2021年3月31日水曜日

ふる~~~い、本ですが、考えるきっかけにはなるでしょう。

 


 

『現代思想入門』 別冊宝島44

 

 

先日、本棚をプラプラと探索していたら、いつ書いたかわからない読書ノートを見つけた。中を見てみると、なんだか素敵な事が書いてあった。わたしにこんなこと書けるわけがないので、何かの本の書き写しと思う。

 

「人間は、哲学によって、人間であることから解放される。」

 

と、こう書いてあった。

 

多分、別冊宝島44『現代思想・入門――サルトルからデリダ、ドゥルーズまで、知の最前線の完全見取り図!』のノートと思う。中を見ると1985年発行とあった。約35年前だ。今はもう「最前線」ではない。この後にポストコロニアリズムやカルチャラル・スタディが続いて行く。

 

この頃は訳もなく、全然理解しないまま、心に引っかかったフレーズを書きとめていたのであろう。今は、少しわかるような気がする。人間は言葉を発明して以来、物事を抽象化し続けている。この抽象化したものと現実実体の乖離を埋めるものをヒトは探し続けているのだ――ということがわたしにもわかってきたからだ。

 

デカルトは「認識と実在としての対象の一致は、神によって保証されている。」と言う。神が存在していた時代はこれでよかった。人が神を信じなくなってからは、人類は自らの手でこの問題を解決しなくてはいけない。そして、今なお哲学者と言われる人たちは、この問題に取り組んでいるのだ。

 

フーコーは、その著書『言葉と物』の中で、エピステーメの三つの時代について述べている。

 

1.ルネッサンス期とバロック期:言葉と事物が一致していた時代から、裂け目ができ始めた時代

 

2.古典主義の時代(17世紀前半~18世紀末):言葉と事物が分離し、言葉が事物の記号となった時代

 

3.19世紀以降のいわゆる近代:「人間」という中心的概念の要求

 

人間は、確かに宇宙(自然)の一部であった。しかし、近代が「合理的理性」を人間の土台に据えたため、人間は自分の中から「自然」を排除し始めた。それは永遠に到達できない目標であるだろう。銀河鉄道999の星野鉄郎のように機械の身体を求め続けて行くとでも言うのであろうか。

 

 


 

しかしながら、21世紀、今現在廻りを見渡すと、そんな世の中になってきたようだ。いろいろなチップを体内に埋め込んで、人類は己をAIとつなげている。人間は、脳だけの存在となって、「体という牢獄」から解放されると言う「野望」を捨てきれないようだ。







2021年3月27日土曜日

『ガニメデ支配』、読書半ばですが……

 


フィリップ・K・ディックの『ガニメデ支配』を読んでいます。R・ネルスンとの共作なのですが、欧米のSF界では、共著は珍しくないとの事。しかし、ディックの力の方が相当勝っているようで、他のディックの作品と変わりありません。

 

まだ途中ですが、「なるほど」と思った一言を紹介します。

 

 

「黒人は宗教さ!」

 

ディックのお話は、「黒人」とか、どういう訳か「ジャップ」とか、人種の事が良く現れます。この場面はこんな風です。

 

「<黒人>て言葉はなにを意味すると思う、裏切り女さんよ?人種か、それとも宗教か?」

 

「人種に決まっているでしょ。」

 

「黒人は宗教さ、ユダヤ人と同じにな。白人もそうだ。白人教を別のひと言で表わすとなんになると思う?」

 

「知らないわよ」ジョーンは警戒しながら返した。

 

「<偽善>だ」

 

ガニメデ星人から地球を守る抵抗勢力の指導者、黒人のパーシィXとガニメデのスパイとして彼に接触する日系アメリカ人のジョーン氷芦の会話です。

 

 

これを読んで、何かに「人類に人種は存在しない。」と書いてあったなあと。それは、『ヒトの変異』だったと思います。人は住む場所によって「色や体形」がその土地の環境に影響されているだけで、人の違いは「文化」であると。そんなような意味だった――です。

 

 

ナ・ル・ホ・ドです。



「人種問題」は彼の作品の『キモ』なのでしょう。




2021年3月26日金曜日

春ですネ




 今朝6時頃から、ウグイスが鳴き始めました。今年、初めて聞きました。


初めは、キ・キョとかなんとか鳴いていましたが、1時間ほどで、「ホーホケキョ」と見事に鳴きました。


ちょっと、感動するワァ~。



2021年3月19日金曜日

何を読んでもSFにワープしてしまうのでしたあ~~~


『日本人の9割が知らない遺伝の真実』

  

思うに、人は「自分が完璧である」(遺伝的に)と思って生きているのでは。しかし、昨今の科学技術の発展は、いろいろな真実を明るみに出します。つまり、遺伝的に完璧な人などいないという事。『ヒトの変異』という本について以前UPしたことがありますが、その本によると、「ヒトの遺伝子は、毎回(人が誕生する時)20%程度は変異している」ということです。

 

人は、遺伝子的に不都合なところがあっても「生きていける」と言える。その程度のアロウワンスは「誤差の範囲内」ということなのでしょうか。そのことが、現実に科学の力で明るみに出されると、「差別の構造」が生じてくるということなのでしょうか。

 

著者の意図も「格差社会と遺伝の関係」では、「行動遺伝学が誤用される事を恐れているから」の部分もありそうです。出来ない事を遺伝子のせいにされ、だから、金持ちになれないのも当然だ…、というような論理のすり替えです。

 

人により出来る事と出来ないこと、「向き不向き」は様々で、そこに努力や環境だけでなく遺伝子的要素が働いている…、と考えるのが「行動遺伝学」とのこと。

 

しかし、「だから遺伝子的に不向きな事はやめて、向いている方向に進みましょう。」と言うことではなく、不足する能力を別の方法で補うことで自らの希望する事を出来るようにする事が重要なのです。

 

「遺伝について考える時に大事なのは、私たちの人生を、主体性や自由を損なわずに最適化できるかどうかである。」

 

批評家、早稲田大学准教授の市川真人氏は、

 

「遺伝の認識を差別ではなく可能性の発見と確認として、評価軸の多様化や個人の努力を越えた社会保障の必要性を説く本書は、今日の社会に必要な一冊であるだろう。」

 

と、言っています。



 

なんか~、映画『ガタカ』を思い出すわあ~。

 

こんな言葉で始まるそうです。(ウィキペディアより)

 

「我々は母なる自然に手を加えようとするが、母もそれを望んでいると私は思う。

 

 

遺伝子操作により、優れた知能と体力と外見を持った「適正者」が数多く存在する近未来。知力体力に非常に優れる「適正者」たちは当然、教育課程においても、社会においても優位だった。一方、自然妊娠で生まれた「不適正者」たちは「適正者」に劣る存在だった。両者の間には社会レベルでも個人レベルでも大きな隔たりがあった。

主人公ヴィンセント(イーサン・ホーク)は、両親の軽はずみな性交渉により「不適正者」として産まれた。弟アントン(ローレン・ディーン)は「適正者」だった。子供のころから「適正者」の能力を目の当たりにし、弟を含め「適正者」たちには決して勝つことができなかったのだ。

 

そんなヴィンセントが小さな胸に抱いた夢は宇宙飛行士になることだった。しかし、宇宙飛行士は「適正者」のみに許された仕事で、「不適正者」には夢のまた夢、なれる可能性など少しもなかった。

 

主人公は、なんとか「適正者」のIDを手に入れ、宇宙局ガタカの局員になります。そして、宇宙船に乗りこめると思った瞬間に事件が起こり、彼が「不適正者」であるということが明るみに出そうに。

 

しかし、宇宙船に乗りこむ最終チェックのゲートで、彼を「不適正者である」と知っていた医者や局員(ユマ・サーマン)が、黙って彼にゲートを通らせるのでした~~~。

 

 

未来は、SF小説の中にあると思う…、この頃です。




2021年3月13日土曜日

何故アメリカ?




わたしのブログのvisitorは、何故かアメリカからが一番多い。何故だかは未だにわからない。わたしのハンドルネームが、誰かとかぶっているという変なコメントが三回ほど来たことがあるが……?    


無視。


「人気投稿」という物を表示しているが、それが英語の本の読書感想ばかりが上位に来ていた。それは、アメリカのせいかなと思っていたが、しかし、最近では、日本語の本の感想とか日々の感想が上位になってきた。何だかとても嬉しい。




2021年3月5日金曜日

時代が進んで行くにつれリスクも大きくなっていくようなあ。。。

 



『パーキー・パットの日々』

 

ずいぶん前の話ですが、(たぶん56年前)新聞記事で見ました。「殺人ロボット」と呼ばれる自律ロボット兵器の禁止を話し合う初の国連専門家会議が11月に延期されたことで、人工知能やロボットを開発する企業の創業者や科学者がこれらの兵器の早期禁止を国連に迫る公開書簡を発表したというもの。

 

書簡では、「このようなロボットがいったん開発されれば、人間の理解を超えて戦い、紛争はこれまで以上の規模になる。パンドラの箱が開かれてら、閉じるのは困難。」と警鐘を鳴らしています。

 

最近、このような話は話題に上りますが、まだまだ深刻に取り扱われていないような感じがします。

 

また、ロボット企業の創業者である広瀬茂男東京工業大名誉教授は、「自動車の衝突安全技術が次々と搭載されているが、人を検知して止まれるなら、人を狙うこともできる。ソフトをちょっと改変すればAIがテロを起こす。」と、指摘しています。

 


 

こんな時代が来たんだなあ…、と思います。フィリップ・K・ディックが書いた短編小説を思い出しました。『SECOND VERIETY』です。

 

ロシアとアメリカが地球外の惑星で戦闘を繰り返しているのですが、アメリカ軍の方がこのような殺人ロボをこの戦いに導入しました。生き物をすべて殺せという命令を出して。アメリカ軍の兵士は、それに検知されないような器機を身に着けています。戦闘が長引いて、もうその惑星に数人の兵士しか存在しないとなったころ、一人のロシア兵士がアメリカ兵士基地の方に近づいてきます。その様子がいつもとは異なります。

 

アメリカ兵が外に出てみたところ、殺人兵器の様子がいつもと違っていました。アメリカ兵も見たことがない殺人ロボの登場です。自律ロボは自ら次世代のロボを作り始めたのです。2世代、3世代の殺人ロボの出現となります。そして、人と見分けが出来ないほどの精巧な第4世代ロボが現れたところで…、人類の運命や如何に……。

 

ディックは、1950年代から小説を発表しています。彼がこの短編をいつ書いたのかは、ちょっとわかりませんが、1970年代(?)くらい…。

 

興味のある方は、一読をお薦めします。早川書房のディック傑作集①『パーキーパットの日々』の中に収められています。映画化もされていますよ。





2021年3月4日木曜日

Once the Shore を読んで。。。

 

 


 

久しぶりに英語の本を読みました。『Among the Wreckage』は、Once the Shore という題名の短篇小説の2番目に納められています。25ページ程の長さです。英語の勉強をするために買いました。と言っても何でもいいからと選んだわけではありません。

 

わたしの方法は、新聞の書評欄で興味の惹く英語原作の本を選んで、アマゾンでオリジナル英語版を手に入れられるか調べるもの。ペーパーバックで適度な値段ならば購入します。たいてい日本語版より安いです。版権とか翻訳料とか…、でしょうか。書評は、2014年9月となっていますからずいぶん前に買ったんですねェ。その間に2回ほどトライしたと思いますが…、なんとなく読めなくて…。

 

評者はいとうせいこう氏です。『かつては岸』は韓国系アメリカ人のポール・ヤーン氏の著。短篇の8編からなります。全てが架空の島を舞台に繰り広げられています。済州島がモデルらしいとも。

 

つまり舞台はアメリカではなく韓国と言うことですね。年代は現代ではなくやはり(「やはり」とは、何かのイベントなければお話はつくれないと思うから。)戦前・戦中・戦後直の時。とは言え戦争のドロドロしたお話ではなく、淡々と描かれていながら幻想的な雰囲気を醸し出しています。『Among the Wreckage』もそんな感じでした。時代が時代だけに、日本とアメリカの存在がこの地にも影を落としています。

 



 

Among the Wreckage』の登場人物は主にBeySoniの老夫婦。書き始めはこんな風…、

 

EARLY ONE MORNING IN THE SPRING of 1947, a dark blue trawler, once used for fishing, moved slowly across the flat of the Pacific.  It had been abandoned by the Japanese on the banks of a river in Solla Island, and the old farmer named Bey had claimed it as his own. 

 

とても貧しい老夫婦で、これまでも辛酸を嘗めてきた人生。日本軍やアメリカにも虐げられ続けた人生と想像されます。

 

Two days had passed since they heard thunder and the trees shook as a cluster of long-winged planes stormed over their village.  When they rushed to the coast they saw what resembled a vaporous tsunami rise up in the east, whitening the midday sky.  And then the waves sped away, followed by a long echoing shudder.  They recalled the bombs of two years before and remained silent.  The noise faded.  The waves calmed, the air stilled. Their world returned to as it was before.(英単語はそんなに難しくないと思いますが、いかがですか。)

 

老夫婦は何が起こったかわかりませんでした。次の朝、行商人が村を訪れて事情がわかります。

 

The Americans, they were told, had been testing.  This had become common.  They targeted uninhabited islands.  It had been this way since the end of the Japanese occupation.

 

アメリカ軍は、無人島で爆撃実験をしていたようです。かつての日本軍のように。ただ、アメリカ兵は、そこを無人島と思っているだろうが、実際は漁場だった。そして、老夫婦の帰郷するはずだった40歳になる息子が、帰って来なかった。

 

They waited a full day for his return.  And when he didn’t come they set out to find him.

 

そして、老夫婦の船旅が始まるのです。Beyが手に入れたトロール船で。その船旅の中、彼らは自分の人生や息子との思い出を回想します。BeySoniは幼なじみでした。Beyが13歳の時、日本軍がやって来て天皇陛下の為のOFFERINGを求めます。Beyは、家族の為の食料を残しておいてほしいと頼みますが、銃の台尻で殴られます。その時、Soniは、彼の頭を庇って覆いかぶさります。Soniもまた殴られ前歯を折ることになりました。

 

その後、彼らは恋愛関係になりますが、その描写は興味深いです。日本兵に台尻で殴られたなどと陰惨なイメージを受けられるかもしれませんが、それはそんなにリアリスティックではありません。この辺りが、評者(いとうせいこう氏)が言う「淡々と物語が進む」と言うことでは。

 

She lost her front teeth. ---------------

 

When he first kissed her he slipped his tongue into that space where her teeth had been.  She pressed her other teeth together and surrounded his tongue.  In this way he filled a space.

 

彼らは、Beyが16歳の時に結婚します。結婚のセレモニーの次の日に、彼らは森に入ります。結婚のお祝いの品が森のあちこちに隠されているのです。それをBeySoniは探し当て、探すことが出来なかったお祝いの品の数だけこどもが授かることになっているのです。彼らが捜すことのできなかったプレゼントはひとつだけ。そして、彼らに息子のKaroが授けられました。

 

Soni gave birth to their son a year later, on the floor of their house.  Bey, along with his father, remained outside, facing the forest.  They heard her and the frightened pigs brushing up against the pen.  And then they heard the child.  The infant was given to Bey to hold.  He brought him close to his face.  From his skin rose the copper smell of Soni’s insides.  Bey licked his thumb and wiped away the stains across the infant’s head.  He had his mother’s nose, his father’s thick eyebrows.

 

ブタは、彼らの家の下で飼われています。1階が豚小屋で2回が住居になっています。台所の床の穴から残飯を下の豚小屋に落とし、豚の餌としているのです。

 

こうやって授けられた、大事な一人息子だったのです。息子のKaroは、成長するに伴い海を愛するようになります。彼は、長じて漁師となりました。海に出ると何カ月も戻って来ませんでした。

 

He left at the age of fifteen on a ship with mud-colored sails.  Bey and Soni stood on the riverbank to watch him depart.  Their son waved until the ship disappeared around a bend.  They stayed there, standing, long after the ship’s wake faded and the lanterns began to glow through the trees.

 




老夫婦のBeySoniは、ソラ島(韓国、済州島をモデルにしているとも)に住んでいます。貧しい農夫ですが、ある時日本軍が置いて行ったトロール船を手に入れます。そして、事件が起こります。戦後に駐屯したアメリカ軍が、無人島で爆撃訓練を行ったのです。アメリカ兵は知りませんでしたが、その付近は漁場となっていました。そして、長い航海から帰って来るはずだった老夫婦の漁師の一人息子Karoが、戻って来なかったのです。彼らは、トロール船に乗って事実を調べるために船出します。そして、この航海の中で、若き日の自分たちの事、息子の事など人生を回想します。

 

 

一人息子のKaroが漁師となって家にあまり帰って来なくなってから、老夫婦の生活に変化が起こります。

 

From that moment on, they would see him when time allowed it.  And all the days that had gone so quickly, slowed and lengthened.  Both Bey and Soni’s parents passed away.  It was the two of them now; and in each other’s company grew the overwhelming reminder of absence.

 

Beyはひとり野外で時間を過ごすことが多くなりました。Soniを家に残して。その関係は、ふたりトロール船で、状況を探りに出てからも続いています。彼らは無言で食事を取ります。

 

After some time, she said, “Do you think there are many?”

 

行商人は、「20隻くらいの船がその場にいた」と言っていたと、Beyは、思いました。わたしたちの村の人くらい居たと、Beyは、Soniに言ってやりたいと思いますが、「わからない」と答えます。

 

“He could have been inland,” she said, more to herself as she continued to look out at the sea.

 

Beyは、そうかもしれないと思います。

 

It was possible.  He could have been inland.  Bey thought it as well.  Who would not?  Karo was prone to wandering.  He liked to dock and see the town where he and his fellow crewmembers delivered fish.  He brought back stories and souvenirs for his parents: some fruit, simply because it had grown somewhere; woven bracelets for his mother, one she wore now, made from a strip of tanned leather; for Bey, a bamboo came that he hung up on a hook, refusing to use it.

 

Karoが漁師になって以来、彼と母親との関係は変わらないようでしたが、父親との関係は、薄くなっていったようです。Beyは、息子が少年だった頃に森で一緒に遊んだことを懐かしく思い出しますが、成長した息子はもう父と森で遊ぶ事には興味がなくなったようでした。Beyは、孤独を感じます。

 

そんなことを思い出している航海中、何かが現われます。大きな物体です。始めは鯨かと思いますが、それはアメリカ軍の船でした。パトロール船です。密輸業者を摘発する為の。Beyは、Soniを船底の小部屋に隠し、アメリカ兵とひとり対峙します。

 

The engine he heard was much louder than his trawler, it sounded as if a crowd were clapping, sharp and rapid.  He stepped out onto the deck.----, The patrol boat was American.

 

彼らはBeyがどこに住んでいるのか問いただします。キャプテンが質問し、兵士は銃口をBeyの方に向けています。

 

The translator and two soldiers were going to board.  The boat floated closer and the three of them hiked their legs up over the rails and stepped onto the trawler’s deck.  They wore black boots, laced up.  He had never seen boots before.  And the men: they were tall and their skin was peeling around the bridge of their noses; their eyes appeared bored, although their hands were alert, gripping their weapons.

 

アメリカ兵たちが去った後、Soniが船底から出てきました。そして、いよいよ問題の島に近づいてきました。

 

Before long the birds faded up beyond the clouds and the island appeared along the horizon, flat and dark.  It seemed at first to remain in a fixed distance from them.  Soon, though, as if they had somehow unlocked what held it, the land approached at a steady pace and they were able to distinguish the forest canopy.  Rising above it, like great balloons, was smoke.  Soon they smelled it, too, the scent of burning as the winds pushed against them.  By Bey’s guess, they were perhaps three kilometers away.

 

まもなく瓦礫が彼のトロール船を取り囲みます。彼は、まるで氷河の中を進むように瓦礫を押し分けて船を進めます。すると、Soniが海に飛び込みます。

 

Later, he would attempt to recall what it was exactly that caused his wife to jump overboard.  He remembered she stepped onto the rails and he rushed to her.  He held her arm, said, “Soni,” and she looked at him with an expression that was unrecognizable, one he had never seen.  It was hatred, he thought, and she swung at him and he felt her knuckles against the side of his face and he let go and she was no longer there.

 

彼が島に近づくとともに、瓦礫が増えて行きます。それは、樹であったり、布であったり、シャツ、脚、折れ曲がった足、腕…。その中にSoniがいました。しかし、視界が悪く彼はSoniを見失います。風が煙を吹き散らした時、島が見えました。

 

The wind grew stronger.  And the smoke, for a moment, dissipated.  It revealed the island, its blackened trees.  On the beach lay the remains of mats and keels like the spines of ancient creatures.

 

そしてSoniも見えました。彼女はドアくらいの大きさの板に坐っていました。そして、最後の節です。

 

Slowly, Bey descended the ladder.  His toes touched the damp wood and he felt Soni’s hand press against is back to guide him.  When he was settled, she pushed away.  The wood tilted and then gained control of their weight and the waves and they were soon adrift among the wreckage.  They kneeled and paddled with their hands, and their fingers turned cold and numb.  They worked in silence.  They kept low and remained under the haze of smoke.  When a body passed them they reached for the man.  Some they held by the feet, others by the arms, neck, or hair.  Whatever was closest.  They picked them as if for harvest.  The tide took them out to sea.  Their breathing grew heavy.  And, with all their effort, they pulled the floating men closer and lifted their still faces out of the water.

 

 

いかがですか。彼らの息子がどうなったのかの結論は出ていません。しかし、老夫婦は、息子が本当に事件に巻き込まれたのかどうかもわからずに、彼の行方を探し求めるのです。彼らの悲惨であっただろう人生は、このように淡々とまるで夢の中の世界のように描写されるのでした。

 

どこかで(忘れましたが)「日本にもこのようなテーマの本があっても良い筈だ」というコメントを見ました。日本の戦後から今までのアメリカ軍基地の問題です。そこで起った、あるいは起り得る悲劇を扱った小説のことです。我々はこのような事実が無いがの如く日々生活しています。コミックとかエンターテイメント小説では見受けられますが、正面からこの事実に向き合った小説はまだ見ていません。まあ、わたしの勉強不足と言うことでしょうか。