2013年8月13日火曜日

考察・・・少子化について

今現在、重要で早急に解決しなければならない問題はたくさんあるが、その中のひとつは「少子化」問題であろう。自由民主党から民主党に政権が移り、民主党も少子化問題についてはいろいろな政策を打ち出している。その目玉政策は「子育て手当」。中学卒業までの子供に一律月26,000円を援助するというもの。しかしながらこの政策に対してはいろいろな反対意見が喧しい。ひとつにはあまりにも費用が掛かりすぎるというもの。税金の使いすぎの附けは将来の子供たちに回されるのだから。また、少子化が金で解決できるのかという意見もある。



「少子化」が子供たちへの補助金だけで解決するとはとうてい思えない。同時に社会制度の改革も必要だ。男女賃金格差、雇用機会・形態の不平等等、女の人が仕事を持ってこどもを育てるにはあまりにも生きにくい社会だ。早急の民法改正その他の制度改革が必要と思われる。ましてこれらの改革にはそんなに費用を要しないから。こちらも同様に、政権交代により自民党の古い保守的体質のネックがはずされたことにより改革が進むことが期待される。



一番期待されるのは閣内の二人の女性大臣、消費者・少子化対策大臣の福島瑞穂さんと法務大臣の千葉景子さん。この二人の後押しで「夫婦別姓」の法案が審議にかけられそうな様子。この十年余りこれまでにもこの種の法案は何回か民主党により議会に提出されていたのだが自民党に潰されてきたいきさつがある。この法律の立法化で結婚を躊躇していた人たちが結婚に向かう道が開け、また結婚への気分も醸し出されるであろう。もうひとつ期待されるのは、保育園と幼稚園の一元化。保育園と幼稚園はそもそも管轄する省が違うため一元化には困難が伴って来た。しかし現内閣はこの問題点を精査し法案を議会に提出するようだ。この不況のため働かざるを得ない母親が増えたことも相まって待機児童の数も増える傾向にあり、働く女性(あるいは男性)のための保育園は需要が供給にまったくと言ってよいほど追い付いていない状況にある。一方幼稚園は少子化により園児の数が激減し経営の危機状態。このふたつが一体化し、現在の社会の要求に応えることがきるようになれば、子育てをしながら働いているカップルにとって、また将来のカップルにとっても朗報であることに間違いはない。





わたしの個人的な興味に関して言えば、出生率を回復させた国々において結婚しないまま子供を産むことが出生率回復の要因の一つになっているという事実がある。2005年の統計でみると、全出生数の中で婚外子の割合がスウェーデンで55.4%、次いでフランス48.4%、デンマーク45.7%、英国42.9%、アメリカ36.8%、オランダ34.9%、アイルランド32.0%、ドイツ29.2%、スペイン26.6%、カナダ25.6%、イタリア13.8%に上っているがその中で日本での割合は2.0%と著しく低い値である。欧米で婚外子の割合が多い理由は、結婚に伴う法的保護や社会的信用が結婚していなくても与えられているという側面と若者が未婚で出産しても国や社会が援助するシステムが確立されているという側面から説明されている。

この「結婚に伴う法的保護や社会的信用」や「未婚で出産した時の国や社会の援助」と言う点で日本について考えてみると暗澹たる現状に驚くばかりである。現在では日本においても事実婚とか内縁関係はある程度まで法的には「結婚」と同じ権利が与えられている。しかし、「社会的信用」となるとまだまだ同じように取り扱われているのかという疑問は残る。さらに婚外子に至っては法的に婚内子と同じ権利が与えられていない部分が残っている。例えば相続に関し婚外子は婚内子の相続の二分の一との法的規定がある。その他戸籍の親子関係の記載方法にも問題がある。これらは人権問題として国際的にも批判の対象となっている。



日本との社会的な制度・保護の違いに加え欧州では新たな法的ムーヴメントがある。それは「連帯市民協約」と言われるもので多くの欧州諸国で広がりを見せている。「連帯市民協約(PACS)」とは、十八歳以上の成人同士(同性・異性を問わず)が共同生活の契約を結ぶもので税制上の特典などの権利が付与されるがまた負債の連帯責任の義務も伴うもの。つまり結婚とほぼ同等の権利と義務を要するが、手続きは簡素で協約の解消も一方から言い出せば可能であり離婚に比べて負担が軽減されている。結婚ではないので姓を変える必要がないという利点もある。



とりわけフランスでこの制度の普及が著しく、フランスでこの制度が導入されてから十年立つが、この協約の締結者は2008年に14万6千件に達し結婚件数27万3千5百件の半分以上に達したと仏国立人口学研究所が発表した。同研究所はこの背景としてフランス社会の「子供を持つのに婚姻関係がなくてよいと考える強い傾向」を指摘している。特にフランスにおいては1980年には婚外子の割合が11.4%であったものが、2005年に48.4%にまでなり、2007年には50.5%と初めて半数を超えた。一方、フランスの合計特殊出生率は1993年に1.66まで落ち込んだが、昨年には1.98まで回復したのだ。







以上少子化問題について考えてみた。日本の実情としては前半で指摘したように法律・制度の改革が強く望まれる。しかし本質的にはそれだけでは解決しない問題だ。つまり後半で述べたフランスの例のように「結婚制度」そのものを俎上にのせ議論・検討することが必須である。少子化はつまるところ「生物」としての「人間」が疎外されてきたところに端を発するのであるから、我々が「人間性」を取り戻せるようなシステムを作り出すことができれば問題は自ずと解決の方向に進むであろう。







0 件のコメント:

コメントを投稿