中国人の胃袋

わたしが初めて上海の空港に着いたとき、Ｊが空港まで迎えにくれたのだが、その時彼女の息子のトニーと義理の弟という人も一緒だった。この義理の弟の話はまたの機会にして、今回は中国人の胃袋の話。



その義理の弟が運転してホテルまで連れて行ってくれた。それで今日は「さようなら」かと思ったらＪはレストランを予約してあるから荷物を降ろしてちょっと休憩したらレストランに連れて行くという。彼の奥さんがそこで待っていると言うのだ。つまり、予約と言っても一人は先に行って席を取っておかなければいけないようだ。



そしてレストランに行った。Ｊが総てのオーダーを取り仕切った。たいていの場合店員は一番年上と思われる人にメニューを渡す。そして勘定書も。この場合わたしが一番年上だったが、店員はわたしが招待されていると察したらしくＪにメニューを渡した。全部で5人だった。



��は料理の内容について次々にウエイトレスに質問する。ウエイトレスは淀みなくその質問に答える。こういうことはその後も度々起こった。だからある時ちょっと好奇心に駆られて時間を計ってみたらこの質疑応答は15分ぐらいは続く。この質問が続いている間に最初に注文した品が運ばれてくる。延々と続きそうなこのやり取りも漸く終わったかと思えた時、

「あっ、忘れたね。ビール、ビール。」



わたしは彼女がビールのことを思い出してくれてひと安心。そして「乾杯！」で食事が始まった。でも、お皿に手を付ける様子がない。そうか、わたしが手を付けなければみんなは食べられないんだ。それで来るお皿来るお皿わたしが一番に手を付けることにした。そしてウエイトレスはというとわたしのグラスが空になりそうになるとすぐにビールを注ぐ。Ｊは「もっと食べろ、食べろ。」とわたしの小皿に料理をのせてくれる。終わりの無い料理、終わりの無いビール。



この時は、一番最初の日だったので一生懸命食べたが、とうとうある日わたしはＪに告白した。



「上海のガイドブック持ってきたんだけどその中に書いてあるのよ。中国の人はお料理をたくさん注文するけど食べられなかったら断ってもいいんだって。日本人は出されたものを全部食べなければお行儀が悪いことになっているけど、中国では食べきれないほど注文するのが礼儀だって。わたしそんなに食べられないけど気にしないでね。」



��は、「ほんとか。ガイドブックにそんなこと書いてあるか。わかった。」と言ったが、見たところほんとのところは分かっていないみたいだった。



その後もＪはわたしにもっと食べろ食べろと言ってわたしのお皿にお料理を取ってくれる。だから、わたしついにキレちゃって、「なんでそんなにお皿に入れるのか」って。そしたら彼女、「まだ、遠慮してるから。」って。

わたし、「わたしは遠慮なんかしていません。遠慮してると言えば、お皿に入れてくれるから、わたしは遠慮して無理して全部食べてます。」



ついに彼女も理解したらしく、「わかりました。」と言って、その後はほっておいてくれます。でもホントにそうなんだ。ガイドブックに書いてあるだけと思っていたけど中国の人はほんとに食べきれないほど注文する。全部食べきっちゃいそうになるとただ残すためだけに新たに注文する。お客が去った後には山盛りの残飯が。



う～～～ん、もったいない。