2013年8月13日火曜日

『ミトコンドリアが進化を決めた』

『ミトコンドリアが進化を決めた』(POWER,SEX,SUICIDE Mitochondria and the Meaning of Life:ニック・レーン著)を読んで。





とても興味深かったです。「宇宙や深海の神秘」なんて言うけど、わたしたち人間の体のなかにこそ神秘があったんだって言う感じ。大袈裟でなく、世界観が変わる程の読後感です。解説にも(田中正嗣)このように書かれています。



「最新の素粒子論や宇宙論を読むと星空を見上げる時の心が変化する。ある理念を有しているかどうかによって、自分自身・家族・人類・生命・宇宙・過去・未来に対する見方が左右される。レーンの緻密で堅固な説に接すると、自分の生命に対するまなざしが変わることに気づくだろう。」





先ず初めに、今まで読んだ本(『生命40億年全史』、『銃・病原菌・鉄』)で書かれていた「生命の始まりは原始スープとライトニング」という説が、最近の研究では間違いであったとされています。「化学浸透」が生命の生まれる起源(何故かは本を読んでネ)。そこから細胞ができて、細菌が生まれ、真核生物が発生する。その「細菌」と「真核生物」の違いは、真核生物がすべてその核内にミトコンドリアを持っている(あるいは持っていた)という事。



生命がここかまで多様に進化してきたことは、ただひとえに「細胞がミトコンドリアを持っている」ということにつきます。細菌はミトコンドリアを持っていません。細菌は20億年以上、細菌のままでいる。なぜ、細菌から進化したものがいないのか…それが答えです。



「原始スープとライトニング」が生命の源であるという説では、そのラッキーなライトニングはただ一回しか起らなかったとしています。それは、地球上の生物の型が一種類であるという事実からです。ミトコンドリアの場合もそうです。真核細胞は古細菌が細菌(ミトコンドリア)を飲み込んで(あるいは細菌が宿主を見つけたか)、合体してしまったんですが、この合体も一回しか起らなかった。この一回の「古細菌+細菌」の発現から、地球上のすべての生物が生まれたのです。



ミトコンドリアは生物の細胞に寄生しているのではなく共生しているとのこと。また、宿主がミトコンドリアを吸収してしまったということでもありません。なぜなら、ミトコンドリアは僅かながらそのDNAを残しているから。しかしながら、ミトコンドリアは宿主から離れるともう生きてはいけません。そして、そのDNAは真核細胞の「核」に移されることなく、ミトコンドリア自身が保持しています。この「共生」が生物の進化の謎を解いてくれるのです。



生物は細胞の数を増やすことによって、大きくなれる、そして複雑になれる。大きくなれば、他の生物を捕食する事でより大きなエネルギーを確保できる。そしてまた大きく複雑になれる。この細胞間の連絡をミトコンドリアDNAがうまく仕切っているようです。どの細胞にエネルギーが必要とか、この細胞はもう役立たずだから殺して吸収してしまおうとか。わたしが理解した範囲ですが・・・。



生物の「温血化」、「有性生殖」、ひいては「老化」、「死」をもミトコンドリアが担っています。その中で、「有性生殖」に興味深いことが言及されていました。「両性間の根源をなす生物学的差異は何か」と言う事。女性のおよそ6万人にひとりはY染色体を持ち、男の新生児500人に一人の割合でXXYの組み合わせの染色体を持つとのこと。「進化の観点からは、性は偶発的に生まれたもので、万華鏡のように変わる」と。つまり、男女の区別はY染色体によるのではない。





細胞一つ一つは、我々の意志に関係なく、日々生き延びるために努力しているのです。一つ一つが呼吸し、エネルギーを作り出し、お互いに協力し合い体全体を維持している。この関係性を統括しているのが、ミトコンドリアDNAと言うことになります。つまり、「腸が頭脳より大事だ」ということを、この本によって学びました。体が維持できての頭脳なのです。頭脳を人間の最優先事項とすることは、ヒトの驕りであると。もちろん細胞には意志はない訳で、自然のままに活動しているわけだけど、そこがまた素晴らしい。「我々の内に自然はある」とのスピノザの言葉、いや~~~、感動するね。







この本の全体像を描くことはわたしには無理なので、興味のある方はどうか現物にあたってください。





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