心は実験できるか―20世紀心理学実験物語
ローレン スレイター (著), Lauren Slater (原著), 岩坂 彰 (翻訳)
本書は10個の心理学の実験の紹介という態を取ってはいる。たいてい前半でその科学的あるいは学術的な意義や内容が述べられるが、後半部分では個人的な感情が文章中に入ってくる。まるで、述べられている実験は著者の内面を表現する「きっかけ」あるいは「材料」の様。そしてそのプライベートな空間は、幻想的な不思議な空間なのだ。時には事実ではない架空の話までも。
前半の理性的な考察から後半の情緒的な流れは読んでいるものを不安定な場所に誘う。足元をすくわれた居心地の悪さ。そして、お終いには、彼女の「鬱」に感化され、悪夢に悩まされることとなるのだ。そして本を閉じようとする時、最後のページで微かにわたしに微笑みかける彼女の病んだような瞳の奥底を覗き込めば、嘔吐感すら覚える。
そんな「幻想集」をお望みの方にはぴったりの本でしょう。
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