2017年7月14日金曜日

The Pillars of the Earth written by Ken Follett



983ページの本です。翻訳ではなく、オリジナル本を読みました。イギリスの1123年から1174年までの話。内容はヴィデオゲームのロールプレイゲームのような話です。ワクワクします。いろいろな人が「複雑に絡み合い」とは常套句ですが、この本の場合は「簡潔に絡み合い」といったところ。しかし、簡潔な故に素晴らしい物語構成と成っている・・・とわたしは思います。



話の筋に興味はおありですか。登場人物をグループに分けると、



1.Tom Builder 家族。Tom 夫(父)、Agnes妻(母)物語の初めですぐ死にます。 Alfred 長男、 Martha長女

2.Prior Philip 良い人

3.Ellen(母)、Jack(息子)森の中で暮らしていた少しミステリアスな人たち。EllenはのちにTomと結婚。

4.Earl Bartholomew の家族。Aliena姉、 Richard弟。Earl であるが、謀反にあって没落。その再興を願う。父Bartholomewは牢獄で死ぬ。

5.Hamleigh 一家。悪い貴族。Bartholomew を落とし入れる。息子WilliamAlienaに付きまとう。

6.Waleran Bigod 悪いBishopPhilipに悪感情を持ち常に陥れようとする。



と言ったところでしょうか。



こんな羅列では話の内容まではわからないと思いますが、それはともかくとして、ひとつ興味を持ったことは、



Christians can’t charge interest. です。イスラム教は人にお金を貸して利子を取ることが禁じられているので銀行はないと聞きましたが、中世のキリスト教徒も利子を取ることを禁じられていたのですね。まだまだ、キリスト教の思想が残っていたのでしょう。この本の中では、ですからJewが人々にお金を貸しています。だから、Jewが代々金持ちになったのかあ?



もうひとつは、Philipです。フィリップは敬虔なクリスチャンでPriorにまでなります。彼は何の野心もなく、ただ神に仕えます。反対にWaleran BigodBishopという地位にありながら自分の私利私欲のためにいろいろな策略をめぐらし、もっと高い位置に登りつめようとしますし、また豪華な服装、住まいなどを求めます。



対して、フィリップは「善」そのもの。すべては神のため。物事がうまくいかなくともそれは「神のご意思」、うまくいっても「神の思し召し」。自分の地位とか自分の利益のために何かをしようという考えは全然ないのです。が、その考えが人々を巻き込み人々を不幸にしていくのです。というのは、「神」を人々に押し付けるから。自分がそれを良いことと信じて疑わないから。彼の心は純粋だけど、それがイコール「良いこと」とは成り得ない。人々の生きる目的は「人それぞれ別」だからですよね。わたしの「生きていく」ひとつのポリシーは「人に影響を与えない」と言う事です。いかに自分が良いことと思っていても、それが他の人にとって「良いか悪いか」は謎です。フィリップの場合は彼が「純粋」であるが故にそのことを「理解し得ない」という不幸です。











最終的には、全てが収まるところに収まって、メデタシめでたしと言うところです。悪い奴は全部死んだり、遠くに追いやられたりしてキングスブリッジの町に再び平和が訪れました。メインの登場人物たちは自分たちの夢をかなえ、その子供たちは自分のやりたい道(夢)を突き進み始めました。



お話はいろいろな要素が含まれていますが―――例えば、王家の陰謀、教会の腐敗、ペスト、階級差別あるいは男女差別―――ちょっと盛り込みすぎと言う感が。その一つ一つで一冊の本が書けそうです。つまり、具だくさんで味が薄い感じ。



その中で男女差別について、



その時代の(14世紀のイギリス)男女差別について全然文句を言うつもりはありませんが、その時代の女主人公が今と同じことで悩んでいる(小説だということは重々承知の上です。)とはね。著者も何故このことをメインのストーリーとして取り上げたのかが少々疑問です。つまり、この話にはいろいろなカップルが現れて、それぞれがそれぞれの道を歩んでいく道程が描かれているのですが、一貫して登場するメインのカップルの女性の方が、「なぜ女は結婚して夫の言う事をきき、子供を育てるために自分のやりたいことを我慢しなければいけないのか」という疑問で結婚に踏み切れずにいます。



男の方Merthin は二人が愛し合っていることは確かなのになぜ結婚できないのかと恋人Carisに迫ります。Carisは医者になりたいのですがその時代は男の人しか医者になれません。薬にも携われません。彼女は町の薬剤師Mattieに薬草の知識を教授されますが、そのMattieに魔女の嫌疑がかかり(薬草を扱って人の病気を治していたが故に)出奔してしまいます。Carisはやりたいことはあるのに「女である」ことで望みが叶えられません。



MerthinCarisに何がしたいのかとききます。Carisは「わからない」と答えます。では、「やりたいことがわからない=無い」のに、何故結婚できないのかとMerthinは彼女に迫ります。



そして彼の夢はイギリスに世界で一番高い塔(カセドラルの)を建てること。Carisは自分のやりたいことがないなら、彼と結婚して彼の夢を支えなければいけないのか。Carisは彼と結婚しても屈辱的に夫の言うことだけを聞く事にはならない――とはわかっています。彼は他の男と違うと。でも、再三再四の彼のプロポーズにも「イエス」と言えません。Merthinは一生彼女の愛人として過ごす訳にはいかないと彼女に伝えます。最後通牒です。結婚できないなら他の人と結婚して子供をもうけると言います。



Carisが結婚してもいいなと思うと何か事件が勃発すると言ったような感じで、この関係が続いていきます。Merthinは奸計に乗せられて他の女の人と結婚しますが、ふたりの愛情は変わりません。



わたしが言いたいことは、



男の人は、どんなに「いい人」でも「女が結婚できない」と言う事を理解できない。男にとっては「結婚=人生」ではない。女にとっては、「結婚=人生」にするしかない。つまり、子供を産み育てなければいけないから。男は自分に夢、やることがなくともお気楽に暮らしていくことができる。女は自分に人生の目的がないなら何故結婚して子供を育てないのかと言われる。



それならば、



何故、女は結婚して子供を産んでも、社会に貢献したと認識されず「生涯の保証を確保できないのか」?人類のサバイバルに貢献したのだから他の「偉大な」仕事を成し遂げたと同様に、その権利はあると思う。これはある意味反フェミニズム思想ではあるが。



で、ひいては男女問わず「人はただこの世に生きているだけで社会に貢献している。」――と、わたしは主張したい。





また、この本を読んでいると「作家は神である」と言う言葉を実感します。作中人物が作者の思惑で操り人形の如く翻弄されていきます。読んでいるこちらとしては、読み進むうちにワクワクドキドキするもののフラストレーションが溜まります。「まだ、引っ張るんかよ~~~」とか「も~お、チャンとみんな幸せにしてあげてよ」とか。とにかく、ワクワク、ドキドキしながらこの長いお話を読み切ることができました。最後の方はもう「根性、根性」という感じでしたが(英語だからです)。



蛇足ながらいろいろな小説を英語で読むと、その小説のジャンルにより学べる単語が違いますよね。今回は、十二世紀前半のイギリスの物語なのでキリスト教関係の言葉をいろいろ知りました。「キリスト教はね~~~、」とか議論する時に役立ちます。私は主に法廷ものとかサスペンス物を英語で読んでいるので、犯罪に関する単語はたくさんファイルできていますよ。英会話教室で最近のニュースとかを話し合う時に「お役立ち」です。でもほんとうに好きな本は、もっとシュールな幻想的な本なのです。ここで学ぶ単語は実生活にはホントに役に立ちませんですネ。





この本には、World Without End という続編もあります。










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