2013年8月13日火曜日

英語の話

ファーストリテイリング(ユニクロ)社長が、社内の公用語を英語にすると発表した。その理由は何かと疑問に思っていたが、最近、新聞のインタヴューに応えているのを読んだ。その記事の主旨は、就職活動を始める学生に対するアドバイスを著名人に求めるものだが、最近の採用の際のキーワードに「グローバル人材」という事があり、そのために彼に意見が求められたようだ。





質問1:最近の就活のキーワード、「グローバル人材」とは。



世界中どこででも、日本でする仕事と同様な役割をこなせる人。その国の文化や思考を理解して、相手と本音で話せる力を持つ者。



質問2:英語を社内公用語とする理由は。



欧米ではもちろんアジアでもビジネス言語は英語である。ビジネスシーンで英語を話せないのは、車を運転するのに免許がないのと同じだ。



質問3:英語を社内公用語とする必要性はあるのか。



そうしないと社員が英語を勉強しない。今後3~5年で本部社員の半数は外国人にする。英語なしでは会議もできないことになる。しかし、英語はあくまでもビジネスの道具で、我々の思考や文化の基準言語は日本語のままだ。



質問4:英語は苦手だが優秀である学生は採用するのか。



しない。

十年後の日本の立場を考えると、国内でしか通用しない人材は生き残れない。





以上が、だいたいの彼に対する質問とその答えである。





もうひとつ、おもしろそうな題の本を見つけた。『日本人の9割に英語はいらない』である。著者は成毛眞。1955年生まれ。1986年、マイクロソフト社に入社。91年、代表取締役社長に就任。2000年に退社後、投資コンサルタント会社「インスパイア」を設立。



わたしは、この本を読んではいない。すべてアマゾンから得た情報である。そこには、「本書は、自身の実体験と膨大な読書量に裏打ちされた実践的英語論であり、社内公用語化に象徴される日本の英語の現状に警鐘を鳴らす。」と書かれている。29人の読者レヴューが投稿され、評価は「★五つ評価」で★三つを得ている。



その内、★五つを与えているレヴュアーの一人がこのように言っている。「内容については、題名の通りである。そしてレヴューの数も多いので、むしろ本を読まなくても、大体の内容は把握できてしまう。それでも、自分は本書を読んでよかったと思っている。数時間にわたり、自分にとって本当に英語は必要なのか、じっくり考える機会になった。」と。



わたしも、内容紹介とレヴューとを見れば、読まなくてもイイかと・・・思った。それから、もう自分にとっての「英語とは」という問題はクリアしているから。以下、目次だけ列挙してみる。



英会話に時間とお金を投資するなんてムダ

頭の悪い人ほど英語を勉強する

楽天とユニクロに惑わされるな

ビジネス英会話なんて簡単

英語ができても仕事ができるわけではない

インターナショナルスクールを出て成功した人はいない

早期英語学習は無意味である



なるほど、挑発的な文言が並んでいる。こうしてみると、一見、ファーストリテイリングの柳井社長と正反対のことを言っているように見えるが、わたしはつまりはお二人とも同じことを指摘しているのではないかと思う。先に紹介したレヴュアーの一人も、「『日本人の9割に英語はいらない』は、裏を返せば「1割には必要」である・・・」と書いているように、わたしとしては何割の人が英語を必要なのかは知らないが、柳井社長はその一割の人のために英語の必要性を説き、元マイクロソフト社長成毛氏はその他の9割の人に英語は必ずしも必要はないと説いているのである。



同じレヴュアーの方が書いている。「著者の主張は、使わないのに英語を勉強するくらいなら他のことをしろ、ということだ。・・・・英語を学習する時、自分の「具体的な」現状・未来予測と切り離して、その必要性を考える事はできないのだ。世の中には、英語学習より有益な行動がいくらでもあり、人生には無駄な時間は1秒もないのである。」と。わたしも英語だけを取り上げて、その必要性を必要のない人にまで説く事の理不尽さを感じる。英語を道具として捉え、ビジネス英語に限るなら、人は自分が必要だと考えた時に、英語を勉強すれば事足りると思う。



もうひとり「★2つ」をこの本に与えたレヴュアーを紹介したい。その人は、「英語が母国語の人でも何を言っているか分からないヒトは結局何を言っているのか分からないし(言語明瞭・意味不明瞭)、片言の英語しかしゃべることのできないヒトでも、理路整然とそれなりに自分の意図を伝えられるヒトは、何を言っているのか分かるものです。」と言う。「・・・ではその問題を解消するために何をすべきかというと、英語の勉強よりもまず本を読め、というわけで、この部分はまあ同意です。」と続けている。内容は同意できる部分もあるが、書き方が過激であるため、真意が伝わらない部分があるということで、この人は、「著者よりも出版社、編集者の方針の問題かもしれない」と指摘している。



このふたりのレヴュアーの評価には、「★5つ」と「★2つ」という隔たりが見られるが、この本からはほぼ同じ感想を得ているようで、結局わたしの感想は、いつものように平凡に、英語が必要な人は勉強すればいいし、必要ない人にも「教養」とかの名目で英語を押しつけて、市井の金もうけ主義の英会話教室にお金を落とす義理はないというもの。もちろん教養のために勉強したい人はして下さい。かっこいいからということなら、それでもよし、それも「必要」のうちなので。



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