2017年9月17日日曜日

『去年を待ちながら』を読んで



フィリップ・K・ディックの小説です。わたしは、20代の頃から彼の大ファンでした。しかし、30歳から40?歳くらいまでは生活に追われ、本をじっくり読む暇はありません。仕事と家事と育児に追われる日々です。でも、彼の本だけは翻訳されるとすぐに買っていました。お金もなかったので、文庫本ですが。その時の言い訳は、「老後の楽しみのために」です。



という訳で、その老後が来てしまったんですネェ。ディックの本は30~40冊持っていますが、そのうちまだ読んでいない本が現時点で7冊です。『去年を待ちながら』が読めたので、あと7冊になりました。わたしは、若かった時の自分の「命令」で彼の本を読んでいると言うことです。この本を読んでいて、そんな状況が「似ているなあ」って思ったので、前文は蛇足ながら書いてしまいました。











いつもの如くの彼の作品です。つまり、精神を病んだ人とドラッグと未来と過去が入り乱れた世界が描かれています。今回はドラッグを飲むと、過去や未来に行ってしまうという設定です。過去の自分から情報を得て、現在や未来の世界を変えていくと言うような…。わたしは、過去のわたしに会ってはいませんが、過去のわたしの遺言を忠実に実行しているよなあ…、って感じです。



本の粗筋を書くと「なんと陳腐な」と思われてしまいそうですが、こんな感じです。



宇宙人が出てきます。リリスター星とリーグ星です。我々人類とリリスター星人は同じ祖先から枝分かれしたと言うことになっています。同じ、ホモサピエンスということ。リーグ星人は、違う種類の生き物で知能は高いが昆虫のような姿ということ。人類とリリスター星人は同盟関係です。そうして、リリスター星人とリーグ星人の戦いに人類が巻き込まれるという感じ。



この時の地球の国連事務総長はモリナーリ。彼が司令官となりリリスター星人と手を組み、リーグ星人との星間戦争に挑みます。このモリナーリは年齢不詳。臓器を入替え、入替えて、死を免れ戦い続けています。その人工臓器を移植する医師エリックが、主人公です。そして化学兵器として発明されたのが、ドラッグJJ180。このJJ180は、一度飲めば中毒になってしまい、常用しなければいけない破目に陥ります。そして、肝臓やら腎臓やらがぼろぼろになり、精神も異常をきたし死に至るという設定。



しかし、JJ180には大変な作用があるということがわかりました。人によっては、過去に戻ってしまう、または、未来に行ってしまう…。このドラッグはリーグ星人をやっつけるためにつくり出されたものでしたが、実は地球上で常態的に蔓延していたのです。



つまり、地球と同盟星人のリリスター星人は、人類と共に闘うという名目の下に人類を征服し奴隷化しようとし、このドラッグを地球にばらまいていたのです。これがこの作品のベースです。このベースで、モリナーリやらエリックやらエリックの妻やら、大実業家やら精神科医やら…、諸々の人々が入り乱れて話が展開していきます。



モリナーリは不死身でしたが、実は、JJ180を使用しており、過去の若々しい自分を入れ替わり立ち替わり連れて来ては、リリスター星人と戦っていたのでした(敵はリーグ星人ですが、彼はリリスター星人の思惑もわかっていて、彼らを出し抜こうとしていたのです)。医師エリックも、妻の悪巧みに乗せられてJJ180を飲んでしまいます。彼は、妻との関係やモリナーリとの関係、リリスター星人との戦いのため、過去へ未来へと八面六臂の大活躍です。



お話の終局を書いても良いでしょうか。エリックは、過去へ未来へのドタバタから何を手に入れたのか…です。



答えは、「何も」です。妻との関係も清算されず、リリスター星人との戦いも勝利を得られずと。「人生は辛く耐えがたいもの。しかし、生きていかなければならない。」と、――彼は、今まで通りの人生を生きて行くのであった~~~、という結論です。













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