2017年1月13日金曜日

フィリップ・K・ディックの世界


世の中、本当に彼の描くSFの世界に近づいて行くなあと、つくづく思いました。最近のニュースからです。昨日は、トランプ次期大統領の記者会見の報道、また、アルファ碁がネット対戦で60勝無敗とのニュース。今朝の新聞では、ES細胞あるいはiPS細胞から腸を作り出すことに成功したと。



 

ES細胞あるいはiPS細胞からの腸の作成は、大きさ1センチほどの腸。もちろん円柱状です。収縮して食べ物を送り出す蠕動運動のような動きもちゃんとあり、たんぱく質を吸収する動きも見られたとのことです。将来的には移植も考えられるとか。

 

また、トランプ次期大統領の記者会見のTVニュース見ていると、まるでアメリカンコミックの映画のよう。フィリップ・K・ディックの短編小説にAIがアメリカ大統領であるというのがありました。そのAIのメンテナンスあるいは不具合が生じた時だけ人間の大統領になるのですが、それは国民全員が順番になるというもの。もちろん、不具合が起こることなどあり得ないので、そんなことになっていたのでした。

 

ところが、ある陰謀でAI大統領のメンテナンスに時間がかかった。そこで大統領の順番になったのが自動車修理工の冴えない中年男。しかし、大統領になった彼は、この地位を失いたくないと言うので、「大統領職は永続的にする」という法律を通してしまった。そこからドタバタの不思議な哲学的なフリップ・K・ディックの世界が始まるのでしたあ。

 

アルファ碁しかり。記事によりますと、先月29日から囲碁サイト「東洋囲碁」にマスターというハンドルネームの棋士が現われ30連勝して去りました。そして元日から「野狐囲碁」というサイトに現われ同じく30連勝して去りました。そこにハンドルネームで参戦している世界トップ棋士をすべて打ち負かした…、ということですね。

 

アルファ碁が打つ手は、プロの棋士は絶対打たない、あるいは絶対思いつかない「悪手」だそうです。どうして、そのような手を打つのか、プロ棋士も研究してみなければわからないとのこと。

 

「意図のわからない手がある。検証すれば理解できるだろうが、今は混乱している。」とのトップ棋士の言。

 

中国の古力九段も「私たちが永遠に変わらないと考えていた囲碁の真理がマスターの出現で破壊された。」とその衝撃を語っています。棋士たちは、これからマスターが残した60の棋譜を研究し、「新たな囲碁の真理の発見」を模索していくのです。「アルファ碁」なんて名前自体フィリップ・K・ディックでしょう。『アルファ系衛星の氏族たち』という本もありますから。

 

こうやって、人間社会は普通の人には理解できない世界になって行くのです。否、どんな頭のいい人にも理解できない「手」をAIは駆使していきますから、知らない間にAIが決めた「理解不能な世界」に人々は暮すことになるのでしょう。もちろんAIには悪意もないし、欲望もないのだから、それは人にとって「真に平和な生活」と言えるのかも。

 

しかし、「実に、人の悪意は尽きまじ」なので、一人の悪意から「フィリップ・K・ディックの世界」が拡がって行くのでしょう。もう一度、彼の短編集を読み直してみようかなあという昨今です。







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