『羊式型人間模擬機』
第12回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作です。著者が犬怪虎日子というのも怪しげな
様相。
男性が死ぬ時、その間際に羊に変わるという一族のお話です。そしてその羊が死ぬ間際に(だいたい三日後)解体し、一族で食する儀式があります。その解体し儀式を執り行うのが、一族に使える人間模擬機(アンドロイド)です。
不思議なソソラレル設定です。初めの章で、4人の兄弟姉妹が登場。現在の一族のメンバーで、まだ若く幼い人々です。
この一族は閉じられた広大な土地、屋敷に住んでおり外との交流はありません。この設定で『ゴーメンガースト』(マーヴィン・ピーク著)を思い出しました。内容は全く違いますが、変な登場人物と広大な閉じられた場所での日々。そして域内での冒険、そして外界への興味というところか。
また、「羊」とか「アンドロイド」というと『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(フィリップ・K・ディック著)を思い出しました。こちらは、全く関連はありません。が、何か著者の中にあるのかもしれません。
話が始まる前の最初のページに家系図があります。はじめは何のことかわかりませんでしたが、徐々にこの一族の成り立ちが明らかになっていきます。これで、『百年の孤独』(ガルシア=マルケス著)を思い出しました。しかしながら、こちらはそんな壮大なお話ではありません。
このように四人の兄弟姉妹と遡る一族のエピソードが語られます。そして、お話の最後に祖父が亡くなる際、羊の姿になり、御羊様の最期の御殿造りと、解体の儀式に流れていきます。
いろいろなエピソードが語られますが、この個々のお話が最後に大団円とはならず、なにかはずされた感がします。しかし、羊の解体場面は圧巻です。これだけで一冊書けそうな気がします。
つまり、ひとつひとつのお話を掘り下げていけば、何冊かかけるのにと。(生意気ですが)。
最後にこの賞の選者たちの評が掲載されておりました。抜粋ですが…
東浩紀
力作であるのはまちがいない。しかし筆者は読むのが辛く自己満足にも思われた。
小川一水
文体の跳ねるようなリズムが好ましく、引き込まれた。結末はロボットによる自己言及で、本機と一族の来歴がかすかに垣間見えるようでいて、不可解。
神林長平
なんとも変な小説で、しかも内容や書き方がぼくの個人的な琴線に触れたので最高点をつけた。
菅浩江
とても好みの作品でした。語り口も世界観も、幻想文学に慣れている人にはうれしくなる類です。―――もっとテーマを押し出してほしかったという欲が出ました。
塩澤快浩
オリジナルティは評価するが、――――イメージの強さがプロットの弱さに勝っていないと感じられた。
以上です。
幻想文学好きの私とすればまったく好物です。が、話が中途半端な気はします。賞を取った作品はあまり興味がありませんが、本書は途中まで「こいつはホンモノだ!」と思ったので、次回作に期待します。


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