『おんなの女房』
時代は江戸。歌舞伎の女形役者に嫁いだ武家の娘のお話です。いや~、おもしろかった。何か既知感があるなあと思ったら『化け者心中』の作者と同じでした。
『化け者心中』の方は、歌舞伎役者が稽古中に首を落とされて殺されるというミステリーが一応ありました。一応というのは、ミステリーとして探索されるが実際は違っていたので。わけがわからないと思われるかもしれませんが、読んでのお楽しみです。
『おんなの女房』は、一応、「女形の歌舞伎役者の女房に何故武家の娘が嫁いだのか?」というミステリーがありますが、第一章で即種明かしされます。ですから純粋に「男と女」の恋愛劇です。
誰かが殺される小説しか読まない私としては、少々不満ですが興味深かったです。江戸後期のカオスの時代が好きなのと歌舞伎のカオスなところが好きなのとで、楽しめました。
簡単に言うと「おんなの自立」のお話ですが、なぜ江戸時代かなぜ歌舞伎の世界かと考えました。たぶん、背景がしっかり固まっているからでしょう。「武家の娘」ということ、「女形」ということ。その範疇で女の自立を表現しやすい、わかりやすい、ということか。
歌舞伎の人気演目の物語と燕弥(結婚相手の女形役者)が演じるお姫様の役柄に合わせて話が進んで行きます。その中で、志乃(武家の娘)の考え方が変化していき、武家社会の「女の掟」からも解放されていきます。
そして、互いに自分の都合のみで結婚に至った二人が離れがたい二人となり……悲劇が~~~。
なにがおもしろかったかというと、歌舞伎の「世界」そして「演目」の微細な表現と落語のような落とし噺のところでしたあ~。
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