2013年8月13日火曜日

前文の続き (2)





メイン・イベントの『ミニ化石』については、最後に回して、真正粘菌についてです。2008年の認知科学賞、「真正粘菌がパズルを解く」は2010年の「真正粘菌による交通ネットワークの設計」で賞をもらった人と同一人物で、2008年の成果を生かして2010年の受賞に繋がった物。



真正粘菌は原生生物で神経系のような情報処理系を持たず、どのように情報を処理しているかは未だ謎のようです。そして今回の受賞者はこの情報処理能力を明らかにしようと試みました。そして、この真正粘菌に簡単な迷路を解かせる実験をしたところ、迷路の最短ルートを探しだしたのです。



真正粘菌が迷路全体に広がった後に、入口と出口に餌を置きます。そうすると関係ない迷路の道にある部分を衰退させ、入口と出口を繋ぐ道筋だけを残します。最終的に最短の道だけの一本の太い管だけ残します。そして効率よく餌を摂取できると言う訳です。それがなぜ起こるかと言いますと、粘菌の細胞内に自発的に起こるリズム現象があります。一方、細胞内には収縮運動の繰り返しを引き起こすリズム体が至る所に存在し、お互いに影響を与えながら細胞全体に収縮運動の波などの時間的・空間的パターンを作ります。この二つの現象が相まって迷路解法の基となります。つまり、細胞を構成する物質の物理的性質に基づいているということが証明されました。



��010年の「真正粘菌による交通ネットワークの設計」も同じように、関東地方の計上を模した容器を作り、主要駅に対応する場所に餌を置きます。今回はもっと複雑な要素も加味された様ですが(光とか)、このようにして、鉄道網が得られました。このモデルは実際の鉄道網よりも経済性の高いネットワークで、災害リスクの観点からも最適な都市ネットワークを設計する手法の確立に繋がるそうです。



さて、いよいよ「ミニ化石」です。一言で言って、これは与太話のようです。しかし、ご当人はとても真剣だったと。岡村長之助は明治34年生まれ、昭和3年に愛知医科大学(名古屋大学の前身)を卒業。彼は医師である傍ら考古学の研究に勤しみ古生物学会での学会発表や論文執筆をしていました。『人類および全脊椎動物誕生の地―日本』を自費出版。その年である1983年には82歳。イグ・ノーベル賞を獲得した1996年には95歳になっていたはずですが死亡年は不詳です。たぶん、90年代に亡くなったようです。



��970年代から80年代初頭にかけて岡村氏はミニ生物に関する研究発表を古生物学会で行っていました。岩手県の北上山地に分布する古生代の石灰岩をスライスして顕微鏡で観察すると、体長数ミリの人間、犬猫やへび、あるいは竜などが見えたと言います。当時の古生物学会は演題のみでノミネートできたようで、事前に発表内容がチェックされず、岡村氏のこの発表がなされた以降、講演者は講演要旨を提出しなければいけなくなったといいます。



とは言え、彼はとても研究に対して真摯だったようで、この話を聞いた人たちも暖かい目を向けていたようです。火星で運河を見つけたと言う学者などのようにとんでもないような事を言い出す科学者に対するように。彼の論文は世界各地の図書館に残っているようで、実際、Academy of Natural Sciences, Philadelphia のEarle E. Spamer の論文には彼の写真とともに、The following institutions in the United States hold copies of the original “Reports of the Okamura Fossil Laboratory.” We urge you to visit them: の言葉が。



興味がおありの方は、以下へ。





http://improbable.com/airchives/paperair/volume6/v6i6/okamura-6-6.html







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