2013年8月13日火曜日

『なぜ日本経済が21世紀をリードするのか』  徳川家広著

なんだか胡散臭い題名ですね。サブタイトルは『ポスト「資本主義」世界の構図』です。実は、違う本を本屋さんに買いに行って見つからず、ついつい買ってしまいました。大丈夫かな~~~と、思いつつも。というのは、わたしの勉強不足もありますが、西欧諸国がアジア植民地支配に及んだ時、なぜ日本は免れたのかということに興味があるからです。また、欧米主導の資本主義社会で、日本はなぜ第2位まで登りつめられたのか(今は3位)に。もっと言えば、基本的に「なぜこの世はこのようなあり方で現在存在しているのか」が第一の知りたい事だから。つまり、「宇宙のあり方」、「世界のあり方」、「日本のあり方」です。





本著は第1章から第6章の構成ですが、第4章までは資本主義の概説、第5章、第6章がかろうじて題名の論旨を説明しています。しかし、第4章までの資本主義についての考察は、とても単純化されていて凄くわかりやすい。わかり過ぎやすくて、何か取りこぼされているのではと心配にはなりますが。と書くと、なんだかこの本に対して批判的なようですが、実際、読んでよかったなと思っています。資本主義がどういうものかと言う事がすんなりわかって、「武器」になるな・・・、という感じです。



単純に、こんな感じです。



��8世紀後半のイギリスの産業革命が資本主義の始まりのようですが、イギリスではその前に「名誉革命」(1668年)が起こり、「自由」という価値が市民権を得たと言う事が重要な事です。個人の自由・権利が法制化されていたからです。



自由主義の土台、産業革命、そして資本主義の台頭。産業革命はエネルギー革命であった事。ものを造りだすとき、必要なのは労働力です。労働力はそれなりに当時高く売れました。しかし、産業革命によって機械が人間の労働の肩代わりをするようになった。その機械を動かすエネルギーも潤沢にあった。勢い、人は機械の力と張り合わなければいけなくなる。つまり、人間の労働の価値が下がったということです。労働力しか売るものがなかった労働者は、経営者に対して圧倒的に不利な立場になります。そして、必要のない労働力は切り捨てられてしまいます。



そして失業者数の増大。その余剰の労働力が軍隊配備にまわります。そしてその軍事力を背景に、非西欧諸国への進出が計られ、植民地政策に。つまり、本国では必要のない労働者の失業への不満を政府にぶつけることが避けられ、植民地へ流れると言うことです。アメリカという大きな大陸は、その時の格好の受け皿となりました。ほぼ世界的な植民地化が進み、もう余地がなくなった時、次に来るのが、大戦争、共産革命、大不況です。



第二次世界大戦の経済復興のため、修正資本主義が受け入れられました。ケインズの理論がこれを支えます。労働者の権利を尊重するコンセンサスが成立します。大戦後、植民地が次々に独立し、余剰労働力のはけ口がない分、国内での改革を促進しなければいけなくなったのです。



しかし、1980年代頃から、アメリカ、イギリスは古典資本主義に回帰していきます(新自由主義)。著者は、IT革命もそのひとつの原因と分析しています。しかしIT革命はさらにホワイトカラー層の失業を招きます。そして、旧ソ連、東ヨーロッパ、インド、中国などが、自由主義的な経済体制に移行して、資本主義の病理が復活。つまり、資本主義は常に突き進まなければ、その矛盾点を克服できない。そして、突き進めば、新たな矛盾点が出現する。その発展も、「地球」という有限なパイのなかです。





どうでしょうか。このまま資本主義は地球上のすべての人類を幸せにすべく発展し続けられるのでしょうか。著者の描くひとつのポスト資本主義の世界は、「アメリカ」という影響力のなくなった世界で、他国に干渉する余力のない、必要のない超大型国家が並行するというものです。ロシア、ブラジル、インド、中国などは、自由貿易のメリットよりも国内の雇用の安定を優先させるであろうと言う予測です。国外に市場を求めなくとも、自国だけで自己充足できるということですかね。



日本についてはこのように記述しています。

「・・・日本が積極的に国際社会におけるリーダーの役割を果たすのか、それとも外の世界に無関心な、閉鎖的で自足した文明圏となるかは不明です。1700年頃の日本も、当時の世界でいちばん豊かであるか、それに近いという恵まれた状態にありましたが、外の世界には憧れるだけで、自ら行動を起こすということは、ないままでした。」



もともと西欧諸国、特にアングロサクソン系が、おせっかいにも外の世界に乗り出して、他の国に干渉してきたから、この競争社会になってしまったのだと。その国々に合うペースで発展して、自国の安定した生活をキープできる世界も悪くないと思うのですが。



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