2021年11月2日火曜日

生命40億年の全史---追記 

 


LIFE------An Unauthorized Biography, written by Richard Fortey によると、この地球に生命の種が蒔かれてからその芽は以下のような発展の段階を経ている。

 

原始スープ→炭素化合物→細胞膜の発生→リン酸化合物が生命の自己複製のエネルギーを供給→代謝に必要な酵素の発生、DNAは自己増殖とタンパク質合成を保証するものとなる→光合成のできる生物の誕生→細胞の捕獲(細胞のサイズと複雑さの増大)→性の分化

(遺伝子情報を半分ずつ持ち寄って次世代に伝える仕組み)

 

この「光合成のできる生物の段階」までは、生命は自分自身で生きるエネルギーを生み出していた。つまり植物は太陽のエネルギーを吸収する光合成により「生」を維持し、そこで自己完結していた。

 

次に高等な植物から動物への発展が促される。この分岐の初期の段階では植物・動物の境界線は曖昧なものではあったが、動物になると生命は自分の体内で必要なエネルギーを作り出す道を失ったのである。

 

つまり「捕食」が、エネルギー獲得の手段となる。動物は生きていくために、食物の確保と言う難題を抱えることになった。

 

Richard Fortey は言う。「植物は独力で成長と増殖のための栄養分を作り出すが、動物は自分の食い扶持を他人に頼る居候のようなもの。共生による太古の平和を粗野なやり方で掻き乱す真の動物、性的な衝動や攻撃的な性質に満ち満ちた捕食者あるいは搾取者の誕生。」

 

しかしこの「捕食者・被捕食者」の関係は、それ以前の時代に比べ飛躍的に生命の進化を推し進める原動力となった。いかにして食べられないか、いかにして効率よく捕食できるかのメカニズム、軍備拡張競争がもたらした進化。

 

はじめは、捕食者・被捕食者の関係は植物対動物の戦いであったが、すぐに動物対動物の戦いに発展していく。植物も負けてはいない。植物も捕食の道を模索し始める。こうして豊穣な多種多様な生命が地球上にもたらされたのだ。



このようにして我々人類はこのヒエラルキーの頂点に達したが、動物である以上この「生のメカニズム」から脱け出すことはできない。しかし、ここに興味深い研究がある。それは、「人類は自分自身に光合成のメカニズムを取り入れることができるか」である。

 

元来、遺伝子は親から子へと代々受け継がれていくものであるが、近年他の方法でも遺伝子が移動していることが明らかになってきた。遺伝子が「種を超えて水平移動する」と表現されている。

 

例えばウミウシである。ウミウシの祖先は巻貝の一種だった。今から三億年ほど前に貝殻を捨てたらしい。貝殻を作るエネルギーを使わないでふつうの貝より早く成長し、早く子孫を残す道を選んだと言われている。

 

そしてその脆弱な体を守るためにある種のウミウシは「不味い体になる」という防御策をとる。自分の体の中に外敵が食欲を失うような忌避物質を溜め込むのだ。またあるものは餌であるウミヒドラから毒針を摂取しこれを自分の背中の突起に溜め込み武器として使う。

 

そして葉緑体を溜め込むものも発見された。本来は植物が持ち、葉緑体が光合成するのを助ける遺伝子をこのウミウシは受け継いでいたのだ。詳しい仕組みはまだわかっていないが海藻の遺伝子がウミウシに取り込まれた可能性があるという。

 

この種のウミウシは餌を与えなくとも太陽の当たる位置に水槽を置いた場合、何か月もの間生き延びたと報告されている。その他、体内に藻を共生させ光合成を活用している動物も多くみられる。

 

例えばミドリゾウリムシは葉緑体を持つクロレラを体内に飼っている。このよう光合成によりエネルギーを確保している動物は多く地球上に存在する。ある学者は「他の動物が実現している能力ならば原理的には人間にとって不可能ではない」としている。

 

さて、「人類が光合成の能力を獲得したら、光を浴びながら暮らせるのか」と言う試算がある。光合成を行うために必要な表面積と人間が一日に必要なエネルギーを考慮した場合、人間が光合成で全エネルギーをまかなうには光を受ける面積が16平方メートル必要。

 

日本人の平均男性の体の表面積は1.61.7平方メートル。人間が光合成の能力を得たとしても体の表面積を10倍以上にしなければいけないようだ。また、植物は光合成を獲得したが、運動によるエネルギーの消費は大きいので「動かない」という戦略を選択した。

 

つまり人類はエネルギー溢れる野蛮でビビッドな生命を生きるべきか、あるいは静謐で緩慢な生命を選択し「捕食者・搾取者」という汚名を返上すべきなのか。

 

 


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