2015年12月8日火曜日

Anything You Say Can and Will Be Used Against You


警察官が容疑者を逮捕する時にいう言葉です。邦題は『あなたに不利な証拠として』、LAURIE LYNN DRUMMOMD著です。次回の英語リーディング・クラスの小説ですが、実際には、この短編集の中の一編の邦題『完全』、原題Absolutesを選びました。

 

この本は、ずいぶん以前に購入しました。まだ、英語の勉強のために英語の本を買っていた時のことです。たぶん十年くらい前と思いますが、わかりません。その頃は、もちろん本の内容も考慮はしますが、自分の読めそうな推理小説を買っていました。推理小説なら最後まで読むだろうという魂胆です。この短編集は、女性警察官のお話の十篇の短篇からなっていますが、「推理小説」という訳ではありません。女性警察官の日常の苦悩…、と言ったところでしょうか。

 

もうひとつ、その頃の英語の本の選び方はというと、書評で見たよさそうな本の英語版をアマゾンで探すという方法です。つまり、日本語に翻訳された本の書評を読んで、再び翻訳前の英語版を買います。この本もそんな方法で買いました。そして、これをクラスのために選んだわけは、クラスの一人が「評価されていない」本を読むことを嫌うからです。他の二人は古典小説から短篇を選んでいるので、もうすでにその本の評価は定まっています。が、わたしが選ぶ本は現代の作家のものなので、権威付けがありません。で、新聞の書評付きで皆さんに提供したということです。

 

しかし、書評を読んで失敗したなあと思います。なにか先入観が出来てしまったから。書評によりますと、(池上冬樹さんの書評です。)

 

『完全』という短篇の主人公はキャサリン、二十二歳。警官歴15カ月で、職務執行中に強盗を撃ち殺した。物語では、キャサリンがどのように事件と関わり、どのように射殺したかを振り返る。―――徹底したリアリズムで、警察官の職務の一部始終を描き、事件現場へと読者を連れて行き、キャサリンが銃を撃たざるをえない状況をまざまざと味わわせる。そして殺すしかなかったこと、殺さなければ自分が死んでいたことを深く感得させるのである。

 

「その通り」としか言いようがありません。

 




 

先ず第一に、彼女が22歳と言う若さだということが驚きです。そして、職歴15カ月で銃を撃って強盗を殺したということにも。これがアメリカの現状なのでしょうか。その他の国、一般人が拳銃を手に入れることができない国では、こんなことはまず起らないでしょう。昨日の朝日新聞に『NYタイムズ・「銃蔓延 国家の恥」』という記事がありました。カリフォルニア州で14人が殺害された銃乱射事件を受けてのものです。NYタイムズがこの事件の社説を第一面に載せたのです。一面社説は95年ぶりという指摘もありました。

 

社説は、「人間を素早く効率的に殺すように作られた武器を、市民が合法的に購入できるということは、国家の恥であり非道徳的だ」と主張しています。「自由の国アメリカ」を標榜するあまりに、国家の銃規制に反対する国民は、自己の安全のためにも少々の自由を手放すべきではないのでしょうか。そもそも国民が「武器所有の権利」を放棄し、その権利を国家に譲渡することによって近代国家が成り立っているのですから。

 

 

22歳の若さのキャサリンは、毎日過酷な職務の中にいます。毎日銃を携行し防弾チョッキを身につけます。一日の職務が終わった後、彼女が家に帰ると、彼女は自分の身体に触れます。ガンを着けて歩き回ることにより、ガンがつけた蒼痣のあとを触れてみるのです。また、防弾チョッキで擦りむけた首筋にある痕を。そして、最後に「OK」と言います。

 

Okay, I tell myself.  Every night I tell myself, okay.

 

どうですか。

 

キャサリンは、警察官になる前のアカデミィーで逮捕手続の訓練を受けます。

 

The training films and the instructors at the academy, they tell you when you are sitting safe and cool in the classroom that you should say, “Do it NOW!” after each command.  But there is never time for this: they respond or they don’t.  If they don’t, I yell, ”NOW MOTHERFUCKER!” You want to convince them you’re mean, that you’ll take them out in a second.  You want to convince them not to do anything you’ll have to shoot them for.

 

このような説明が1ページ程続きます。で、実際の彼女の逮捕劇の時、なにが起ったのでしょうか。

 

彼女が撃ち殺したJeffery Lewis Mooreは、もちろん銃を携行していました。彼女が彼を追い詰めた時、彼は彼女の方に振り向いてその手にはナイフが。彼は銃とナイフを持って彼女に立ち向かってきたのです。彼女は銃よりナイフの方が怖いと言っています。銃は撃たれるだけ。でも。ナイフは人を切り刻むと。

 

彼女は、アカデミィーで学んだ通りの行動に出ました。しかし、

 

“You fucking move I’ll blow you away,” I screamed in a voice that probably carried more shrillness than authority.

He didn’t listen.  They’d always listened before, believed what I said.  The cursed command, the gun, the badge, the woman on the other end of the gun always stopped them.  He didn’t stop.  He grinned, that’s what he did.  He grinned a shaky grin and raised that knife.  He took a half-stop forward.

 

つまり、彼女の学習が役に立たない犯人が現れたのです。彼が刃向かってきた最後の瞬間に彼女は銃を発砲しました。そして、彼は彼女の手の中に倒れ込んだのです。彼は死にました。

 

And his eyes, those deep brown pools went even wider, and the light rushed in.  He stumbled forward, dropping gun and knife; he stumbled forward into me, his blood soaking my hands and uniform.  I caught him in my arms and dropped with him to the ground.

 

彼女の行為は完全に法に則っていると立証されました。しかし、彼女のBODYJeffery Lewis Mooreが棲みつきました。

 

There is a piece of him inside now, and I can’t deny him his right.  Sitting in the long carpetless hall, the lights off, just the two of us Jeffery Lewis Moore whispers low into my ear.  “Come on,” he says, “come on.”  And I lean into myself, waiting for him to say more, but there is just silence, and I am left wondering how dead we ever really are.

 

 

さて、自由の国アメリカは、どのように応えるのでしょうか。








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