2015年6月13日土曜日

『The Dwarf』 written by Ray Bradbury


次回の英語ブック・クラブは、わたしの当番で、レイ・ブラッドベリの短編集『The October Country(十月はたそがれの国)』から『THE DWARF』を選びました。10ページ前後の作品を選択しなければいけないので結構たいへんです。彼の短編を選んだのは二回目ですが、その予告を先回したところ生徒の皆さんは彼の名前を覚えていませんでした。FANTASYは、皆さんの性に合わないようです。が、わたしはめげずにやり抜きますよ。

 

レイ・ブラッドベリはアメリカの作家です。一番有名な作品は、たぶん『華氏四五一度』と思います。映画でご存知の方も多いでしょう。アメリカTVドラマシリーズの『トワイライト・ゾーン』にもたくさんの作品を提供しています。わたしは、『火星年代記 Martian  Chronicles』が一番好きです。彼は、この作品をSFではなくファンタジーだと言っています。Greek Mythであると。

 

That’s the reason it’s going to be around a long time---because it’s a Greek Myth, and myths have staying power.

 

彼は、つい最近亡くなりました。朝日新聞にもその訃報が紹介されました。

 

Bradbury died in Los Angeles, California, on June 5, 2012, at age of 91, after a lengthy illness.

 

彼の訃報は、ニューヨーク・タイムスやロサンジェルス・タイムス、ワシントンポスト紙でも掲載され、彼の業績を称えました。オバマ大統領も彼の栄誉を称え、ステイトメントを発信しました。その一部です。

 

There is no doubt that Ray will continue to inspire many more generations with his writing, and our thoughts and prayers are with his family and friends.

 

その他、スティーヴ・スピルバーグやスティーヴ・キングなどの著名人も哀悼の辞を述べました。

 

Several celebrity fans of Bradbury paid tribute to the author by sating the influence of his works on their own careers and creations.

 




 

前置きが長くなってしまいました。さて、『ドワーフ』に関してです。ブラッドベリは、カーニバルを好んで彼の作品使いました。移動遊園地とでも言うのでしょうか。昔は、遊園地が各地を回遊していました。日常生活に突如現れるカーニバル、そんな怪しげな空間でこどもたちは浮かれ騒ぎ、家に帰ることも忘れ、幻の世界から戻れなくなってしまう…、現実世界から消え去ってしまうのです。そんなカーニバルがこのお話の舞台です。

 

主要な登場人物は三人。一人はAIMEE。このカーニバルで木製の輪投げを使う女曲芸師のようです。もう一人は、鏡の迷路を運営している男性、Ralph Banghart。そして最後にドワーフ。この鏡の迷路に毎晩通って来るお客の小人です。

 

Aimee moved slowly across the stand, a few worn wooden hoopla rings sticking to her wet hands.  She stopped behind the ticket booth that fronted the MIRROE MAZE.  She saw herself grossly misrepresented in three rippled mirrors outside the Maze.  A thousand tired replicas of herself dissolved in the corridor beyond, hot images among so much clear coolness.

 

She stepped inside the ticket booth and stood looking a long while at Ralph Banghart’s thin neck.  He clenched an unlit cigar between his long uneven yellow teeth as he laid out a battered game of solitaire on the ticket shelf.

 

彼と彼女は恋人同士ではなさそうです。彼女は話相手欲しさに彼のチケットブースを訪ねているようす。でも、彼の方は何かと彼女をデートに誘いたい雰囲気。この日も二人でとりとめもない会話をしているとドワーフ(これは今差別用語ですが、この話が書かれた時代にはそうでもなかったようです。)がやってきます。

 

ラルフは鏡の迷路の部屋に秘密の覗き穴を持っています。ドワーフがいつものようにチケットを買って迷路に入っていくと、彼はエイミーにドワーフの様子を覗き見るように勧めます。

 

The Dwarf’s hand, hairy and dark, appeared all by itself reaching up into the booth window with a silver dime.  An invisible person called, “One!! In a high, child’s voice.

 

---Ralph squeezed Aimee along a dark passage behind the mirrors.  She felt him pat her all the way back through the tunnel to a thin partition with a peekhole.

 

その秘密の穴から彼女が覗いた光景はとても滑稽なもの。ドワーフは、目を閉じて自分の行きたい場所まで辿り着くと、目を開けます。その部屋は、すべてのものを大きく映し出す鏡の部屋です。そこで彼は、ひとりステップをふんだり、爪先で旋回したりして自分の姿に眺め入ります。

 

ラルフはこの光景を”rich”と表現しました。つまり、ドワーフの滑稽な姿を覗き見て悦に入っているのです。しかし、彼女は違います。二人がもとのチケットブースに戻った時には、気まずい雰囲気が漂います。

 

Aimee turned her head and looked at Ralph steadily out of her motionless face, for a long time, and she said nothing.  Then, as if she could not help herself, she moved her head slowly and very slowly back to stare once more through the opening.  She held her breath.  She felt her eyes begin to water.

 

彼女はドワーフが見入っていた鏡の値段を尋ねます。中古の鏡を彼に譲ってやってはどうかと。そうしたら彼は、自分のアパートメントの部屋で一人で充分に楽しめる。ラルフのような男から毎晩チケットを購入する必要もなくなるのだと。ラルフは、そんなお金が彼にあるはずがないと。ドワーフがどうやってお金を稼ぐのか。こんなカーニバルの見世物小屋で曲芸をする以外には無理だと。それでも彼女は鏡を購入できるお店の名前と金額をラルフから聞きだします。わたしが、電話で注文して彼のアパートに届けてもらうと。そんな馬鹿げたことはやめろとラルフは言います。俺の稼ぎがなくなるじゃないかと。

 

数日後の暑い夜、エイミーは再びラルフを訪ねます。その様子を見てラルフは、「ご機嫌じゃないか。」と。エイミーはドワーフが何をしているか探りあてたのです。彼は作家でした。三流パルプマガジンの探偵小説ですが。しかし、彼女は言います。彼の小説が掲載されている雑誌を古本屋で手に入れたけど、彼には素晴らしい才能がある。あなたやわたしとは違う大きな魂が彼の身体に宿っているのだと。

 

“This little guy’s got a soul as big as all outdoors; he’s got everything in his head!”

 

彼は自分の才能が信じられない。だから、三流誌で書いている。あるいは、世間に出ることを恐れているのだ。そして、彼女が手に入れた彼の作を読みあげます。そこには彼の生い立ちと、なぜ彼が殺し屋になったかのストーリーが綴られていました。その作品の主人公はドワーフで殺し屋だったのです。

 

I am a dwarf and I am a murderer. The two things cannot be separated. One is cause of the other.

 

Do you see how our lives moved toward murder? This fool, this persecutor of my flesh and soul!

 

ラルフはドワーフの事はほっておけと言います。しかし、エイミーは彼の存在を無視できません。

 

また、エイミーはラルフを訪ねます。彼女は、中古の鏡を注文して彼の部屋に届けてもらう事を決めた。明日にも鏡が彼のもとに届くでしょう。だから、今日が彼がここに来る最後の夜になるのだと。それを聞いたラルフは、なんて馬鹿げたことをしたんだと言います。二人の間には沈黙が流れますが、ラルフが、「ちょっとブースの留守番をしてくれ。」と言って鏡の迷路の通路に入って行きました。彼女はラルフが何をするのかわからず「いいわよ。」とブースの留守番を引き受けます。

 

なにかゴソゴソと音がして、ラルフがブースに戻って来ました。彼は上機嫌になっていました。そこにドワーフが現われます。ラルフは、今日は記念日なのでお代はいらないと言います。ドワーフは驚きますが、ブツブツとお礼を言って、持ってきたダイムを握りしめていつものように迷路に入って行きました。ラルフは「さあ、おもしろいことが始まるぞ!」とニヤニヤ。すると、迷路からドワーフの悲鳴が。

 

“Ralph,” she said.

”Sh,” he said. ”Listen.”

They waited in the booth in the long warm silence.

Then, a long way off, muffled, there was a scream.

”Ralph!” said Aimee.

”Listen,listen!” he said.

 

悲鳴は何度も何度も起り通路に木魂しました。そして、泣き叫ぶ声とともにドワーフが走り出ると岬の方に駆け出していきます。

 

”Ralph, what happened?”

Ralph sat laughing and slapping at his thighs.

She slapped his face. “What’d you do?”

He didn’t quite stop laughing. “Come on! I’ll show you!”

 

二人は迷路を進みました。ドワーフがいつも目を開ける部屋に来ると、鏡が取り替えてあったのでした。二人の姿は歪んで小さく小さく映っていたのでした。ドワーフの姿はいったいどんなだったのでしょう。彼女は振り返ってラルフを見ると、そこには彼の姿が、

 

A horrid, ugly little man, two feet high, with a pale squashed face under an ancient straw hat, scowled back at him.  Ralph stood there glaring at himself, his hands at his sides.

 

ドワーフは、シューティング・ギャラリーから銃を奪って岬の方に走って行きました。エイミーは「すべてわたしのせいだ。鏡など彼に送らなければよかった。」と、ドワーフの後を追いかけて走りだします。

 

最後のセンテンスです。

 

Aimee walked slowly and then began to walk fast and then began to run. She ran down the empty pier and the wind blew warm and it blew large drops of hot rain out of the sky on her all the time she was running.

 

 

 

どうでしょうか。ラルフの残虐さがひとりの殺人者を生みだしてしまったのでしょうか。

 

I am a dwarf and I am a murderer. The two things cannot be separated. One is cause of the other.

 

Do you see how our lives moved toward murder? This fool, this persecutor of my flesh and soul!






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