2016年12月6日火曜日

IS HE LIVING OR IS HE DEAD ?


MARK TWAINの短編小説の題名です。『THE COMPLETE SHORT STORIES OF MARK TWAIN』の中の一編です。MARK TWAINの作品は、大好きで読んでいる訳ではありません。英語の勉強の一環として読んでいます。が、他の作品を読むよりは興味を持って読むことは出来ます。

 

以前にも書いたと思いますが、MARK TWAINの生き方に興味があるのです。MARK TWAINは、一般的には子どもの読み物とか「オモシロ話」として受け取られていそうです。実際、童話や子供向けの「ほら話」などによく取り上げられていますから。『トムソーヤの冒険』や『ハックルベリー・フィンの冒険』などから、わたしの周りの人も、「ああ、あの童話を書いている作家。」という認識です。

 

しかし彼の作品は、もっと皮肉っぽくシニカルです。話が単純なのでそんな風には受け取られません。彼の晩年の作品は、そんな面が強く表れてきています。実際、人間嫌いになって、ひとり静かに死んでいったようです。

 

EUが公用語を決める時に、英語が第一公用語になりました。その時、英国のブレア首相が、英語を徐々にわかりやすく直していく…、と演説したという話が、まことしやかにネット上に蔓延しました。例えば、「カと発音するCは、Kに変える」というような。CANDYならKANDYのように。また、thの発音はなくすとか、完了形をなくすとか。

 

わたしは、うまくできているなあ…と、ほんとにそうだ、そうするべきだ、と。でも、その後、そのネットの話のネタがMARK TWAINの原稿によっていると知りました。その時から、MARK TWAINがホントはどんな人なのだろうかと興味を持ったのです。

 
 
 

 

THE COMPLETE SHORT STORIES OF MARK TWAIN』の作品を全て読んだ訳ではありませんが、お話は単純で単語も難しくはないので、英語の勉強には向いていると思います。が、単語が古いということはあります。そして、簡単な物語は、読んでいてフンフンと読み流してしまいそうですが。まるで、落語のようにオチのある話もあります。

 

もうひとつ彼の作品が単純と思われるのは、時代のせいではないでしょうか。彼の生きた時代は1835年から1910年。彼が著術をしていた時は、まだ19世紀末の洗礼を受けていなかったのです。まだまだ資本主義社会も成熟しておらず、人々の苦悩も複雑化していない頃、と思うのですが。

 

IS HE LIVING OR IS HE DEAD ?』は、貧乏な才能ある若い画家達が自分たちの作品が売れないのは、世間の人が死んだ画家の作品を珍重するからだと考え、仲間の画家のひとりの死亡をでっちあげて、その人の作品を売り出すというもの。その画家の名前がなんと「ミレー」です。フランスの有名な画家。このお話はフランスが舞台で、昔の小説にありがちな高級リゾートホテルの客の会話という態を取っています。

 

聞き役の紳士と語り役の紳士。その語り役の紳士が、画家の仲間の一人です。これは今まで誰にも言わず、秘密にしてきたが、もう話しても良いだろうと偶然同じテーブルに坐った紳士に語り始めます。彼らは、ひとりの仲間の死をでっちあげて、彼の描いた作品の値を吊りあげて来た。世間の人々は、作品の本当の価値ではなく、ちがう要素で作品を売買するということ。そして、彼らは大金持ちになり、こんな高級ホテルにも宿泊できるようになったのだというお話。オチは、「さっき、目の前を通った紳士がミレーなのですよ。」というもの。

 

MARK TWAINの活躍した時代は、まだ現代の苦悩を知らなかった。ダダイズムも不条理演劇もシュールリアリスムもまだなかった。これらのムーヴメントが大衆の愚かさを揶揄したのでした。しかし、大衆の力は強い。そんな揶揄など吹き飛ばしてしまいました。だから芸術などもう存在しない。あるのは、コマーシャリズムだけです。大衆に受け入れられないものなどは、作品としての価値はないのです。

 

つまり、MARK TWAINは、そんな世の中を先取りしていたのですね。









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