2015年9月11日金曜日

人間社会は、進歩するほどリスクが肥大するのだァ…


「折々のことば」というコラムが朝日新聞に毎朝掲載されます。9月8日の言葉は「文明が進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増す」でした。さてその意味は、「洞窟の中で暮らしていた時代は、じっと潜んでいれば暴風雨を防げた。粗末な小屋に住んでいたなら、容易に立て直せる。それが、重力に逆らい、自然に抗うような施設を作るようになった時、建物の倒壊や堤防の決壊の被害は甚大になる。送電線が大規模に施設されると、被害は一地域の被害から広域の被害に増大する。」ということです。

 

この言葉は寺田寅彦が言いました。この場合は天災に関することですけど、これを読んで科学の進歩もそうだなあと感じたという訳です。この7月「変なホテル」というホテルがハウステンボスにお目見えしました。フロントでチェックインを接客するのが、恐竜や女性の姿をしたロボット三台です。そのロボットがチェックインのパネル操作のお手伝いをし、その後ポーター係のロボットが客室に案内するのです。荷物を預かるクロ―クではアーム型の産業用ロボットが手掛けます。これで人件費を抑え、ローコストのホテルを実現するそうです。

 

これらのロボットはまだまだ玩具程度の段階。しかし、実際にロボットと人間が共存する世界になるとどういうことが起こるのでしょう。「ずばり人工知能が人類を滅ぼす」という問題です。オックスフォード大学教授ニック・ボストロムさんの指摘です。人工知能が人間の能力を超える可能性を考え、今のうちに対策を講じておく必要があると唱えています。

 

真に知的な機械が安全で人類に利益をもたらすか否かは、今それに係わっている人々が人工知能をコントロールするために人工知能に何を教えるかに掛かっているということ。例えば、正義、公正、美、幸福、喜び。どんな価値観を人工知能に与えるのか、どんな目的を持たせるのか。彼は「たとえば30年後、人間並みのものができたけれどもそれをコントロールする方法がわからない、今となっては手遅れだ、なぜ早く研究を始めなかったのか、という状況にだけはなりたくないのです」と言います。

 

人はコントロールできないものを創ってしまうと言うことですね。それが人類の生活を豊かにするものであったとしても、いったん事が起った時の被害は、人類が恩恵を受けただけ倍返しで迫ってくるということです。

 




 

これはまだチョット先の話のようですが、自動走行車はもうすぐそこにあります。もちろん人型ロボットではありませんが、意味は同じです。コンピュータ制御でひとりで走ってくれるんですから。または、ソフトバンクの「ペッパー」、あるいはロボット義手など。これらが公の場面に登場してくる時、人類はまた複雑な問題を抱えることになります。

 

例えば、自ら判断して走行する自動走行車が人をはねたら責任を負うのは誰なのか。念じた通り動くロボット義手はモノか人か。その義手を壊した場合、器物損壊の罪に問われるのかあるいは傷害罪か。などなど。現に「ロボット法学会」なるものができて、このような問題に取り組み法整備を進めています。

 

最新のニュースでは、ハッカーがインターネットにつながる自動車をハックする実験が行われたと報じられています。アメリカの出来事です。ハッカーは手元のノートパソコンから車の制御システムに入り、遠隔操作しました。米国の高速道路を走る車がハッキングされ、運転手が何もしないのに突然ラジオが大音量で流れたりワイパーが作動したりしたそうです。エアコンの電源も入り、エンジンが切られたりもしました。この車のメーカーはこの実験公開の三日後、140万台をリコールすると発表しました。同様な車を製造しているメーカーにも波紋が広がっています。

 

 

人類は夢のような豊かな未来を手に入れるかもしれませんが、そこには同時に膨大なリスクも含まれているのです。








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