2013年8月13日火曜日

超・格差社会アメリカの真実



小林由美氏の著書である。彼女は1975年東京大学を卒業後日本の銀行に女性初のエコノミストとして勤めた後アメリカに渡る。スタンフォード大学でMBAを取得し82年からウォール街で日本人初の証券アナリストとして働き始める。現在、彼女は26年間アメリカに滞在し続けている。





今回のプライベートレッスンはこの本の話をしようと思い少々準備して臨んだ。モスバーガーで会うと・・・彼は今日の話題は何・・・とたずねる。わたしはこの本を指し示し・・・これです・・・と言う。



「ワォ、アンチ・アメリカの雰囲気だね。」

“Sure, it is! You’re not American. So, I thought it would be okay for us.”



彼は、冗談、冗談、と。もちろんわたしも冗談だ。



この本によると、現在アメリカで5%の金持ちが60%の富を独占し、30%の人が貧困層に属しているという。この傾向はアメリカがイギリスから独立する以前から存在していたらしい。独立前イギリスは軍事予算の半分をアメリカに注ぎ込んでいて、そのお金の恩恵を受けた現地司令官、州知事、政商が初の植民地成金という。アメリカ建国時はイギリスの商船を略奪する免許を得た船主がボストンのビジネスエリート層を形成した。(海賊行為はず~~~っと以前・中世、古代?・から正当なビジネス行為なのね)。



アメリカは1913年まで「所得税」という制度がなかったため、富の分配が行われず富裕層はそのまま固定化された模様。それで何故庶民は文句を言わなかったかと言うと、彼らは無償で自由に土地を与えられていたから。つまりアメリカの雄大な土地が重要な役割を果たしているという訳。もうひとつの理由は、アメリカでは「メーキング・マネー」が尊敬される唯一の行為だから。実利が一番ということか。だから、お金がないと認めることは自分の弱さや無能さを認めることなのでそのような表現はしない。



第二次世界大戦後、アメリカは唯一生産余力を持つ国になっていた。労働者の賃金もUPし所得税はそのままだったので、初めて労働者層も富の分配を享受することができた。50~60年代がその黄金期。その後、アメリカの製造業において技術が他の低賃金国に肩代りされ雇用の空洞化が起こり中産階級の衰退が始まる。アメリカの製造業の凋落を技術開発能力や労働倫理の低下と認識することができず、彼らは脱工業化社会への進歩と解した。それから事業の目的が事業の金融化としての価値をあげていくことにすり変わっていく。(こうして現在の金融危機に繋がっていくのね)。





なんていう面白味のないことをずっと話し合っていたわけではなく、わたしたちの会話は大体が各国の文化の違いに収斂していくので、自然ヒソヒソ声に。なんせモスバーガーという公の場ですから。今回も彼が辺りを見回し、ひそひそと話し始めるので、わたしはアメリカ人なんていないけどなあと思いつつ、日本人の顔をしたアメリカ人もいるかもしれないなと。と言って、わたしたちがアメリカの悪口を言っていたわけではありませんよ。



彼女の本は、グラフとか統計とかをふんだんに使いとても論理的なのですが、一方非論理的な面もあります。わたしはこう言って、「だから彼女はきっとアメリカに対してとっても怒ってんのよ。でも、26年間もアメリカに住んでいるんだね。」と彼に言いました。そうしたら彼も「アメリカ人はこうだ」ということを話し始めたのですが、それは彼女が通っていたアメリカの大学での「ヨーロッパの学生が言ったこと」というのと同じ意見。興味深かったわ~。



彼らのアメリカに対する解釈の一例;

★僕らはシェークスピアを読んで人間の本生を考えたが、ビジネススクールのアメリカの学生のうち何人がシェークスピアを読んだと思う。

★人間の価値と、その人の経済的価値は違う。でもアメリカではそれが一つになっている。

★ヨーロッパではどんな問題も多様な背景があり、そして多様な文化や言葉や宗教が常に緊張関係を生みだしている。でも、アメリカでは自由主義以外はすべて悪の一言で片づけているから、考える必要がないんだ。

★アメリカの学校は生徒にディシプリンを教えないし要求もしない。だからディシプリンが必要な分野は弱い。



彼女はこのようなことを書いて、「これがヨーロッパの学生によるアメリカ人への見方です。読者の皆さんはどう思われますか。」と、判断を読者に委ねている。というか、自らの判断を避けている。わたしも、皆さんはどう思われますかと問うておきます。わたしは単に悪口を言っているだけなんでしょうか?



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