2016年9月1日木曜日

『Among the Wreckage』 by Paul Yoon


久しぶりに英語の本を読みました。この『Among the Wreckage』は、Once the Shore という題名の短篇小説の2番目に納められています。25ページ程の長さです。英語の勉強をするために買いました。と言っても何でもいいからと選んだわけではありません。わたしの方法は、新聞の書評欄で興味の惹く英語原作の本を選んで、アマゾンでオリジナル英語版を手に入れられるか調べるもの。ペーパーバックで適度な値段ならば購入します。たいてい日本語版より安いです。版権とか翻訳料とか…、でしょうか。書評は、2014年9月となっていますからずいぶん前に買ったんですねェ。その間に2回ほどトライしたと思いますが…、なんとなく読めなくて…。

 

評者はいとうせいこう氏です。『かつては岸』は韓国系アメリカ人のポール・ヤーン氏の著。短篇の8編からなります。全てが架空の島を舞台に繰り広げられています。済州島がモデルらしいとも。つまり舞台はアメリカではなく韓国と言うことですね。年代は現代ではなくやはり戦前・戦中・戦後直の時。とは言え戦争のドロドロしたお話ではなく、淡々と描かれていながら幻想的な雰囲気を醸し出しています。まだ2編しか読んでいませんが、評者によると、と言う意味です。『Among the Wreckage』もそんな感じでした。時代が時代だけに、日本とアメリカの存在がこの地にも影を落としています。

 
 
 

 

Among the Wreckage』の登場人物は主にBeySoniの老夫婦。書き始めはこんな風…、

 

EARLY ONE MORNING IN THE SPRING of 1947, a dark blue trawler, once used for fishing, moved slowly across the flat of the Pacific.  It had been abandoned by the Japanese on the banks of a river in Solla Island, and the old farmer named Bey had claimed it as his own. 

 

とても貧しい老夫婦で、これまでも辛酸を嘗めてきた人生。日本軍やアメリカにも虐げられ続けた人生と想像されます。

 

Two days had passed since they heard thunder and the trees shook as a cluster of long-winged planes stormed over their village.  When they rushed to the coast they saw what resembled a vaporous tsunami rise up in the east, whitening the midday sky.  And then the waves sped away, followed by a long echoing shudder.  They recalled the bombs of two years before and remained silent.  The noise faded.  The waves calmed, the air stilled. Their world returned to as it was before.(英単語はそんなに難しくないと思いますが、いかがですか。)

 

老夫婦は何が起こったかわかりませんでした。次の朝、行商人が村を訪れて事情がわかります。

 

The Americans, they were told, had been testing.  This had become common.  They targeted uninhabited islands.  It had been this way since the end of the Japanese occupation.

 

アメリカ軍は、無人島で爆撃実験をしていたようです。かつての日本軍のように。ただ、アメリカ兵は、そこを無人島と思っているだろうが、実際は漁場だった。そして、老夫婦の帰郷するはずだった40歳になる息子が、帰って来なかった。

 

They waited a full day for his return.  And when he didn’t come they set out to find him.

 

そして、老夫婦の船旅が始まるのです。Beyが手に入れたトロール船で。その船旅の中、彼らは自分の人生や息子との思い出を回想します。BeySoniは幼なじみでした。Beyが13歳の時、日本軍がやって来て天皇陛下の為のOFFERINGを求めます。Beyは、家族の為の食料を残しておいてほしいと頼みますが、銃の台尻で殴られます。その時、Soniは、彼の頭を庇って覆いかぶさります。Soniもまた殴られ前歯を折ることになりました。

 

その後、彼らは恋愛関係になりますが、その描写は興味深いです。日本兵に台尻で殴られたなどと陰惨なイメージを受けられるかもしれませんが、それはそんなにリアリスティックではありません。この辺りが、評者(いとうせいこう氏)が言う「淡々と物語が進む」と言うことでは。

 

She lost her front teeth. ---------------

When he first kissed her he slipped his tongue into that space where her teeth had been.  She pressed her other teeth together and surrounded his tongue.  In this way he filled a space.

 

彼らは、Beyが16歳の時に結婚します。結婚のセレモニーの次の日に、彼らは森に入ります。結婚のお祝いの品が森のあちこちに隠されているのです。それをBeySoniは探し当て、探すことが出来なかったお祝いの品の数だけこどもが授かることになっているのです。彼らが捜すことのできなかったプレゼントはひとつだけ。そして、彼らに息子のKaroが授けられました。

 

Soni gave birth to their son a year later, on the floor of their house.  Bey, along with his father, remained outside, facing the forest.  They heard her and the frightened pigs brushing up against the pen.  And then they heard the child.  The infant was given to Bey to hold.  He brought him close to his face.  From his skin rose the copper smell of Soni’s insides.  Bey licked his thumb and wiped away the stains across the infant’s head.  He had his mother’s nose, his father’s thick eyebrows.

 

ブタは、彼らの家の下で飼われています。1階が豚小屋で2回が住居になっています。台所の床の穴から残飯を下の豚小屋に落とし、豚の餌としているのです。

 

こうやって授けられた、大事な一人息子だったのです。息子のKaroは、成長するに伴い海を愛するようになります。彼は、長じて漁師となりました。海に出ると何カ月も戻って来ませんでした。

 

He left at the age of fifteen on a ship with mud-colored sails.  Bey and Soni stood on the riverbank to watch him depart.  Their son waved until the ship disappeared around a bend.  They stayed there, standing, long after the ship’s wake faded and the lanterns began to glow through the trees.

 

 

 

続きは…、次回と言うことで。また、書きます。








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