2013年12月21日土曜日

ブロンクスから来た先生…デニスの続きです。


ある日、デニスが彼のお父さんと文通しないかと言います(まだ、emailは、一般的ではなかった時です。と言っても、たかだか十数年前の事ですよ。)。「君と話が合うかもしれない。」と。実際、わたしとデニスはずいぶん年が離れていたので、彼の言う通りかもしれないと思いました。英語の勉強にもなると言われたので、別段「文通しても悪くはないでしょう。」と応じました。しかし、彼の父親は離婚をしており、今は別の女の人と暮らしているとのこと。それで、直接手紙を出さないでくれと言われました。わたしが、デニスに渡してデニスがお父さんに出すと言う話。なんだか胡散臭いでしょう。でも、真剣に文通するわけではないので「いいよ」と言いました。

 

数日後、英語で手紙をなんとか書いて彼に渡しました。一応封筒には入れましたが、封はしませんでした。意図的にです。彼がどうするか見てみたかったのです。案の定、彼はわたしが書いた手紙を読んでしまいました。デニスは素直に「読んだ」と告白して、こんな言い訳です。

 

「お父さんは、女の人と暮らしているって言ったよね。彼女はとても変な人なんだ。つまり、たいへん嫉妬深い。お父さんに女の人から手紙が来たら、もう大変な事になってしまう。怒り狂って何をしでかすかわからないよ。それで、僕の名前で、彼に手紙を出す時に、一緒の封筒に入れて出そうと思ったんだ。お父さんにそんな感じで、電話で話したら、そんなことはやめてくれって言うんだ。そんなことが彼女にバレたら、いっそう大変になるって。だから、悪いけど文通の話は無しにしてほしいんだ。」

 

まあ、真剣に文通を望んでいた訳ではないので「いいよ」と言いました。しかし、未だにあの話は彼の作り話か、本当なのか判断はつきません。

 

そんな彼との英語のレッスンが半年ほど続いた時、彼が「学校をやめる」と告げました。「どうして」と尋ねると、ニューヨークに帰るということ。ニューヨークには彼の母親と妹が住んでいます。妹の名前は忘れてしまいましたが、母親の好きな女優の名前を妹に付けたと聞いたことがあります。彼の名前もデニス・ホッパーかなんかから取ったのかもしれないと思ったことを覚えています。

 

その母親が再婚すると言うのです。結婚式なんて興味はないけど、なんか変わった結婚式をするというので、出席してみるということ。サンフランシスコに行ったことはあるかと聞きので「あるよ」と答えたところ、

 

「サンフランシスコのヘイトアンドアシュベリーにジョン・コルトレーン・チャーチがあるんだ。その教会では、コルトレーンに因んで礼拝に来る人には、全員に楽器が渡される。楽器と言ったって、タンバリンとかカスタネット、トライアングルだよ。それで、全員で自分の楽器を演奏しながらゴスペルを歌うんだ。お母さんはそんな結婚式にすると言っていた。おもしろそうだろ。みんなの祝福が終わった後で、新郎新婦は気球に乗り込んで、空に舞い上がる計画。気球が空に昇って行くところ、一度は見てみたいな。ステキだろうな。」

 

コルトレーンは有名なジャズ・ミュージシャン。教会の話は知りませんが、場所が場所だけに「ありえるかも」と。そうして、彼は学校を去って行きました。しかし、風の便りによると、彼は東京に行ったらしい。ガールフレンドの部屋に転がり込んでいっしょに暮らしているという話です。どうですか。面白いでしょ。結局、何がほんとうかは謎のままです。

 



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