞きしている他の植物もいます。
虫と植物のコミュニケーションを研究することによって、農薬を使わないで作物を育てることもできそうです。
タミル・クラインさんは、「森の木々は地上で競争し、地下で手を握っている!」と指摘しています。
木々は、地上では栄養を得るべく、太陽の方に枝を伸ばして陣地争いをしていますが、地下では、光合成の能力の低い植物を助けているのです。植物の根から根へ栄養を運んでいるのが菌根菌です。
こうして、森全体が共存共栄しているのですねえ~。そのバランスを壊しているのがヒトであるという事実もお忘れなく。無理な伐採で、森のツナガリを奪っていきます。
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