2013年11月8日金曜日

『ヒトの変異』



この本はおよそ二年前に読みました。その時、ブログに感想も書いたと思います。それでもまた今回取り上げたのは、この頃世の中ちょっとヘンな方向に行っていませんか、って思うからです。「出生前診断」や「デザイナーズ・ベービー」の現実化です。

 

「出生前診断」は世界ですでに20カ国で実施されており、日本では2013年4月より、認定された施設での検査が始まっています。「新型出生前診断」と言われるもので、以前より検査方法が簡単になり、妊婦への影響も軽減されました。アメリカの会社の発明です。日本政府にも、この検査方法を認可せよとの圧力がかかった模様です。

 

「デザイナーズ・ベービー」に関しては、両親の唾液などに含まれるわずかな遺伝子情報を解析し、生まれてくる子供の目の色や背の高さ、がんなどの病気になるリスクを予測する手法の特許が10月19日までに米国で認められました。もちろん特許を取得した会社は、「遺伝子と健康に関する理解を高めるのが狙い。子どもを選別する生殖医療に応用するつもりはない」と言っています。しかしながら、世界のオピニオンは「受精卵診断は定着しつつあるが、子どもの遺伝的特徴を選別することは倫理的な問題が大きい」と批判的です。言ってはなんですけど、また、アメリカの話です。

 

 

「新型出生前診断」は、高年齢出産の人たちには拠り所になるかもしれません。しかし、結果を知って「どうするのか」、「どのように判断し、結論を出すのか」という決断が残ります。それ以上に、検査自体にどこまでの精度があるのかも問題です。まず、新検査法で診る対象はダウン症など三つの先天異常に限られています。そして、これらの先天異常を持った赤ちゃんが生まれる頻度は0.7%だそうです。この検査で異常が見つからなくとも、その他の先天異常を持って生まれる可能性はあります。また、お母さんが35歳の場合、検査の精度は約80%と言われています。

 

 

そこで『ヒトの変異』ですが、A.M.ルロウ氏著です。彼は、肉体的にパーフェクトで生まれる人はいないと言っています。人が生まれるたびに、ゲノムの何%かは、すでに変異しているからです。何%かの正確な数字は忘れてしまいましたが、「ヒト遺伝子の約65%には、それぞれ少なくとも一つの変異が発見される」ということです。つまり、親から受け継いだ遺伝子のうち何%かは、正常に受け継がれていないと言うことです。そのミューテイションの度合いが人により違うと言うだけの事です。人より筋肉が少し多かったり、乳首が四つあったりしても、実生活にはなんの支障もないですからね。と言うことは、この検査によって正常・異常のラインを引く事はとても恣意的なことなんだ、ということのように思われます。つまり、世の中に役立つ人を選ぶということ。

 

彼によりますと、

「在る変異がほかの変異より『優れている』か、どうかは、その変異が生殖成功度を高めるかどうかで決まる。」

 

生物の目的は繁殖ですからね。人類は、その人類の繁栄をめざして、高度な社会を作り上げてきた。自然選択により生き延びられない人も救ってきた。弱い遺伝子を持った人も、その遺伝子を残せるようになった。ですから、人類は、今ある遺伝子すべてに責任を持つべきだと思います。「その責任を果たすべくの」社会制度の充実を願ってやみません。

 

 


にほんブログ村 その他日記ブログ ひとりごとへ
にほんブログ村

0 件のコメント:

コメントを投稿